第二十話『えっ?! この人が?』
突然の乱入者に、ひばりとアキは目を丸くした。
しかし、綾香は気にした風でもなく笑顔を向けている。
「なあなあ、良いだろ? アキ☆」
『そうだぜ☆ 友達なろうぜ♪』
綾香に同調し、彼女のファミリア、セレーナも楽しそうに言う。
対してアキは困惑し、ひばりは苦笑い気味だ。
「い、いえ、その……」
「あはは……」
しかし、そんな三人に降り注いだのは、その場にいるもう一人の声だった。
「……夏目。俺は自習をするように言ったはずだが?」
低い声音の滝川は、ずぼらな体に反して迫力があった。
ひばりが思わず息をのみ、アキが軽く息を吐く。
そして、当の綾香は滝川の目を真っ直ぐに見た。
「あたしはひばりの友達だ。友達の困りごとには力を貸したい。だから追いかけてきた」
気持ちの乗った真っ直ぐな言葉。しかし、簡単に折れてやるほど滝川は甘くない。
「教室へ戻れ、夏目」
「嫌です」
即答だった。
一瞬、詰まってしまう滝川教諭。綾香の蒼い瞳は、まるでブレることなく滝川を見つめていた。
「授業を欠席扱いにするぞ?」
「構いません」
にらむように言う滝川に、綾香は間髪入れずに答えた。
口をつぐんで相手をにらむふたり。
滝川がさらに言おうとしたとき、横から声がかかった。
「人手が必要になるかもしれませんし、来てもらってはどうでしょう?」
アキだ。
滝川の顔を見ながら淀み無く言う姿は、学園の生徒では無く、一人の研究者の姿だった。
アキと滝川の視線が絡み合った。
だが、それは一瞬のことで、滝川の方がすぐに頭をガリガリやりながら視線を外してしまった。
「はあ……。分かりましたよ……」
言うが早いか歩き出す滝川。
三人の少女は、軽く顔を見合わせると、それに続いた。
四人でしばらく歩き、目的となる部屋の前までやって来ていた。
すると、滝川教諭はとてつもなくにがり切った顔になった。
「……あー。支倉、夏目」
「はい?」
「どうした? 先生」
不意に声をかけられ、首を傾げるひばりと綾香。
その隣でアキが苦笑いを浮かべていた。
その様子を気にしつつ、滝川はふたりに対して真剣な面もちで話始めた。
「良いかふたりとも。この先で見るものは他言無用だ。わかったな?」
「は、はい」
「おっけー☆」
滝川の尋常ではない様子に、ひばりは緊張気味に答え、綾香は楽しげに笑いながら了解した。
それを確認した滝川教諭は、ひとつうなずき、前に進み出た。
「よぉし。いくぞ……」
滝川は、豪華そうな作りの観音開きの扉をノックした。その上には、【理事長室】のプレートが張り付けてあった。
『ういうい♪ 開いてるわよん♪ 入ってらっしゃいな☆』
滝川のノックに応えて女性の声が聞こえ、ひばりは緊張のあまり口の中にたまったツバを嚥下した。
その音は、いやにはっきり聞こえた気がした。
「失礼します」
滝川が扉を開け、彼を先頭に四人が入室した。
次の瞬間。
『ソ□モンよ! 私は帰ってきた!』
そんな叫び声と共に彼らの視界に飛び込むように迎えたのは、豪華そうな執務机の上に仁王立ちになりながら両手を広げた、セーラー服の上に白衣をまとった、癖のある黒髪をアップにした黒縁メガネの女性だった。




