第十八話『その姿は……』
かすかなざわめきとともに生徒等が作業に没頭する中、鋭い警告音が小さく鳴った。
「あれ……?」
その音の出所であるディスプレイを操作していたひばりは思わず声を上げていた。
「どうした? 支倉」
その様子に、ほかの生徒にアドバイスをしていた滝川はすぐに彼女の方へと移動した。
「先生」
滝川に声をかけられたひばりは困った顔で彼を見上げた。
「ファミリアの外観データが……」
彼女の言葉に、滝川がディスプレイをのぞき込むと、そこにはエラー表示が出ていた。
「……なにをしようとしたんだ? 支倉」
「髪の色を少し明るくしようとしたんですけど……」
ディスプレイの脇から投影タイプのキーボードを引き出しつつ訊ねる滝川に、ひばりは困惑気味に答えた。
その様子に、風華も首を傾げているようだ。
「ふむ。おかしな操作をした訳では無さそうだな……。しかし、外観データの一部にロックがかかってるな。支倉、ファミリアに指示してロックを外すんだ」
「え、えっと? 風華、ロックを外して?」
滝川に言われ、風華に指示を出すひばり。
しかし、風華は困ったように首を振った。
『ロック、解放されません。私のデータに本来のロックとは別のロックがかかっています』
「なんだと?!」
風華の言葉に、滝川か驚いたように声を上げた。
マスター権限を持つ生徒の許可を得たなら簡単に外れるはずのデータロックが本来あり得ないふたつめのロックによって固定されているのだ。
明らかに異常事態である。
そんな彼らの様子に、ほかの生徒たちもざわつき始めた。
「……こうなると俺の手には余るな。支倉、すまんが一緒に来てくれ。お前のファミリアを調べなきゃならんからな」
滝川は渋い表情でつぶやくとひばりにそう言って顔を上げた。
「来島!」
滝川に声をかけられ、アキがべったりと隈の張り付いた顔を上げた。
「緊急事態だ。お前も来い」
言われたアキが軽く息を吐いた。
「はあ。仕方ないですね。行きましょうか。カヲルさんは情報収集を願います」
『ああ、わかった』
カヲルと呼ばれたアキのファミリアはそう答えて姿を消した。
それを見て滝川は、もうひとりの人物へと視線を転じた。
「ウエストロード」
「うむん? なにかなん? タッキー」
「俺は支倉と来島を連れて理事長の所へ行ってくる。おまえはクラスをまとめて自習させておけ。なんならカスタマイズの段階を上げてもかまわん」
滝川に名指しで頼まれたクリスは、苦笑いをしながらも、わかったよん♪ と了承の言葉を口にした。
それを聞いた滝川は、ひばりとアキを伴って、足早に教室を出ていった。
それを心配そうに見送る綾香だったが、すぐに表情を引き締めるとクリスに声をかけた。
「お〜いクリス!」
「うむん? あやっぺどしたん?」
「ワリィ、便所行ってきて良いか? 腹痛くなっちまってさ……」
オブラートに包むでもなく苦笑い気味に言う綾香に、女生徒の何人かが顔をしかめたが、クリスは軽く眉を跳ねさせてから、笑顔になった。
「仕方ないねい。“ゆっくり”いっといで」
「さんくす♪ いくぞ? “セレーナ”」
『おう! 任せろ綾香!』
クリスにウインクして答えた綾香は、相棒と共に駆け出した。




