第三九八話『小さな防衛線』
「リミットリリース! “魔鋼弾”!」
叫びととも言霊が解放され、ショートツインテールの少女が両手を胸の前で組んだ。そのまま左右に広げれば、手と手の間に光で出来た矢が数本顕れる。
そして腕を大きく振り上げ、オーバースイングでそれを投じた。すると光矢は勢い良く飛び出していき、鋼の兵士、グラウンドバッシャーに突き刺さった。
『?!?!』
その衝撃に機械の巨体がぐらりと揺れるが、すぐに持ち直した。
表面上のダメージは装甲にわずかな凹みがついたのみ。彼女のタレント“魔鋼矢”はそれなりの威力の有るタレントなのだが相手の防御力も中々のものである。
「くぬぬっやるじゃないの!」
声を上げる少女に反応し、グラウンドバッシャーがそちらを見た。
「あっ?!」
少女は意思など持たないはずの機械兵から殺気を感じたような気がして、背筋を震わせた。
その隙をグラウンドバッシャーは有効に使用する。すなわち、少女に向けて、ミサイルとマシンガンの同時射撃を行った。
少女呆然となる。
が。
「リミットリリース! “城塞兵の護り《ルークガード》”」
叫びと共に盾とアサルトライフルを構えた少年が、少女の前へといきなり姿を現し、彼女への攻撃を受け止めた。
「くぅ、結構強烈だ……」
盾から伝わる衝撃に顔をしかめた少年が、小さく漏らす。
「い、勇……」
その背中に、少女が小さく声をかける。すると少年、島原 勇が振り向いて優しく微笑んだ。
「大丈夫だった? 優」
その笑顔にショートツインテールの少女、花咲 優は顔を赤らめた。
「う、うんへーき。い……勇が……」
「あっ、まず……」
優が返事を返すより先に、勇の姿が掻き消えた。
彼のタレント“城塞兵の護り《ルークガード》”は、攻撃を受けそうな相手を守るためのタレントだ。半径20メートル以内の護りたい相手の元へと転移して、攻撃を受け止めるのだ。
その際、防御力が跳ね上がったり、追加効果を打ち消したりできる。
欠点は数秒で元居た位置に強制再転移されてしまうことや、身代わりになれる相手は一度に一人までであること。そして、代わりに受けた攻撃は必ず命中することだ。
そんなわけで勇は元居た位置へと戻ってしまう。
お礼を言いかけた優はあまりのタイミングの悪さに、口を金魚のようにパクパクさせた。
「……ま、まあ勇が私を守るのは当然だしね!」
間の悪さに、悪態を吐いてしまう優。しかし、勇から見えないように振り向いた先では、「やっちゃったぁ~~っ?!」という顔になっていた。今にも頭を抱えて転がり回りそうな勢いだ。だが、向こうから聞こえてきた勇の声に、顔を上げる。
「当たり前じゃないか! 優は僕の……僕の大切な……」
「い、勇……!」
花が咲くように笑顔を咲かせながら振り返る優。その向こうで、勇が朗らかに言い放った。
「大切な……幼馴染みなんだから!」
ピシリ。
と、時が止まった。主に優の。
そして周囲から非難の視線が勇に降り注いだ。




