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第四十五話『魔を知るもの』


「なるほどね。そういうわけで支倉ちゃんは狙われてるわけね?」

「おいおい信じるのか? こんなよた話を。魔法だの妖怪だのとうてい信じられ……」

 羽月の説明を聞いてうなずく翔華に、滝川があきれたように言う。が、翔華の表情を見て、口をつぐんだ。

 いつにない真剣な表情。

 天才ながらに変態淑女として頭のネジが何本かすっ飛んでしまっている翔華だが、そんな彼女がここまで真剣な顔になることはそうは無い。

 それだけ深刻な事態であると悟ってか、滝川は小さくのどを鳴らした。

『まあ、普通の人はにわかには信じられないだろうね。でも、デジタルデータでも無く実体化したボクの存在こそがその証左であるとは考えられないかい?』

 滝川の心情をおもんばかってか、羽月がそんなことを言ってくる。

 そして、そう言われてしまえば滝川に否定は出来ないのも事実だ。

「まあ、あなたは信じなくても構わないわよ? あたしがわかっていれば良いことだしね」

 そう言ってふんぞり返る翔華に、滝川はめまいを感じつつ口を開いた。

「そうは言うがな。ことは重大だぞ? どうするつもりだ?」

「そうね。実を言うと、魔法に関しては伝手があるのよ。そこに頼んで助っ人を何人か確保するつもりよ?」

 翔華の言い放った言葉に、滝川はあっけにとられた。

 今、彼女はなんと言ったのか? 魔法に関して伝手がある? それはつまり……。

「……君は魔法のことを知っているのか?」

 絞り出すように言った滝川に、翔華はニヤリと笑って見せた。

 それだけで、自分の質問の答えを得た気がした。

『やはりね。リンクネットには、少なからず魔術的要素が含まれていたからね。もしやとは思っていたが……』

 ふたりの様子を見て、羽月は得心がいったようにうなずいた。

 そんな羽月を見て、翔華は小さく息を吐いた。

「まあね。けど、相手も魔法と科学の融合技術を使ってきた。こちらの体勢が整うまでは、警戒が必要ね」

 つぶやく彼女の横顔は、憂いに満ちていた。




「悪い悪い。もうやんないからさ。機嫌を直してくれよひばり」

 困ったように笑いながら言う綾香の向こうで、ひばりはブレザーもブラウスも脱いでブラを着け直していた。

 胸を押さえつけるようなふた回りはカップ数の小さいブラを使っているため、服を着たまま着け直すなどと言う小器用なまねは出来ない。

 仕方なく女子更衣室までやってきた訳だが、綾香とアキもついてきていた。

「……もう良いよ。けど、こんなことはもうしないでよね?」

「おう☆」

 ひたすら謝ってきた綾香に、釘を刺しながらも許してしまうひばり。それに返事をする綾香は笑顔だ。


 しかしひばりは強く言うことは出来なかった。

 あれは、綾香なりの励ましだったであろうことは想像に難くなかったからだ。

 あの騒ぎのおかげで、自身の罪悪感がかなり軽減されていたのは事実だ。そして、それ以外の点に関しても、ひばりは綾香に助けられてばかりいる。

「……なにかお礼しなくっちゃね」

 つぶやくようにごちるひばり。服を整え、綾香の方へとやってきて、彼女を見上げた。

「ん? どした?」

 空の蒼さを映した湖のような蒼い瞳に、親愛を乗せて、ひばりに訊ねる綾香。

 ひばりは、それに対して「なんでもないよ?」と笑顔で首を振った。

 そして、綾香とアキのふたりと一緒に教室へ向かった。

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