第四十話『ふたりの笑顔』
「!?」
綾香とアキの目の前で、虚空を見つめていたひばりのアバターが、突如として驚愕したかのように目を見開き身体を震わせた。
その瞬間。
ぽむん!
と、軽い破裂音がして、アバターが煙に包まれた。
「ひばりっ?!」
「ひばりさん?!」
思わず声を上げる綾香とアキのふたり。
その目の前で、軽い物が落ちる音がした。
「きゃんっ?!」
と、可愛らしい悲鳴があがり、煙の中に小さな影が見えた。
ほどなくして煙が晴れると、そこには前側が大きく開いていて、白い鳥の翼のようなスカート状のパーツのついた、緑と黒で左右に色分けされたレオタードとも水着ともつかない衣装をまとい、涙目でお尻をさすっている、元の小さな姿のひばりのが居た。
「ううぅ……。お尻打っちゃったよ……って、なに?! この格好っ!?」
ぶつぶつ言っていたひばりだが、今更ながらに自身の格好に気づいて声を上げた。
それに反応するように顔の横に小さなウインドウが開くと、風華の顔が表れた。
『ダメですマスター。外観データロックされてます』
「えぇえっ?! どうなってるのっ?! “羽月”っ!?」
風華の言葉に素っ頓狂な声を上げて、ひばりは新たな名前を呼んだ。
すると、軽い羽音とともに、彼女の頭上に小さな影が表れ、そのままひばりの頭に着地した。
『仕方ないんだよ、マスター。タレントとの兼ね合いもあるし、なによりマスターに似合っているしね』
そうのたまったのは、ひばりの頭頂にて翼をたたんだ、あの小鳥であった。
その言葉に、ひばりは真っ赤になりながら両手で胸を隠した。体のラインが出るレオタード系の衣装だけあって、トランジスタグラマなひばりの体のラインがはっきりと判別できる。
とくにその胸のボリューム感は圧倒的で、深くて柔らかそうな谷間が見て取れた。
「こ、こここ、こんな恥ずかしい格好が似合うって言われても、うれしくも何ともないよっ?!」
恥ずかしさのあまり、半泣きで悲鳴のような声を上げるひばり。
と、彼女の視界一杯に金色の海が波打った。
「ひばりっ!!」
「え? わわっ?!」
あがった声に振り向いた彼女は、ぶつかるようにして抱きついてきた金毛の少女に押し倒されていた。
「あ、え? あ、綾香ちゃん?」
綾香だ。
「元に戻ったんだな! よかった!」
ぼろぼろになりながらもひばりを押し倒した金髪碧眼の少女は、憂いをぬぐい去った安堵し切った声をうれしそうに上げた。
彼女の泣き笑いのような顔に、この蒼い瞳の少女の心からの想いを見た気がして、ひばりは胸の奥からこみ上げてくる物があった。
自然と、まなじりに光るものが浮かぶ。
「し、心配かけてごめんね? 綾香ちゃん。あたし……」
「いいんだ、ひばり。ひばりが、友達が無事だったならそれで十分だ☆」
言いながら笑う綾香の太陽のような笑顔に、ひばりは目を細めた。
そんなふたりの様子を、アキも、風華も、羽月も、優しい笑顔で見つめていた。




