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第三十九話『彼女の心』


「こ、小鳥? こんなちっちゃい子があたしのアバターで暴れてるの?」

 思わず口をついて出た言葉に、ひばりの肩の上で風華がうなずいた。

『はい。小鳥の外観データではありますが、私と同じような人工知能型のプログラムフィギュアみたいです。けど……』

 風華は言葉を切って眉根を寄せた。

 そんな彼女の様子にひばりが首を傾げた。

「どうしたの? 風華」

『はい。どうにも、プログラムの基本アーキテクチャは我々と似通ってはいますが、それ以外の部分の構造プログラムが我々とは異なるみたいです』

「?」

 風華の説明に、ひばりはますます首を傾げる。

 風華は小鳥から目を離すこと無く、続けた。

『わかりにくいですか? この小鳥は我々サイバーファミリアと根っこの部分ではほぼ同義の存在ですが、違う手法で作られたみたいなんですよ』

「……つまり、同じ料理を違う調理法で作ったみたいな?」

 何とか理解しようと自分に分かりやすいイメージに変換するひばり。それを聞いて、風華が小さく笑った。

『ふふ、マスターらしいですね? お料理に例えるなんて』

「あ、あはは……」

 風華に言われ、苦笑い気味に頭を掻くひばり。

 すると、小鳥が彼女らを見つめながら口を開いた。

『ワタシ ヒバリ マモル ジャマ スルナ』

 たどたどしくつむがれた言葉に、ひばりと風華は顔を見合わせた。

「えっと、どういうこと?」

『わかりません。マスターを護るというなら、味方であるはずの夏目様や来島様を攻撃するはずが……』

 ひばりの問いに、風華が訝しげになりながらも答えていくと、それを遮るように小鳥が声を上げた。

『チガウ! ヒバリ トモダチ ナイ! ゼンブ テキ!』

「!?」

 これに色を無くすほど驚いたのはひばりであった。

『何を言ってるんです!? おふたりはマスターの友達ですし、ほかにもたくさん友達はいます!』

 反論の言葉を投げかけるは風華。ひばりは黙したまま語らず、ただ、小鳥を見つめた。

 だが、小鳥は羽を広げて威嚇するように言い放った。

『マモル! ヒバリ!』

 たどたどしい言葉に反し、それはどこまでも力強い言葉。風華は気圧されるように、口をつぐんだ。

 しかし。


「……ありがとう」


 不意に響いた声に、小鳥の動きが止まった。

 風華も驚いたように声の主へと顔を巡らせた。

 言葉を紡いだのは、主たる少女。支倉ひばり。

 柔らかい笑みを浮かべ小鳥を見つめるひばり。

 小鳥は、威嚇するような姿勢をやめて、羽をたたんだ。

「……ありがとう小鳥さん。あたしを護るためにがんばってくれたんだよね? でも、綾香ちゃんとアキちゃんはあたしの友達……ううん、あたしが友達になりたい人なの。だから、攻撃をやめて?」

 静かに告げるひばりに、風華も小鳥も、一言も発しない。

 そんな中、ポニーテールの小柄な女の子は続けた。

「心配しないで? あたしは大丈夫。友達と一緒に歩いていけるよ?」

『マスター……』

 柔和な笑みを浮かべながら言うひばりに、風華はまなじりを下げた。

 それでも小鳥は、ひばりを見上げていた。

 まるで、ひばりの目を通して、その奥をのぞくように。

 けれども、ひばりはそれを受け止めた。

 もう大丈夫。と、言わんばかりに。

「ね? あなたもあたしと友達になって? あたしは支倉ひばり。央華学園に通う高校二年生。あなたは?」

『ワタシ ナマエ ナイ』

 ひばりの言葉にうなだれる小鳥。それを聞いてひばりは目を丸くした。

「そうなの? なら、あたしが名前をあげる」

 笑ってそう告げた小柄な女の子に、小鳥は顔を上げた。

「あなたの名前は……」

 そして紡がれた名を以て、ふたりは……。

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