第四〇五話『空戦コンビ』
『とどめだっ!』
白い単眼戦士が、クリスを拘束した赤い円錐へと飛翔した。しかし、金髪の銀騎士は、ニヤリと笑う。
「それはどうかなん?」
クリスの言葉に被せるように、単眼戦士の蹴りが円錐に届き……。
『“七枝刀”おぉぉおっ!』
下から伸びてきた光の刃に円錐ごと叩き切られた。
『グアァァアッ?!』
砕けた円錐ごと蹴足を斬り飛ばされ、ライフがごっそり削られる単眼戦士。
その目の前で、ュンッと抜き手も見せずに片手で構えられたライフルと、彼を見据える青い瞳に、単眼の仮面の奥で奈良 大介は目を見開いた。
ダキュンッ。
と、響く音だけを残して、大介のアバターは光の粒子となって消えた。
「ふいーっ、危なかったよん」
出てもいない汗をぬぐいつつ、クリスはごちた。
実際ギリギリだった。
余裕を見せては居たが、現在のクリスのアバターは、防御力は紙である。
たった一発の被弾でも、大きなダメージを受けていた可能性が高い。
あそこまで飛べたのは、元々持ち合わせていた土壇場での集中力と、三・十組との対戦のお陰だ。久しぶりとなるアバター戦の試合で、リハビリを済ませていなかったらと思うとゾッとしない。
今現在の状態は、未だ七割といった仕上がりだ。全盛期のアバターコントロールに比べれば目を覆いたくなるが、よほどの相手でもなければこのままでも大丈夫だろう。
「……とはいっても、将来相手取る本命とやりあうまでには完全に取り戻したいところだねい」
細く息を吐き出し呟いたところで、赤い機体がやって来た。
「ししょ~」
南波からの自分を呼ぶ声に、クリスはなんの事かと首を傾げる。そのうちに、南波はクリスのそばへと機体を寄せてきた。
「やりましたね師匠。強敵撃破です!」
「ああうん、ありがとう…………。なぜに師匠?」
朗らかに笑う南波に、クリスは怪訝そうに礼を言うとそう訊ねた。すると南波がその質問を待ち構えていたかのように笑顔になった。
「はい! 師匠! わたくしが朱雀の継承者なのはご存じですよね?」
「うむん」
南波にうなずくクリス。実際白虎継承候補でもあった彼女は、四神についての知識も持ち合わせていた。
従って、目の前の少女、朱羽 南波が朱雀を継承したことも知っていた。
南波は嬉しそうに続ける。
「わたくしは朱雀を継承こそ致しましたが、未だにその力を引き出せません。ですから、せめて朱雀が舞う空を飛ぶことに掛けて何者にも負けぬように修練して参りました。しかし、今日、この仮想の空であなたの舞う姿を見て、これこそ理想の舞いだと確信致しました!」
頬を赤く上気させ、南波は興奮を隠さずに言い放った。
それはクリスですら後ずさる迫力であった。
「……んで?」
「はい! もしご迷惑でなければ、ウエストロード先輩に師事したく……」
「……あー」
クリスはしかめっ面になった。
向上心があることは悪くない。
しかし、よりにもよって自分に師事したいとは。
「……こう言っちゃあなんだけどねい。あちしより他の人に習った方が……」
「いえ! わたくしはあなたの舞いに惚れ込んだのです! もはやあなた以外には考えられません! どうかお願いします!」
やんわり断ろうとするが、両断せんばかりの勢いで遮られ、墜落しそうな勢いで頭を下げられた。
空中で。
クリスは埒が明かないと踏んで先送りを決めた。
「……そ、その件は試合の後に話し合うとするよん。今は試合に集中しようかねい」
「はい! 師しょ……」
「師匠禁止で」
「……では先輩!」
「……」
全開気味の南波に押されるように、クリスは敵陣に向けて飛翔し始めた。




