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第三九六話『業火の刃』

「……か、躱せ~っ!?」

 それは誰の声だったのか?

 しかし、それを気にする余裕も無く、巨塔のごとき炎の大剣が振り下ろされる真下にいるメンバーが転がるように逃げる。

 しかし、それは完全では無く、数体のアバターはリタイアを覚悟した。

 大地を抉る、その剛剣は、しかしその剣身を半ばで途切れさせていた。

『……なに?』

 それを見て、赤い単眼に黒い装甲のサイクロップスアーマーを纏った木場きば 修治しゅうじは驚きの声を上げた。

 剣身が途切れた場所に見えるのは、ひとりの小柄で小太りな少年、斎藤 和也の姿。

 ブレストアーマーを紫に変化させ絶対障壁を展開して、巨塔の炎大剣を受け止めていた。


「……た、助かりました」

「……ふぇ」

 逃げ遅れていた香澄とひばりが揃って安堵の息を吐いた

「……ほぅ、ありがとう斎藤……君?」

 お礼を言いながら和也の方を見たひばりは、思わず声を飲み込んだ。彼に至るように、大地が溶けて抉れていた。それだけではなく、和也の正面を中心に放射状に広がるようにして地面が焦げていた。かなりの熱量である。

「……く」

 小さく声を漏らしてふらついた和也がヒザを着く。見ればライフバーが一割ほど減じていた。

「か、和也!」

 その場へシモーヌが牽制射撃をしながら滑るように近寄った。

「……マジかよ。二人を守れ! 敵を寄せ付けんなっ!」


 一瞬だけ呆気にとられながらも、綾香が声を張り上げて指示を出す。それに応えるように、七・八組の射撃メインのアバターが援護を開始し始めた。

「和也、大丈夫ですの?」

「うん、大丈夫だよしーちゃん」

 レーザーライフルでの牽制射撃を続けながら訊ねるシモーヌへ、和也は笑って見せた。

 絶対障壁によって、確かに巨大な炎の刃は防がれた。それは確実である。

 しかし、その強大なまでのエネルギー量から発生する膨大な熱量は、刃を受け止めた和也を炙るには十分な威力を持っていた。なにせ、サイクロップスアーマーの特殊攻撃でありながら、タレント“炎帝イグニス”による攻撃でもあり、“音使い《サウンドマスター》”の支援まで受けているのだ。

単純な攻撃力は通常の特殊攻撃と比べても三倍を越える威力となっている。それは、余波ですら確実にダメージとなるほどのモノだ。

「……やってくれるぜ」

 綾香は、我知らずに歯噛みした。

 一方で修治の方も威力の高すぎる自分の攻撃に辟易していた。灼熱の刃から比較的近くに居たサイクロップスアーマー達も、数パーセントのダメージを受けたからだ。元々サイクロップスアーマーの防御力は高いので、大きな影響は無いが、味方に被害を与えるようでは使い方を考えなければならない。

『……エネルギー消費は約30パーセントか。少なくはないな』

 呟いて、彼はタレントを発動させた。すると鎧の隙間から炎が溢れ、エネルギーが徐々に回復し始めた。

 修治のタレント“炎帝イグニス”は、エネルギーに変換しやすい炎を操るタレントのため、慎一郎のアーマー同様回復機能を搭載しているのだ。

 攻防にアーマーに蓄積されたエネルギーを使用するサイクロップスアーマーを使うにあたって、かなり有効な能力だ。

 この事を踏まえ、この赤い単眼に漆黒の装甲を持つサイクロップスアーマーは、他とは違いクロスガンではなく、バスターガンソード(響子命名)という武器を装備している。

 一メートル半もの肉厚の刀身を持つ大剣だが、刀身が左右に展開してビームキャノンになる仕様の武器だ。その威力は高く、エネルギーの消費も大きい。

 無論、回復可能だから装備されている武器だ。

 しかしながらこの武器自体未だに試験段階に過ぎないモノだ。完全に仕上げるには時間が足りなかった。

『……キャノンは使用禁止だったっけ。なら……』

 修治はタレントの力でバスターガンソードに焔を纏わせた。

『これでやらせてもらおう』

 そう言って手にした剣を大きく振りかぶり、敵に向けて振り抜いた。

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