第四〇二話『綾香対……』
「ライトイエローがフラッグ付近にっ?! なんで早く言ってくれないんだ!」
ようやく届いた報せに、綾香は近場の赤銅アーマーを殴り飛ばしながら声を上げた。
『すい……ん。“S.C.W.E.R.”が攻……れていて、……らの対……手一杯なん……』
聞こえてくるアキの声は、彼女にしては珍しく焦りをにじませていた。その事を感じ、綾香はくちびるを噛み締めた。
「くそっ! ひばり、あたしはフラッグの方へと戻る。こっちは頼めるか?」
「うん、任せて!」
綾香に言われてひばりは力強くうなずいた。
「よし、任せた☆ 楓!」
「聞いてた。後ろに戻るんでしょ? 先に行くわよ」
綾香に答え、楓は“加速”を発動させて走り出した。
「相変わらずはえーな。んじゃ、あたしも……」
「待ちなさい綾香」
移動しようとした彼女に、制止の声が掛かり、綾香は振り向いた。
そこには三体のアバターの姿。三体ともアサルトライフルにカイトシールドと軽装鎧で装備を統一していた。そしてその顔は。
「麗華、由里、ゆーな」
親友三人の名前を呟き、綾香は身構えた。
そんな綾香に麗華は笑みを浮かべて構えた。
「フラッグへは戻らせないわ」
「綾香の相手は、うちらッス」
「……覚悟する」
続けて由里、優奈も身構える。三人の姿に、綾香は口元を緩めた。
「……時間は掛けらんねえ。わりいが最初っから飛ばしていくぜっ! “幻想舞踊”!」 叫んで一歩踏み出す。その瞬間、綾香の姿が何人にも分かれる。
「来たわね! 由里! 優奈!」
「オッケーッス」
「……任された」
三人が陣を組み、綾香たちを迎え撃つ。
「リミットリリース“見通すもの《サーチマスター》”!」
「リミットリリース“堅陣守護”ッス!」
「……リミットリリース“不可思議なる霧”」
「なにっ?!」
周囲に霧が溢れ、綾香の視界が狭まる。
「ままよっ!」
が、不安を振り払い、三人がいた場所へと綾香たちが殺到した。拳が蹴りが、蛇腹剣が繰り出されていく。だがしかし、彼女たちの上と後ろ、左右からの攻撃は固い壁に阻まれてしまった。
「なんだっ?!」
わずかに動揺が走る。
それを。
「見えたわっ! そこよっ!」
麗華がアサルトライフルで攻撃した。
「ってぇ?!」
虚実の入れ換え先にライフル弾が飛んできて、綾香はさらに入れ換えた。
「くっ?! あんな際どいタイミングで……」
麗華にしてみれば、必中を期した攻撃だけに、悔しさも大きい。
一方で綾香も、三人のタレントに辟易していた。
「……視界を阻まれっと離れた距離を選択しにきぃな。それにあの防御壁。攻撃は効いてるみたいだけど厄介だな。あとは麗華のあれは……」
少し離れ、三人を分析する。
「……“幻想舞踊”の、実像が出現する位置を予測してんのか?」
正確には察知だ。麗華のタレントは優れた探知力を発揮する。
本来なら察知不能なほどの出現の前兆を、麗華は正確に捉えていた。
これほどの探知力を発揮されたのは、俊夫の直感位である。
綾香は、少し楽しげにくちびるを舐めた。
「綾香ちゃん!」
そこへひばりが駆け寄ってきた。
「ひばり?」
「ここはあたしに任せて、フラッグへ……」
自分に任せろとひばりが前に出ようとする。が、綾香がそれを制した。
「綾香ちゃん?」
「……悪い。ダチからの挑戦なんだ。だからさ……あたしにやらせてくれないか?」
綾香の言葉に、ひばりは目を丸くした。だが、三人から目を離さない彼女の横顔に、息を吐いた。
「……はあ、わかったよ。けど、あたしも手伝うからね?」
そう言うと、ひばりは六尺棍を構えた。
「おう☆ 頼むな♪」
「ならば私も噛ませてもらおうか」
聞こえた声に、そちらを見れば艶やかな黒髪をポニーテールにし、十文字槍を携えた凛々しい女武者がそこにいた。
「雪菜?」
「黒崎さん?」
「これなら三対三だろう?」
驚く二人の横にやってきた雪菜が、笑いながら槍を構えた。それを見て、綾香が苦笑した。
「しかたねーなぁ。頼むぜ?」
「承知!」
雪菜は獰猛な笑みを浮かべながら応えた。




