第一五四話『第七試合、そして勝負の決着』
「……」
吹っ飛んだ綾香を見て、シモーヌは呆気にとられていた。そして周囲もシンと静まり返る。
そんな中、レオンハルトだけがディスプレイを素早く操作していた。
そして、ひとつうなずくと。
『勝者、二年七組シモーヌ・ブリギッタ! これにより、二年七組対二年八組のクラス対抗戦プレマッチは、四勝三敗で二年七組の勝利となりました! 七組のみなさん! おめでとうございます!』
会場にレオンハルトの声が響くと、それが引き金となり、大歓声が上がった。
実況席では、クリスがマイクを片手に立ち上がった。
『ついに決着だよ〜ん♪ 勝負を制したのしもっち〜♪ そして、七組と八組の戦いは、七組の勝利となったよん♪ おめでとう♪』
「どちらが勝ってもおかしくない勝負だったな。双方の健闘を讃えよう」
武瑠も小さくうなずきながら言う。
それを聞きながらも、シモーヌは未だに信じられないという面もちだった。
「……勝った? わたくしが? 夏目綾香に?」
つぶやく彼女の武装が解除されていく。ステージ上のデュエルモードが解除されたのだ。
「しーちゃん!」
呆然とたたずむシモーヌのそばへ、小柄で小太りした影が走り寄った。和也だ。嬉しそうな顔で、シモーヌを見上げてきた。
「しーちゃん! おめでとう♪ シーちゃんの勝ちだよ?」
「和也……」
幼なじみの少年の言葉に、ようやく実感がわいてきたシモーヌの顔が徐々に笑顔になっていった。
「勝った。勝ったのですわ。夏目綾香に。初めて!」
つぶやくような声は、最後には叫ぶような声になっていた。
そんなシモーヌに和也が大きくうなずいた。
「うん。初勝利だよ! おめでとう♪」
そうお祝いの言葉を掛けてくる和也に、シモーヌが優しく笑いかけた。
「和也のおかげですわ。あなたが一生懸命応援してくれたから勝てたのですわ」
その言葉に、和也は大きく首を振った。
「そ、そんなこと無いよ? シーちゃんの実力だよ」
「いいえ。その証拠に、最後の鍔迫り合いでは、あなたの言葉がなければ押し負けていたはずですわ」
そう言って、彼の言葉を反芻し、形の良い眉に嬉しさの弧を描かせた。
『しーちゃん! 負けるなぁっ!』
確かに聞こえた和也の声援。それを想うだけでシモーヌは胸がいっぱいになる気分だった。
そんな彼女の周りに、チームメイト達が集まってきた。
「おめでとうブリギッタさん。おかげで七組も勝てたよ」
「ま、やるじゃん。本戦もこんな風にいきたいね」
「興味深い戦いでした」
「まさに気迫の勝利だったな。おめでとうブリギッタ」
「……みなさんありがとうございます。みなさんの助勢あってこその勝利ですわ♪」
次々に掛けられる言葉に、シモーヌはついぞ見ないほどの笑顔でそう返した。
「これで、吉田君にお願いが出来るね?」
嬉しそうに和也が言うと、シモーヌは冷や水をかけられたようにハッとなった。
「……そ、そうですわね」
つぶやいて、シモーヌは複雑そうな顔になった。