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第四〇〇話『龍の一撃』


「ぬんっ!」

 視点は前線に戻り、野太刀を垂直に構えた侍のような少年が、その得物を隼が獲物を狙うがごとき速度と鋭さで振り下ろした。

『うおおっ?!』

 その速度に赤銅色の単眼戦士は反応すら出来ずに切り裂かれる。もとより、熟練の武術家かよほどの動態反射能力でもなければ反応することも難しい一撃だ。いかに能力強化を受けたアバターとはいえ、防御は難しい。にも関わらず、そのライフバーは半分も減りはしなかった。

 一撃必殺を信条とした侍の少年、木野きの 修平しゅうへいの剛剣を以てしてもこれだ。普通のアバターには絶望的な防御力に見えるだろう。

「むうんっ!」

 本来、二の太刀要らずと呼ばれる示現流とほぼ変わらぬ太刀筋を得ている修平だが、フォローの二太刀目が無い訳ではない。鋭く跳ねた刃が赤銅の胸鎧を横薙ぎに断ち斬り、アバターは光の粒子と化して霧散する。

「……ふう」

 軽く息を吐いて辺りを見回せば、そこかしこで敵味方のアバターが入り乱れて戦っている。すでに乱戦模様だ。

 こうなってしまうと、派手な広範囲攻撃のウェポンツールやタレントは味方を巻き込む恐れがあるため使いづらい。

 修平のように対個人戦能力に長けた人間の方が動きやすくはあるのだ。特に修平は攻撃力に特化した部分があるので、このような戦場にも向いている。

 修平は苦戦している味方アバターを見つけると、野太刀を握り直した。

「……よし、次……」

 言い終わるより早く、背筋を駆け上がった悪寒に、太刀を振った。

 刃が甲高い金属同士の衝突音を上げ、“受け止められた”。

「へえ、すごいね君。ボクの気配に気づけるなんてさ」

「……何者だ」

 目の前の少女に誰何する。

 癖っ毛のショートボブに猫のような大きいツリ目。口許にはひとなつっこい笑みを浮かべた、首に黒いチョーカーを巻いた少女。自然体で立ちながら、修平の剛剣を受け止めていた彼女はゆっくりと口を開く。

「ボクの名前は 美龍めいろん。よろしくね?」

 笑いながら自己紹介する彼女から、修平は距離をとり、野太刀を上段に構えた。底知れぬ威圧感に冷や汗が流れ落ちる。

「……へえ、ずいぶん攻撃的な構えだね? 防御ががら空きだよ?」

「……俺にはこれしか出来んからな」

 メイロンの言葉に修平が淡々と答えた。互いに口をつぐむ。が、修平の掻く冷や汗の量は増えるばかりだ。対照的にメイロンは涼しい顔だ。構えもとらずに自然体で立つ彼女はボディスーツにブレストアーマーと肩当て、ガントレットとレガースというシンプルな出で立ち。得物は手の中には無いが、すぐに展開しようと思えば出来る。

 野太刀のリーチは脅威足り得ないだろう。しかしそれでも修平には自信があった。己が身に付けた踏み込みの速度と剣撃の速度に。相手は赤銅単眼の戦士とは違い軽装。一撃で倒せる可能性が高い。にも関わらず、彼は自身が勝利するビジョンが見えなかった。

 しかし、退くつもりもない。

 修平がその細目を見開いた瞬間、天より白銀の鎧が出現し、彼の全身を覆った。同時に雷光のごとき速度で、修平が踏み込みながら野太刀を振り下ろす。



 メイロンが笑みを深めた。



 いつ動いたのか?

 振り下ろされた修平の剛剣をいなしたメイロンの拳が、修平の体に添えられていた。

「……なっ?!」

 狼面の奥で驚愕する。それを尻目に、メイロンの両足が回り、腰が回転し、腕が引かれ、拳が前へと突き出された。



 パンッ



 と、軽い破裂音が響き、衝撃波が修平の身体を貫いた。その一撃だけを以て、侍の少年は地に伏した。

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