第四十四話『煌めく銘刀』
「うりうりうりうり〜〜♪」
「うにゃあぁあ〜〜っ?!」
綾香の両手で、そのたわわなる二つの実りを揉みしだかれ続けるひばり。
楽しげな綾香に対して、ひばりは混乱の極致で目をぐるんぐるんさせている。
「すっげえな☆ 生クリームに指を押し込んだみたいに柔らかいぞ♪ でも、スポンジケーキみたいに弾力があってうまそうだ♪」
「何で解説するのっ?! というか、食べる気っ?!」
蒼い瞳に☆を散らしながら、嬉しそうに言う綾香に、ひばりは抗議の声を上げるが、それは綾香のいたずら心に油を注ぐようなものだった。
「お♪ それいいな☆ 食べちゃうぞ〜〜♪」
ふざけるように言いながら口を開ける綾香に、アキが再び息を吐き、翔華がハァハァ言いながらデジカメのシャッターを切りまくっていた。
「ムッハァ♪ 金髪美少女とポニテロリ巨乳っ娘の絡みハアハアハアハア……」
そんな翔華の様子に、滝川が遠い目になった。
「…………コイツのこういうところが嫌で別れたんだっけなあ……」
『心中お察しします。マスター』
彼のぼやきに相棒のToyが相づちを打つ。
『そろそろ止めた方が良くないかい?』
「……そうですね。綾香さん、そろそろ……」
カヲルに言われ、アキがやめさせようと綾香に声をかけたとき。
ひばりの悲鳴がやんで肩が震えはじめた。
「……い」
『い?』
小さな少女から漏れた声に、他の面々が反応し、首を傾げた。
瞬間!
「いい加減にしなさぁいっ!!」
「あぅち!?」
という声とともに、スパァンッ!! と、小気味の良い音が響いて綾香がのけぞった。
直後にひばりが床に降り立つ。いつのまにやら綾香のホールドから抜け出したらしい。
そして手にするのは、銘刀小烏丸。
謎の怪人よりプレゼントされたという、ハリセンである。
「なにするのよ綾香ちゃん! 人のオ、オオオ……お胸をも、ももも揉んだりして! おまけにブラまで外して……わひゃうっ!?」
真っ赤になりながら綾香にお説教をはじめるひばり。途中でブラのホックがはずれていることを思い出し、悲鳴を上げながら左手で胸を押さえて隠そうとするが、ブレザーの上からでもその柔らかさがわかるようにひしゃげるだけである。
この場にいる男性が、われ関せずを貫こうとしている滝川でなかったら、なにがしかの反応をしてしまうだろうことは想像に難くない。
「ウェヘヘヘ……支倉ちゃんのやーらかおっぱいスゲー♪」
訂正。鼻血とよだれを垂らしながらビデオカメラを構えたくせっ毛をアップにし、セーラー服の上に白衣をまとった黒縁メガネの淑女もダメである。
そんな淑女《変態》はさておき、赤くなった額を押さえて金髪碧眼の少女が身を起こした。
「いっつつ……ハリセンなのになんて威力だよ。つーかひばり、それどこから出したんだ? さっきまで持ってなかったし、隠せるような大きさじゃないぞ?」
「企業秘密」
理不尽そうに訊ねる綾香に、ひばりは顔を赤らめながらそっけなく答えた。
それから、綾香をにらむように見据えると、小烏丸をつきつけた。
「それより! なんで綾香ちゃんは……」
「…………じゃ!」
長くなりそうだと感じた綾香は、素早く片手をあげると逃げ出した。
「あ!? こら待ちなさ〜いっ!!」
それを見て、あわてて追いかけはじめるひばり。
そんなふたりを見て、アキは軽く息を吐いてから小さく笑い、歩きだした。
「いやあ、堪能したわ♪ ここのところ仕事詰めで美少女分も美少年分も補充してなかったのよね♪」
軽く額をぬぐいつつ、すがすがしい顔で淑女がのたまう。
「……どうでも良いが、その鼻血とヨダレを拭け」
「おおっと」
滝川が取り出したハンカチを受け取りながら、翔華が鼻血とヨダレをぬぐっていく。
「つーかコレ、今返す? 洗濯しちゃうとあたしの体液も残り香も消えちゃうけど?」
「俺は変態じゃねえっ!? ちゃんと洗って返せ!!」
「わかったわよ。ちゃんとアソコの粘液だらけにして返す……」
「……捨てていいぞ? ソレ」
「じょ、じょーだんよ冗談♪ もー総司ったら☆」
さすがに何の感情もこもっていない目で見られたのが堪えたか、翔華があわててとりつくろった。
そんな彼女からディスプレイへと視線を移し、滝川は翔華に気づかれないように小さく苦笑いする。
はたしてそれに気づかなかった翔華は、少し肩を落としながら振り向いた。
「で? あのこ達抜きでなにを話してくれるのかしら? 羽月」
「なにっ?!」
翔華の声に、滝川が振り向いた。
するとそこには、人間大の大きさとなったひばりの使い魔、羽月が左腕で胸を抱えあげ、右手をアゴにやりながら微笑み、たたずんでいた。




