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第四十二話『使い魔』


 幾何学模様の壁が崩れさると、そこはアバター内へ向かう為の扉の前であった。

 移動したつもりが、まるで動いていなかったということらしい。

 それをさておいて、無事を喜ぶ綾香と、彼女に抱きつかれるがままのひばりを見て小さく微笑んだアキは、小さな小鳥へと視線を転じた。

「……さて、羽月さんと言いましたか? いろいろ説明してほしいところなのですが、構いませんか?」

『質問に答えることは、やぶさかではないよ? 来島アキ。そしてのぞき見をしているあなたもね』

『あら、バレちゃってたのね〜? 抜け目の無い子ね』

 不意にウインドウが開き、翔華の顔が映し出された。

『当然だよ。……しかし、さすがと言っておこうか? 皇見翔華』

 羽月はおもむろに砕けた結界の跡を見回してから、翔華の映るディスプレイを見上げながら、ひばりの頭の上で右翼を手のように使ってアゴにあてた。

『科学者たるあなたが、魔法を理解し、結界を破る。本来交わること無きふたつの流れに存在する‘法’と‘術’。これを同時に理解することは非常に難しい』

 羽月がつぶやくように言って、翔華を見やる目を細めた。

 対して翔華はふてぶてしく笑いながら口を開いた。

『そうでもないわ。世界にある‘魔法’は、学問としての大系化や‘学術整備’が遅れているだけで、知識と実践の繰り返しで理解し、修得することは可能よ。そして、科学への‘魔法’の転用も、‘魔法’への科学の転用も不可能じゃあない』

 翔華の言葉に、羽月がうなずいた。

『その通りだ皇見翔華。まさに君が体現し、今回の事件がその証左でもある』

 そんな二人のやりとりを、アキは黙って聞いており、ひばりと綾香は?マークを飛ばしまくっていた。

『さて、この姿でしゃべり続けるのもなんだろう。よっ』

 と、羽月はひばりの頭から飛び降りると地面に降りた。

 つぎの瞬間、羽月の体が光輝いた。軽い破裂音とともに煙に覆われた羽月。

 それが晴れると、そこには十七センチ位の背丈で、癖のある黒髪を肩の当たりで切りそろえたツリ目がちの女の子が、黄緑色のワンピースを着て立っていた。

 羽月が人型に変身したのだ。

「…………」

「…………」

「…………」

 それを見ていたひばり、綾香、アキは開いた口がふさがらなかった。

 翔華だけはそれが当たり前だと言わんばかりの顔でそれを見ている。

 そんな周りを後目に、羽月は体をひねってあちこちを確認し、肩や首を回して自身の調子を確認する。

『……ふむ。初変身ではあったけど、問題無いようだね』

 つぶやくように言ってから、アキ、綾香、ひばりを見回した。

『さてと、改めて自己紹介といこうか』

 そう言うと、羽月は左腕であまり大きくはない胸を押し上げるようにし、右手を口につけるようにしながら口の端を持ち上げるような独特の笑みを浮かべた。

『ボクの名前は羽月。支倉ひばりに名前をいただいて、彼女の使いファミリアとなったものだよ』

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