第三九五話『前線激戦』
『うおおおぉぉおっ!』
『だあああぁぁあっ!』
仮想空間の戦場の真ん中で、四・六組、七・八組合わせて百を越えるアバターが激突した。
剣を、槍を、斧を、鎚矛を振るい、円盾や方盾が受け止める。
鋼の鎧が弾き、エネルギーフィールドが打撃を減ずる。
光剣が閃き、銃口が破裂音を吐き出した。
矢が風を切り、砲弾が炸裂し、光弾が飛翔する。
様々な攻撃を、様々な防御が受け止めた。
まるで戦争のように。
「行くぜッ! “幻想舞踊”!」
「たあっ!」
その中央で、綾香とひばりがタレントを駆使して戦線を押さえていた。
何人もの綾香が出現し、拳を、膝を、肘を、蹴りをそれぞれ繰り出し、同時にカートリッジの弾ける音が、幾重にも重なって響いた。そこへ黄色と白銀に塗り分けられたひばりが追従し、鞭のようにしなる鉄棍が、同時に彼らを打ち据えた。
防御に優れた四組のサイクロップスアーマー部隊はともかくとして、ノーマル仕様の六組には痛打となる。
『うわぁっ?!』
『きゃあっ?!』
『ぐはあっ!?』
次々に上がる声に、ひばりはわずかに顔をしかめた。
その隙を狙い、ひばりへ炎弾が飛んだ。
「! 危ないひばりッ!」
「?!」
気づいた綾香の声に、ひばりはハッとなった。
弾道は直撃コース。いかに空間把握が優れていても、意識の隙を衝かれては如何様もしようがない。奇しくも動きの鈍いスタイルであり、反射神経は人並み以下のひばりでは回避は叶うべくもない。ひばりはアダマススタイルの高い防御力に掛けて被弾を覚悟する。
そこへ、影が飛び込んできた。軽装備にふんわりと翻る癖の有る茶髪の少女。
彼女の構えた大盾が炎弾を受け止める。
その直後。
大盾が輝いて、炎弾を正確に撃ってきた者へと跳ね返した。
「大丈夫ですか? 支倉さん」
「あ、ありがと香川さん……」
やんわりと微笑みながら聞いてきた香川 香澄に、ひばりは安堵の息を吐きながらお礼を言った。
その姿に、香澄が身を震わす。
「やっぱり我慢できません!」
「な、なに?!」
声を上げた香澄に抱き締められて、ひばりは目を白黒させた。
「支倉さん可愛すぎます!」
「えええっ?!」
頬擦りしようとする香澄を押し退けながら、ひばりが声を上げた。
「何やってんだよ……」
その様子に、綾香がジト目になる。
そんなアホなやり取りの間に、跳ね返された炎弾が攻撃者へと襲いかかっていた。
が、相手は苦もなく手にした大剣で炎弾を切り裂いた。
切られて砕けた炎群が、大剣に吸い込まれる。
黒い鎧に赤い単眼と赤いライン。存在感を見せつけながら、彼は剣を高々と振りかぶった。
『charge!!』
電子音が響くと同時に、大剣から業火が噴き上がり、巨大な火柱となる。
「……お、おいおい」
「ふぁ……」
「あら……」
思わず綾香が声を漏らし、ひばりと香澄がぽかんとなった。
黒い鎧と綾香達の間にいる単眼戦士達がモーゼのごとく整然と左右に別れると、黒い鎧は赤い単眼を光らせながら剣を振り降ろした。




