第二十五話『リンクネット』
扉をくぐった綾香を待ち受けていたのは、開けた草原だった。
「うっわ……」
吹き抜けた風に彼女の金糸が揺れて、日の光を照り返した。
「すっげぇリアル。風が頬をなでる感触とか、はっぱの匂いとかきちんとわかるなあ」
しゃがみ込んで生えてる草をしげしげと観察する綾香。
すると。
「よいっしょ……と、なんか外に出たっ?!」
その声に綾香が顔を上げると、そこにはひばりの姿があった。
「よお☆ ひばり♪」
「あ、綾香ちゃん。……なにやってるの?」
綾香に声をかけられ顔をほころばせるひばりだったが、スカート姿でしゃがみ込んでいる綾香に、訝しげになった。
綾香はそんなひばりを見ながら立ち上がると、お日様のように笑った。
「いや、風の感触や草の匂いがリアルだったからさ。けど、アバターの表情もすごい自然だな♪」
言われて初めてひばりは綾香のアバターの笑顔が、本物の綾香の笑顔そっくりだという事に気付いた。
「ほんとだっ?!」
目を丸くするひばりに綾香は苦笑いした。
そんな二人の背後に、ひとつの陰。
「おふたりとも準備はよろしいですか?」
そう言ってきたのはアキだった。
その姿は綾香やひばりとはまるで違うものだ。
綾香が制服に片手半ブロードソードにガントレット。ひばりは制服に倭刀を一本。それに対してアキは、青いメカニカルアーマーにゴツいガントレットとブーツ。
そして右手には大きな筒状の大砲を持っていた。
「すげえ重装備だな」
「重くないの?」
そんな風に綾香とひばりに訊ねられてアキははにかむように笑う。
「重量的な重さは0ですよ? お二人とも。データ量的な意味であるならかなり重いですね。まあ、装甲を削って機動性を確保していますね」
アキの説明にふたりは軽くうなずいた。
「にしたって、そんなロボっぽい外観のまであるんだな」
「ほんとだね」
つぶやく綾香に、ひばりがしきりにうなずいた。
それを聞いたアキはクスリとが小さく笑った。
「いえ、これは外観をイジってあるんです。元々は、デフォルトヘビーアーマーですよ。ほら」
そう言ってアーマーに左手でタッチすると、色合いやディテールが変化して、重そうな鎧の外見になった。
「基本的なツールの外観はかなり変えられるんですよ。たとえば……」
いいながらもう一度タッチすると、今度はアキの体のラインぴったりのレオタードのような外観になった。
「うわっ? ほんとだ!」
「これって能力は変わらないのか?」
驚くひばりの隣で、綾香がそう質問すると、アキがうなずいた。
「ええ。各種ツールソフトの外観データは大したデータ量じゃありませんからね。データ的にはほとんど変わりませんよ。ただ、“TaC”の基本性能は、みんな同じです。むろん、最適化やファミリアの情報処理能力の向上によって演算機能に余裕が出るかもしれませんが、使える処理能力やデータ格納領域は同じですから、うまくやりくりするのが大事なんです」
そう説明したアキは、再度アーマーにタッチして、メカニカルデザインのアーマーに戻した。
「へぇ」
「なるほどなあ」
感心したように声を上げるひばりと綾香。
そんな二人をアキは促した。
「では、行くとしましょうか」




