第三十四話『リミットリリース』
光に包まれた二人が、ふたたび姿を現したとき。
その装備が変化していた。
綾香は、その魅力的なボディラインがはっきりと出るような水着ともレオタードともつかない白いラインの入った空色のボディスーツ着ていた。それは背中が大きく開いていて、なまめかしく艶やかに白い肌をさらしていた。そして両腰にスラスターの付いたスカートのようなメカニカルアーマーが配置され、少女の瑞々しい肉感的で少し太めの太ももが柔らかさと張りの良さを主張するように露出していた。
脚にはゴツゴツとしたアーマーを重ねたようなイカツいショートブーツのようなレガース。
白い肩も完全に露出していてまばゆく照り返し、二の腕には群青色のクリスタルのついた腕輪を填めていた。
さらにその手にするのは、全長が彼女の身長ほどはあろうかという片刃で肉厚のゴツい刀身の大剣だ。
また頭には大小二本の角のようなアンテナ伸ばしたイヤーバイザーが装着されている。
癖のあるボリュームたっぷりの金糸をひるがえし、蒼い瞳の戦乙女が不敵に笑う。
その隣で、アキも姿を顕した。
その姿は、まさに重量級。
彼女の細い体は、分厚い装甲の鎧によって、完全に隠されていた。
その姿は、四角い箱を組み合わせたかのような人型をしており、まるで軍用の主力戦車のように重厚なのである。
その背中からは、先ほどまでアキが携行していたかのような大型の砲門が二基、顔をのぞかせており、威圧感たっぷりに黒光りしていた。
ゴツい腕アーマーに備えられた右の大型のマニュピレーターには、七つの砲身を束ね、巨大な機関部を備えたガトリングガン。
左腕はマニュピレーターではなく、大型の鈍器のようになっており、なにがしかの兵装のようだ。
両足はその重量を支えるためか、下方へ向かって広がるように大きくなっており、安定性を確保しようとしている。
しかし、大きく張り出した両肩がトップヘビーさを助長しており、それが独特の迫力にも繋がっていた。
光りが収まり、まじまじと自分の姿を見る綾香。
そこにウインドウが滑り込んできた。
『どう? 夏目ちゃんの新しい装備よん♪ 翔華ちゃん謹製カスタムパーツだからね♪』
「お、おう。ありがとう理事長。でもいーのか? こんなスゴそうな装備もらっちまって」
『迷惑料込みよ。気にしないで。後、こちらからリンクアウトさせるのはもっと解析しないと難しいみたいだわ。やっぱり支倉さんを撃破するのが一番早いわね』
「……そっか」
翔華の説明に、綾香がこちらを警戒する黄と黒の闘士を見て少しだけうなだれた。
だが、すぐに思い直したか表情を引き締めて彼女を見る。
「……それしかないってなら、素早く終わらせるっ!」
言うが早いか、綾香が一歩踏み込んだ瞬間、腰アーマーのスラスターが唸りをあげる。
それを聞きながら綾香が踏み切ると同時にスラスターが雄叫びをあげた。
刹那。
綾香は残像が残るほどの急加速で闘士に迫り……通り過ぎた。
「どっわああぁぁぁっっっ?!」
およそ年頃の娘らしくない声を上げながら地面に激突する綾香。そのとんでもない勢いに、大地が破裂し、クレーターが出来た。
「あ、綾香さんっ?!」
「ぶはっ?! むちゃくちゃ制御ムズカシーぞっ?! この装備ッ?!」
思わず声をかけるアキに、クレーターの中央から頭を引っこ抜いて叫ぶ綾香。
そんな彼女の前に、ウインドウが開いた。
『大丈夫よ。あなたなら出来るわ。夏目さん! 後、‘タレント’も使ってみなさい』
キリッとした顔で根拠レスにのたまう翔華へジト目になりつつも、綾香は思い出したかのように相棒を呼びだした。
「セレーナ! リミットリリースだ!」
『了解したぜマスター! パスワードをっ!』
セレーナのパスワード要求に、綾香は淀み無く答えた。
『リミットリリース認証!! ‘タレント’【ミラージュステップ】発動!!』
その声に導かれるように、綾香は軽い調子でステップを踏みはじめた。




