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第二話『ブロンドタイフーン』

 とあるアパートの一室にて、窓の隙間から漏れる暖かい春の日差しを浴びながら、一人の少年が惰眠をむさぼっていた。

 少し短めの固そうな黒髪をした、細身の少年だ。

 しかし、細身とは言え侮ってはいけない。

 寝間着代わりのTシャツからのぞく二の腕には、無駄な肉は無く、しっかりと絞り込まれた筋肉が見て取れた。

 “大きく盛り上がった”掛け布団に隠れた胸板から下の部位もしっかりと鍛え上げられているに違いないことは、想像に難くない。

「うーん……」

 少し暑いのか軽くうなって寝返りを打とうとする少年。だが、体が動かない。

 まるで、胸から下が柔らかい何かによって拘束されているかのような感触だ。

「……んん?」

 少年の眉が、不満そうにひそめられ、眉間にシワが寄る。

 と、彼の鼻腔を甘い香りが刺激した。

 まるで彼を包み込んで、とろかせるかのような甘い甘い女の香り。

 それが引き金となって、少年の脳が一気に覚醒していく。

 それと同時に、みずからの下腹部を圧迫するふたつのやーらかい存在を感じ、あわててそちらを見た。

 すると、掛け布団が、おのれひとりでは絶対にあり得ないほどに大きく膨らんでいた。

 そう、ちょうど人ひとり分くらいの大きさだ。

 少年はおそるおそる掛け布団をめくってみた。

 すると、金色の固まりが、彼の視界いっぱいに飛び込んできた。

「な……ななな……?!」

 驚きのあまり後ずさりしようとしたが、腹の辺りでホールドされていて身動きがとれない。

 そんな風に彼がもがいていると、金色の固まりが、もぞもぞと動き出した。

「ん……ん……?」

 その固まりの奥に、蒼い瞳が現れ、彼を見上げた。

 少し寝ぼけたような、あどけない顔。

 それが、ふにゃりと笑った。

「……おはよ♪ タカ☆」

 そうして起きあがったのは、金髪碧眼の少女だ。

 その見知った少女の姿に、少年はわなわなと震えた。

「な、なななな、なっ!?」

「な?」

 少年の言に、少女は訳が分からないとばかりに首を傾げた。

 それが少年をブーストする。

「な、なにやってるのさ綾香!」

「なにって、添い寝?」

 いきり立つ少年、吉田よしだ 鷹久たかひさに、しれっと答えるのは、金髪碧眼の美少女、夏目なつめ 綾香あやかである。

 その魅惑のグラマラスボディを包んでいるのははだけたブラウスと赤いチェックのスカートのみだ。

「なんで添い寝してるのさ。昨日は泊まっていかなかったでしょうに」

 疲れた様子で言う鷹久。

 それを聞いて綾香が笑った。

「いやあ、起こそうと思ったんだけどさ。あんまりにも抱き枕《鷹久》が気持ち良さげに寝てるもんだからつい☆」

 おどけたようにベロをちらりと出す綾香。

「つい☆ じゃないでしょ。つというか、なんか別なもののルビに僕の名前を使わなかった?」

「気にすんなよー。ハゲんぞ? そ・れ・に……☆」

 ベッドの上であぐらをかいた綾香は口の両端をつり上げるようにしてにんまりと笑った。

 いたずら好きの彼女が見せる、小悪魔のごとき笑い。

 【小悪魔スマイル】である。

 この笑い方をしているときの綾香はろくな事をしない。

「あたしのおっぱいの感触、楽しんだだろ? タカ☆」

「……否定はしない」

「なんだよ、つまんねーな」

 否定しない鷹久の言に、綾香はつまらなさそうにベッドを降りた(ちなみにスカートの下にはレギンスを履いていた)。

 こういう時、否定すればするほど綾香は調子に乗っていたずらを仕掛けてくる。

 それもアダルトコードギリギリのボディタッチでだ。

 それにあわてる鷹久を見て、綾香は喜ぶのだ。

 従って、素直に認めてしまえば実害は少ない。

 ベッドから降りた綾香は、そのままスカートのホックを外してブラウスの裾を直し、リボンタイを付け直してから、鷹久の学習机の椅子に掛けてあった深緑のブレザーを手にとった。

「朝飯の用意は終わってるからな? ちゃちゃっと支度して、とっととメシ食えよ?」

 言いながら出ていく綾香を見送り、鷹久は深く息を吐き出した。

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