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第四〇七話『“不可思議なる霧《ミステリアスフォッグ》”』


「雪菜!」

 勇んで飛び込んでいった雪菜を追って、自らも霧の中へと飛び込んだ綾香だったが、中に入ってみて驚いた。

 外から見たときは五メートル四方が良いところだったはずだが、一寸先ですら見えず、霧が体にまとわりついてくるかのような感触にまるでミルクの中を歩いているかのような錯覚を覚えた。

「……これ、むちゃくちゃ厄介だぞ?」

 さらに言えば狭い範囲に五人は居るはずなのに気配を察知できない。

「……“幻想舞踊ミラージュステップ”は使えるけど、霧の中の情報が制限され過ぎてる。距離を稼ぐのは難しいか」

 元来、“幻想舞踊ミラージュステップ”は、未来情報を演算して数多くの行動選択肢を用意してくれる。しかし、周辺情報が制限され過ぎれば選択肢が狭まっていくのは道理だ。

 綾香は改めて優菜の“不可思議なるミステリアスフォッグ”に警戒心を抱いた。

「方向感覚も狂わされてるっぽいし、雪菜のヤツ大丈夫か?」

 ぼやくように呟き、横合いから飛んできた弾丸を受けるが、ガラスが砕ける音がして、綾香の姿は数センチ後ろに下がり、フック気味に右拳を振るっていた。カートリッジが炸裂し、光弾が白い空間へ吸い込まれていった。

 が、なんの反応も無い。恐らく外れたと当たりをつけて、攻撃が来た方へと歩き出す。

 とは言っても、それが正解とは限らない。

「……マジでギリだったな。迷ったら当たるタイミングだ。しっかし、誰にもぶつかりもしないとか……根本的に効果を勘違いしてるか?」

 呟きながら回りを見回す。

 五メートルできかない距離を歩いているが、霧は薄まりもしない。

「……こいつは、移動しても埒が明かないタイプだなあ」

 ぼやきながら綾香は足を止めて辺りを見回した。もはや白い闇とでも言うべき状態だが、チェックは怠らない。

「……ん?」

 不意に正面に気配を感じて身構えると、小さな影が飛び出してきた。

「っと、ひばりか?」

「綾香ちゃん?」

 突然目の前に姿を現した綾香の姿に、緑とブルーに染まったひばりは目を丸くした。

「やっぱりこっちに居たんだね。合流できて良かったよ」

 そして安堵の息を吐く。

 それを見て、綾香は首を傾げた。

「やっぱり? あたしの居場所が分かって来たのか?」

「え? う、うんちょっと自信無かったんだけど……」

 綾香の問いにひばりは戸惑うように、しかし、しっかりとうなずいて見せた。それを見て綾香の表情が明るくなった。

「良かった。全然外に出られなくってさあ」

「……あー、確かにこの中、変なことになってるもんね」

「変な事? つったって五メートルかそこらだろ?」

 ひばりの言葉に首を傾げる綾香。しかし、ひばりは首を横に振った。

「違うよ? この中、迷路化してるみたいで、方向感覚をおかしくされて同じ場所をグルグル回らされてるんだと思う」

「へ?」

 ひばりの説明に綾香はその蒼い目をパチクリさせた。

「足元もコントロールされてるみたい。だからまっすぐ歩いてるつもりでUターンしたりしてる。空間干渉タイプのタレントだよ、これ」

「あ! 和也の使ってるフィールド干渉か!」

 それで合点がいった。

「……とすると厄介だな」

「うん。普通に突破するのは難しいと思う」

 フィールドに干渉して効果を発揮するタレントは、基本的にその場所に立ち入らなければ影響を受けないが、逆に立ち入った場合は抵抗不可能なレベルで影響を受ける。使用中に身動きを取ることが出来なかったりとデメリットも多いが、強力なタレントだ。

「とすりゃあ、どうしたもんか……」

 綾香は腕を組んで考え始めた。

 それを見た、ひばりがニッコリ笑う。

「あたしに任せて! いくつか考えがあるの」

 自信を持って言うひばりに、綾香はひとつうなずいた。

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