第四〇六話『敵陣強襲』
アバターたちが入り乱れる戦場からは少し離れた場所で、小さな戦いが繰り広げられている。
整然と並ぶ、六角形を横に引き伸ばしたようなシュート“S.C.W.E.R.”がつるべ撃ちし、ダガー“S.C.W.E.R.”が突撃していく。その射撃を、右前肢の大きな蟹型オリガミが受け止め、鳥型と獣型が突撃していき、ダガー“S.C.W.E.R.”と激突した。
獣型がダガーに串刺しにされるが、その隙に鳥型が側面からダガーへくちばしを突き立てて破壊する。
他にも蟹型のハサミで捕らえられたシュート“S.C.W.E.R.”が猿型に殴り壊され、蛇型に引きずり降ろされたシールド“S.C.W.E.R.”が獣型に噛み砕かれていた。
小さな戦いは、オリガミ達が優位に進めていた。
「ダメッ! こっちは広域に展開していた分数を集中できないヨ」
「……落ち着いてください。外側の“S.C.W.E.R.”を合流させて……」
鍵盤型の投影タッチパネルを撫でるように操作しながら言うあかりへ、アキが冷静に答える。
しかし、あかりの奏でる音は、不協和音で満たされていった。
一方、四・六組の本陣では、“音使い《サウンドマスター》”三人の演奏が続いていた。
『……凄い集中力だな』
その様子を見ていた漆黒の鎧に白い単眼のサイクロップスアーマーを纏う滝は感嘆の声をあげた。“音使い《サウンドマスター》”の三人はかれこれ四十分以上演奏を続けている。彼女たちのタレントは、生体の消耗が激しく、長時間使用できないタレントだと聞いていた。
しかし、そんなそぶりはまるで見せずに楽しげに演奏を続けていた。
出来れば限界が来るまで演奏を続けてほしい。
そう思うが……。
『……無理か』
振り返った滝の見る先に、何もない空間から滲み出すように現れ、土煙を上げながら接近してくる存在を見つけた。
明らかにバイクだ。
先の戦いでは目立たなかったが、八組にもバイクを操るアバターが居たことは確認していた。
『……姿を消せるなんて聞いてなかったが、まあ良い。迎撃準備だ!』
滝の合図で本陣を守備するサイクロップスアーマー達が動き始めた。
「あーもう! やっぱ足んなかった!」
「まあ仕方ねーさ。突っ込むぜ!」
「……」
バイクを操るのは、癖っ毛にタレ目の少年、木崎 大輔。その背中にくっつくように桜間 片菜。さらに立ち乗りしている小柄で茶色い髪を肩で切り揃えた松崎 優美の姿。
ちなみにこのバイクは大輔のサーバントチャリオット《ランドスピーダー》である。
三人は、優美のタレント“擬装態”によって姿を隠しながら近づいていた。だが、このタレントは、持続時間に難が有り、回数に制限がついている為、なかなか使いづらく、優美自身「使えない……」と肩を落としたほどだった。
それを大輔の移動力で補い、回数を使い尽くしてステージの端に沿って移動すると言う手間まで掛けてやっとたどり着いたのだ。
「……ていうかさ、大輔が方向迷わなきゃあもっと早く着いていたよね?」
「ぐ、てめ……優美が速度落とせって騒がなきゃ、もっと早かったぜ!」
「むう。さ、三人乗りなのに百キロも出すからでしょ!」
「……敵が来た」
言い合いを始めたふたりを尻目に、片菜がぽそりと呟いて、するりとふたりの間からすり抜けるようにして飛び降りた。
「うわわっ?!」
「いきなりかよっ?!」
片菜の突然の行動に、優美がバランスを崩し、大輔は彼女が振り落とされないように操作した。おかげで優美はなんとか振り落とされずに大輔の背中にしがみつけた。
その大きな背中に思わず優美は赤面してしまう。
「大丈夫か?」
「う、うん……」
振り向かずに声を掛けて無事を確認した大輔は、操縦に専念する事にした。
「優美、振り落とされないようにしながら攻撃してくれ」
「ええぇぇえっ?!」
無茶振りされて声をあげる。が、正面敵集団から迎撃の弾幕が張られ始めると口を閉じざる終えなかった。
「もうっ!」
誰に対する憤りかわからぬ声を上げ、優美は背中に背負っていたPDWを構えて反撃し始めた。




