第四〇九話『絶対防壁』
「……霧が」
「……晴れてく」
先ほどまでの濃密さが嘘のように、霧が晴れていきふたりは戦場に戻った。
と、すぐそこにライフが尽きかけた雪菜と、アサルトライフルを彼女に向ける麗華の姿。
慌てて優菜の方を見た彼女は、ライフをごっそり失った優菜の姿に息を飲んだ。
「っ?! 優菜っ?」
「……ごめん、見破られた」
「くうっ、守るッス!」
由里が慌てるように結界を張り直した。どうやら防御に使わなかったらしい。
動揺する三人に向け、綾香が飛び出した。“幻想舞踊”で分身しながら駆けた。それに気圧されるように、麗華が後ずさる。
その目の前で、綾香達が砕けて消えたかと思うと、次の瞬間には麗華を取り囲むように五人の綾香が姿を現した。
「くうっ!?」
迷わず右手側の綾香へ発砲する麗華。それに綾香の顔が驚き、ガラスの砕ける音を残して消えた。ついで麗華は身体を捻って真後ろへ盾をかざす。繰り出された蹴りと同時にカートリッジが弾かれ、盾を吹き飛ばさんばかりの衝撃に襲われる麗華。しかし、綾香の顔も驚愕に彩られていた。
「……来る場所が分かってんのか?」
「私のタレントはそういうタレントなの……よっ!」
綾香に答えながら、麗華は真上にアサルトライフルを向けて一斉射した。それは綾香の身体を捉えるが、ガラスの砕ける音を残して消え去るのみ。
「……実際戦うと恐ろしいタレントね? それ」
「……リスクもおっきいけどな」
つぶやく麗華に、綾香が答えた。その横合いで、ひばりが優菜を守る由里へと仕掛けていく。
『It's overdrive Flame!!』
構えたハンドガンの銃口から真っ赤な炎が溢れ出る。
『たあっ!』
彼女なりに気合いを込めた叫びと共にトリガーを引くと、その炎は銃口から溢れ出し、凶悪なまでの熱エネルギーを以て、由里の張ったドーム型小結界へと襲いかかった。
だが。
「嘘っ!」
炎が嘗めた後に出来た焼け野原に、由里の作った半透明のトーチカはまるで被害を受けた様子もなく健在であった。
バレットスタイルの破壊力にフレイムスタイルの火力を組み合わせたフレイムバレットのオーバードライブは、ひばりが叩き出しうる最大攻撃力だ。
これが効かないとなると、今のひばりの攻撃力ではこのトーチカの破壊は不可能ということになる。
「ど、どうしよう……」
「ふっふっふ、どうやらあたしのトーチカを破壊できないみたいッスね」
たじろぐひばりに、由里は得意そうに笑いながらアサルトライフルを構えた。
「言っとくッスけど、こっちは移動できないだけで攻撃できるッスからね!」
引き金を引いて一連射する由里。それがトーチカをすり抜けるのを見て、ひばりは仰天した。
「なにそれズッコイよっ?!」
声をあげてひばりは走り出す。
向こうが一方的に攻撃できるという状況では、打つ手が無さそうに見える。
「……嘘は良くない」
由里の足元で、優菜がぼそりと呟いた。だが、由里は気にした風でもない。
「ふふん♪ 騙される方が悪いッス♪」
笑みを浮かべてアサルトライフルを射ちまくっていた。




