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第四二四話『ひばり対慎一郎 2』


「きゃあっ?!」

『ぐあっ?!』

 ポニーテールの女の子と銀鎧の単眼戦士が真逆の方向へと吹き飛んだ。

 ゴロゴロと転がり、ひばりはうつ伏せで、慎一郎は仰向けに、お互いに離れた位置で止まった。

「う……」

『ぐ……』

 ひばりが手を着いて顔を上げ、慎一郎が苦労して身を起こした。

 そろってけしてダメージは小さくない。

 ライフにしても慎一郎は四割ほど、ひばりは六割は減っていた。

 アバターの防御力差が如実に現れた結果だ。

 のろのろと、二人は身体を起こしお互いを見る。

 ひばりの左ガントレットは砕け、衣装もボロボロ。ポニーテールを彩っていたリボンはズタズタになっていた。一方、慎一郎もナックルを装着していた左ガントレットがボロボロで、手にしていたナックルは握り手以外は粉々で無くなっていた。

 軽く震える身体を叱咤して、ふたりは立ち上がり、対峙した。

『……根性あるじゃねえか、支倉』

「……綾香ちゃんに、任せてって言っちゃったしね」

 単眼戦士の言葉に、ひばりは顔をしかめるように笑った。

 そんな彼女を見て慎一郎は肩をすくめた。

『……ダチの為か。ご苦労なこった』

「苦労って事も無いかな? 好きでやってることだしね」

 呆れたような慎一郎に、ひばりは苦笑した。

 そして、彼を見る。

「けどそれはあなたもだよね? 関くん」

『……』

 仮面の奥で、慎一郎はキョトンとなった。

「クラスのみんなや、あのライトイエローの人や、響子ちゃんのためにがんばってるんじゃないの?」

『…………そんなんじゃあねえよ』

 慎一郎が頭を掻こうとして固い音が響き、彼は動きを止めてから指先でヘルムをコンコンと二回小突いて頭を小さく振った。

 その様子にひばりは笑みを浮かべた。

 ソレに気づいて慎一郎は腰に手をやる。

『笑ってんじゃねえよ』

「あはは、ゴメン」

『ったく……』

 小さく嘆息した彼の口元は、仮面の奥で小さく緩んでいた。

 そして彼は軽く右手を振ってから身構える。

『……おしゃべりはここまでだぜ? 続けようか』

「……わかったよ」

 答えてひばりも身構えた。

 お互いに相手を見据えて、微動だにしない。

 数秒、数十秒、あるいは数分。ふたりは動かない。

 その間にも、周囲での戦闘は続いていた。だが、それを気にするでもなくお互いだけを見る。

 そして…………同時に足を踏み出した。

 瞬間、ひばりの足裏で爆発が起こり、彼女の小さな体が弾丸のように突進した。

 対して慎一郎は臆すること無く前へ。

 数メートルはあった二人の間の空間がみるみる圧縮され、ひばりは炎に包まれた拳を突きだした。

 これに慎一郎は無事な右腕を前に両腕をクロスした十字防御で構え、その一撃を受け止めた。



 ドゴォッ!



 その小さな体からは信じられないような轟音が響き、受けた慎一郎の体は、両足がレールのように並んだ二本の溝を掘りながら後退した。

 ひばりはそれだけで済まさず、さらに殴り付けようと拳を握りしめた。

 と、突然慎一郎の鎧が変形し、胸アーマーが十字に分割されながら赤く染まっていく。フルヘルムの特徴的な単眼はイエローに光り、両手両足から赤いエネルギーが吹き出す。

 これを見て、ひばりはあっけにとられた。

「そ、それは?」

『……こいつが、俺の切り札だよ。不完全だけどな』

 そう言って、慎一郎は手首を振ってファイティングポーズをとった。

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