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第四十六話『あんなことがあっても授業はある』


「たっだいま〜♪」

 開いた教室のドアをくぐり、綾香が良く通る声で元気良く挨拶をした。

 そんな彼女にクラス中の視線が集まるが、意にも介さぬ笑顔で堂々と足を進める綾香。

 その後ろから、頬を赤らめ体を縮こませたひばりと、眠そうな顔であくびをしているアキが続いて入ってきた。

「おおう、あやっぺお帰りん♪ ひばりんにアキぴょんもねい♪」

 教卓に立つ金髪碧眼のボブカット少女、クリスが笑顔で三人を迎え、慎吾や琴代、俊夫に鷹久や秋人、洋介といった面々も笑顔である。

「んで? 問題は解決したのかなん?」

 笑顔で三人に訊ねるクリスだが、ひばり達は何とも言えない表情で顔を見合わせた。

「そ、それが……」

「なんつーかなぁ」

「結局解決はしてないんですよね」

「んん? よく分からないねい? ちょっと説明してミソ?」

 歯切れの悪い三人に、クリスが眉根を寄せて言ってくる。

 ひばりたちは一瞬、顔を見合わせたが、すぐにうなずいて説明をはじめた。




「まあ、謎は残ってるけどな」

「これ以上はどうしようもないし、一応解決ってことで戻ってきたんです」

 ひとしきり話終え、綾香とひばりはそう締めた。

「なるほどねい。ダイブにバトルにタレントも経験か。ずいぶんと濃い体験だったねい」

 そんな三人に、クリスが苦笑いしながらねぎらいの言葉をかけた。

「しっかし、こっちの授業よりかなり進んじゃったかなん? こっちは、やっと初期設定周りを終えたところだよん」

 ひばり達の話を聞いて、クリスが苦笑いする。他の者などはうらやましそうにしている者まで居るくらいだ。

 しかし、そこでアキが口を挟んだ。

「逆にひばりさんも綾香さんも初期設定は完全には終わってませんよ。どの道ダイブは午後になります。一組から順に特別教室で行うことになりますから。一度にダイブできるのは二クラスまでですし、八組はたぶん最後の方です」

「うむん。そうだったねい。それじゃあひばりんとあやっぺの初期設定を終わらせて次に進むよん♪」

 アキの言にうなずき、クリスはふたたび教卓から皆を見ながらそう言った。




 その後、ようやくやってきた滝川教諭にクリスがバトンタッチしてひばりの一件を簡単に説明し、授業は再開された。

 その後は、遅れていたひばりと綾香のアバター初期設定を終え、リンクネットとサイバーファミリアに関する座学が続いた。リンクネット開発の経緯、サイバーファミリアの構成、操作方法、注意事項など覚えることは多い。

 しかし、誰もが真剣に聞き入っていた。

 特に実物を体験したひばりと綾香の集中ぶりは他の生徒の比ではなかった。

 そうして午前中の授業が終わり、お昼休みを迎えた。

 初日からもばっちり午後まで授業がある央華学園であった。

 しかし、それを嘆く生徒はほとんどいない。この日の授業は世界の最先端技術を学ぶ授業だからだ。

「よし。これで午前中の授業は終わりだ。午後からは実際にダイブして貰うわけだが、まずは教室に集合だ分かったな」

 午前中の授業を副担任である沢村教諭と交代しながらこなした滝川教諭の言葉に、生徒一同が軽く息を吐く。中休みはあったとはいえ専門的な知識も出てくる授業だ。集中していた彼らも疲れが見え隠れしていた。

「おーっし、午前中終わりっ! 腹減ったぁ〜。学食行こうぜタカ」

「ああ」

 のびをしてから振り向いた綾香に言われ、鷹久がうなずいた。

 ほかの生徒達も、購買へ急ぐもの、弁当を取り出すもの、学食へ向かうものなどそれぞれである。

「ひばり、一緒に食おうぜ☆」

 綾香はひばりにも声をかけた。ちょうどコンパクトで可愛らしいお弁当箱を取り出していたひばりは、顔を上げると笑顔でうなずいた。

「うん、いいよ♪ 一緒に行こ綾香ちゃん」

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