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第二十一話『あたし!! 惨☆状♪』



『あたし!! 惨☆状♪』



 改めてポーズをとりながら叫ぶ女性の姿に、ひばりは顔に○を三つ作って呆然となった。

 その隣でアキが嘆息し、滝川が頭を抱えてうずくまった。

 ただ一人、綾香だけが楽しそうな顔で、その蒼い瞳を☆にしていた。

「生徒の前でなにをしてるんですか?……理事長」

「え゛?!」

 絞り出すような滝川の声に、ひばりは驚いて彼を見の沈痛そうな表情を見た。さらに視線を転じれば、アキがため息を吐いていた。

 そんなふたりの様子こそが、それが事実であることを証明していた。

「せ、先生。ほ、ほんとに理事長なんですか」

 思わず担任に聞いてしまうひばりだが、彼からは沈黙による肯定だけしか返ってはこなかった。

「あっはっは♪ このしょーかちゃんが理事長だって信じられないようね?」

 不意に楽しそうな言葉が飛んできて、ひばりは身をすくませた。

 見ると、セーラー服の上に白衣という奇矯な姿の女性は、執務机の上からひばりを見ていて彼女は慌てた。

「あっ?! い、いえそういうつもりでは……」

 恐縮したように言うひばりに、女性が優しげに笑う。

「いいのよ? あたし自身理事長なんてガラじゃあないって思ってるしね」

「え?」


 女性の言葉に驚くひばり。

 しかし、彼女は気にした風でもなく、執務机の上に腰を下ろした。

「さて! この央華学園の理事長たるあたし、皇見おうみ 翔華しょうかちゃんに、どんな用事かしら?」

 訊ねる顔にあるのは、楽しげな表情と確かな自信。その迫力に、ひばりと綾香は少しだけたじろいだ。

 と、滝川教諭がなんとか立ち直って口を開いた。

「……緊急の案件です。サイバーファミリアに不具合が発生したみたいでして」

「不具合?」

 滝川の話に、翔華の左眉が軽く跳ねた。

「はい。まずは……支倉。ファミリアを」

「あ、はい。風華」

 滝川に促されて、ひばりは一歩前に出ながら風華に声をかけた。

 ひばりの肩に座っていた風華は、そのまま立ち上がると、翔華を見た。

 翔華は軽い所作で机から降りると、そのままひばりの元へと歩いていくと腰を屈めてのぞき込んだ。

 メガネの奥の瞳に、いくつものウインドゥが開いたり閉じたりを繰り返す。

 網膜投影式のディスプレイだ。さらに言えば、彼女のメガネも分析ツールを兼ねており、四人が部屋に入ってきた瞬間からスキャンを始めていた。

「ふぅん。これは面白い個体ね?」

 風華を見ながらつぶやき、笑う翔華。

 そのまま顔を上げると、まとう空気が、ふざけたものから変化した。

 腕を組みながら右手の人差し指だけをアゴに宛てて歩き始める翔華。その振る舞いは、まさに研究者のものだ。

 その歩みが、不意に止まった。

「そうね。もうちょっと詳しく調べましょうか? アキ、ダイブの用意を。“向こう”で直接調べるわ。それから、支倉さんと夏目さんにも手伝ってもらうわね? 滝川君」

 言いながら振り返った翔華は、四人にウインクして見せた。

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