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第三十八話『■■■■』


 時間は少しさかのぼる。


 ひばりと風華は、暗闇の中でアバターを操る何者かを探していた。

 とはいえ、データ内での探し物をするのに歩き回るわけでもなく、ふたりでディスプレイをのぞき込んでいた。

『やはりどう探すにしても周辺情報の可視化をした方が良いですね』

「そうだね」

 風華の提案に、ひばりは一も二もなくうなずいた。

 風華が一緒にいるとはいえ、やはりどことも知れぬ真っ暗な場所というのは、言いようのない不安感をもたらすらしい。

 ディスプレイに風華が触り、何事か念ずるが、周囲に変化はない。

『う〜ん。やっぱり私ではアバターの限定操作権限すら無いようです。マスター、こちらのディスプレイに触れて、周辺データの可視化を命じてみてください』

「え? あたしがやるの? 大丈夫かな?」

 風華にうながされ、ひばりはおそるおそるディスプレイに触れた。

 そして、彼女が軽く目をつむると、周囲が明るくなり始めた。

『うまくいったみたいですね』

「ここは……」

 周りが見えるようになり、風華がうれしそうに周りを見回した。一方でひばりは戸惑いを隠せなかった。

 見えるようになったそこは、ひばりの部屋だったからだ。

「ど、どうしてあたしの部屋に?」

 少し薄気味悪さも感じながら周りを見回すひばり。しかし、どうみても自宅の自室である。

『マスター、どうしましたか?』

 そんなこととはつゆ知らず、風華はひばりの様子を心配して声をかけてきた。

 ひばりは、そんな彼女にうなずきつつこの光景が自室と寸分違わぬ物であることを伝えた。

『マスターのお部屋ですか……。もしかすると、周辺データを視覚化する際に、マスター自身が持っているイメージで、一番近いものに変換されてるのかも知れませんね』

「アバター内のデータのイメージが、あたしの部屋に似てるってこと?」

 風華の言葉にひばりが首を傾げた。それを見て、風華は静かに首を振った。

『いえ、逆です。“マスターがこの場に対して感じたイメージに一番近いイメージを、マスター自身が投影した”んです』

「あたしが感じたイメージが? なんで?」

『それは、結局このアバターの主はマスターなんだって事です』

「???」

 意味が分からず首をひねるひばりに答える風華。しかし、その答えにしても、ひばりにはわからなかった。

 ただ、風華は首をひねり続けるひばりを見つめ続けていた。




 ともあれ、そこでつまずきっ放しという訳にもいかず、ふたりは屋内を探索し始めた。

 間取りはひばりの自宅とまるで同じであったため、どこが何の部屋かはわかっていた。

 ひとつひとつを開けてまわるが、何もいなかった。

 そして。

『……この部屋は?』

「ここには何も無いよ? 下に行こう」

 ノブも鍵も無い部屋の扉。すき間すら無く、一見すると扉の絵が書いてあるだけのようなソレを指差して聞く風華に、ひばりはそっけなく答えながら階段へ向かう。

 風華は声を上げようとしたが、見上げた先の主の顔に口をつぐんだ。




 階下に下りたふたりは、気配を感じた。それはキッチンダイニングから感じられた。

「いるね」

『そうですね』

 ふたりでうなずき合い、タイミングを計る。

「そこまでだよっ! ……え?」

『おとなしくなさいっ! ……は?』

 飛び込んだ先にいたものに、そろって目を丸くした。

 ダイニングテーブルの上にたたずんでいたのは。

 小さな小鳥だった。

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