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第二十三話『V-world』


 軽い空気音とともにカバーがスライドし、卵の中から一人分の座席が現れる。

「まずはその席に座ってくれ」

 滝川はひばりと綾香、そしてアキにそう言うと、自身は壁側にあるオペレーター席へ向かう、

 ひばりと綾香が少し戸惑うように顔を見合わせたが、アキがふたりに声をかけた。

「まずはお好きな席に」

 言われてふたりは近場に並んだ二つを選ぶ。

「座席は長時間座ることも考慮したものですから、体重を完全に預けてしまってください」

 言われてふたりは座席へと完全に体重を預ける。

「では、左のアームレストのスイッチにカバー開閉のものがありますからそれを押してください」

「わかったよ」

「オッケー☆」

 ふたりが返事をしてカバーを閉じるのを見届けると、アキは手慣れた様子で近くの座席を解放し、体を滑り込ませた。




「わあ」

 座席カバーを閉じた瞬間、真っ暗になるものの、すぐにカバー裏全体からなるメインモニターが点灯した。

 映し出されるのは外の様子である。

「えと、次は……」

 ひばりはつぶやいて周りを見回した。

 と、モニターの真ん中にアキの姿が小さく映った。

『大丈夫ですか? ひばりさん、綾香さん』

「アキちゃん! 次はどうしたら良いの?」

 アキの顔を見て訊ねるひばり。

『慌てないでください。まずは……』

 ふたりに対して説明を始めるアキ。ひばりも綾香もそれを聞きながらうなずいていった。




「……へえ」

「どうしました? 理事長」

 おもしろそうだと言わんばかりの翔華の感嘆の声に、滝川はオペレーター席でキーボードを叩き続けていた。

 その事務的な声に、翔華が唇をとんがらかせて滝川を見た。

「ツレないわねぇ? 昔みたいに翔華って呼んでくれないのかしら?」

「……それこそ黒歴史だ」

 そんな翔華の言葉に、滝川が渋面を作った。

 しかし、翔華は気にした風でもなく管理用の画面で、ひばりと綾香に操作をレクチャーするアキの方へと視線を転じた。

「あの娘が自分から他人に関わろうなんて珍しいからね。保護者としては嬉しい限りだわ」

「……」

 慈しむかのような翔華の表情を、滝川は横目で盗み見た。

「……まあ、確かに来島は他人に対して不干渉を貫こうとしていた節があるからな。そこは俺も驚いた」

 翔華に見とれそうになったことを誤魔化すように、滝川はキーボードを叩きながら言う。

 そんな彼の態度に翔華は小さく微笑んだ。




 アキによるレクチャーが終わった辺りを見越して、翔華はアイポインタで三人に回線を繋いだ。

「さて、準備は出来たかしら? 出来たらHMUヘッドマウントユニット被ってシステムを起動させてちょうだいね?」

『わかりました』

『おう☆』

 ひばりと綾香は返事をしつつHMUを被る。網膜投影型ディスプレイが展開し、そこからアイポインタコマンドでシステムを起動していくふたり。


  【Welcome to V-World!!】


 そんな文字が出たかと思うと、ふたりの視界は一気にクリアーになった。

「ふわぁ……」

 そこは真っ白な空間だった。

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