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第三十話『顕現するモノ』

 悲鳴のようなひばりの声に呼応するかのように、その足下に魔法陣が展開した。

 それが、黄金の輝きを放ち、立ち上った光の柱が天を突いた。




「な、なんだっ?!」

「これって……」

 背後に気配を感じた滝川と翔華の目の前で、ひばりが居るポッドが光輝き、魔法陣が展開した。

 そして、そこから光が吹き出し、柱のようになって天井を突いた。

「な、なにが起きてるんだ?」

 呆然と柱を見る滝川の横で、翔華も柱を見つめた。

「……そうか、そういうことか」

 翔華はひとり納得したかのように笑みを浮かべた。




「こ、これはっ?!」

「魔法陣? けれどこんな規模……」

 水晶玉に映るのは、央華学園の敷地すべてを収めるほどの巨大な魔法陣。

 これを見て、メガネの男は驚愕に顔をゆがませ、女も顔をひきつらせた。

「……なるほど、巫女とこの央華の地に集まるエネルギーが引き起こす力が。やはり巫女もこの地も押さえねばならんな」

 ただひとり、リーダー格の男だけが、その顔に愉悦を浮かべた。




『なんだなんだ?』

『なにが起きてるんだ?』

『おい、すげーぞ』

 教室の窓は、中から外を見る生徒で埋め尽くされていた。

 突然に地面に巨大な光の円が広がったかと思うとまばゆいばかりの光の柱が天へと立ち上ったのだから無理もないだろう。

 2-8の面々も、窓に貼りつくようにしてその光景を見ていた。

「いったいなにが起きてるんだ?」

 その声は誰のものだったのか? しかし、それに答える者は居なかった。

 ただ、その柱を睨むように見る目もあった。

「ゆ、祐介……これって」

「ああ……とんでもない規模の魔法陣だ。いったいなにが起きてるんだ?」

 神薙御鳥と高遠祐介。狩り士として、オカルティックな事象に詳しいふたりをして、見たことがない規模の魔法陣。

 それがもたらすものが解らず、ふたりの狩り士は表情を険しくした。




「……いやはや、こんな派手な事が起きるとは、困ったものだねえ」

 ただひとり、クラスメイトから離れてため息を吐くのは、その存在の薄さで誰にも気取られない糸目の少年、加藤武。

 彼をして、この事態は予想の範疇外のようである。

「……果たしてちょっかいを出して痛い目を見たのは誰かな?」

 しかし、慌てるでもなく、彼は薄い笑みを浮かべた。




 天を貫く光の柱。その柱をの上の方が光輝いた瞬間。

 柱を道として、何かがすさまじい速度で降りて来た。

 そのなにかが、大地に突っ込んだ瞬間。

 魔法陣は跡形もなく消えてしまった。

 あんな大スペクタルとも言うべき現象がきれいさっぱり跡形も無く消えてしまったのだ。まるで、そんな事件など無かったかのように。




 そして、ふたたびリンクネット内。

 その光の柱をくぐり抜け、ひばりの目の前に光輝く炎で出来た小鳥が舞い降りた。

 それは、一声鳴くと、その翼を身の丈より大きく広げ、小柄なひばりのアバターを抱きしめるように覆い尽くした。

「ひばりっ!?」

 綾香が思わず声を上げ、アキが驚愕しながらその光景を見る。

 プロテクトモンスターすら動きを止めて見つめる中、その光の炎が弾け飛んだ。

 そして顕れるのは。


 長い黒髪をなびかせながら、左右に鳥の羽根飾りの着いたカチューシャを着け。


 鳥の翼を模したかのような、前が大きく開いたスカートを翻し。


 体のラインがはっきりと出る、黒と緑で左右に色分けされたレオタードのような衣装をまとった、綾香と同じくらいの身長のひばりだった。

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