第一三七話『満身創痍』
「……」
撃ち終わった武装をパージしながらもうもうと立ちこめる爆煙を凝視する秋人。その眼前で煙の固まりが吹き飛んだ。
次の瞬間、野太刀を上段に構えた狼面の黄金武者が飛び出し、秋人へ向かって突き進む!
「チェストォォォオオオッ!!」
裂帛の気合いに押されるように後退した秋人は、ウイングスラスターを噴かして上昇しようとした。
それを見て修平は右足を力強く踏み出した。それが大地を踏みしめた瞬間。具足が砕けてステージが割れた。そのまま跳躍した修平は、一瞬、秋人の上昇速度を越える。それを見て八組の面々が悲鳴のような声を上げた。
「なんだそりゃ!?」
「うそっ?!」
「あり得ないよ……」
「とんでもない脚力だぞ?!」
そして、自身に降り注ぐ影を見上げて秋人の顔がひきつった。
「……冗談だろ?」
「ぬぅうおおぉぉおおっっ!!」
雄叫びとともに振り降ろされる野太刀の前に、小型の盾が十枚重なって出現し、秋人の両手にメカニカルブレードが現れた。それん十字に交差するのと、野太刀が豆腐に刃をたてるがごとき様相で盾の群を両断したのは同時だった。重なった二つの刃に豪剣が叩きつけられ、刹那の時だけ押し留め、砕けた。
「!?」
驚愕の表情を張り付けたままの秋人の目の前を銀色の閃光が疾しった。一拍の間を置き、秋人の鎧が斬り裂かれ、地面に向けてたたき落とされた。
破裂するような音ともに秋人は地面に激突し、大きなクレーターを造りだした。
その脇へと修平が降り立ち、そのまま崩れるように片膝を着いた。
「……危ないところだった」
つぶやくように漏らし、荒く息を吐き出した。見ればマントはちぎれ飛び、その鎧は半分以上が砕けて失われていた。特徴的な狼面も、左半分が砕けて無くなっており、修平の憔悴した顔がのぞいている。
そしてライフバーは残り五割を切っていた。
「鎧が無ければ勝負は着いていたかもしれんな」
自嘲気味に笑って立ち上がる修平。そして、クレーター中央を見下ろした。するとそこには、フラツきながらも立ち上がる秋人の姿があった。
「……やはりか。手応えが無いとは思ったが」
「……あいにくと、反射神経だけは良くってな」
そう言って秋人は不敵に笑って応えた。とっさに身をひねって避けた秋人だったが、完全には避けられなかった。それでも盾とブレードで威力を減殺した分は大きかったらしく、ライフは四割弱ほど残っていた。
互いに満身創痍。されども闘志は鈍っていなかった。
と、修平が刀を降ろす。
「……随分と装備が豊富だな? もしかしてそれが君のアバターのタレントか?」
「……まあ、今更隠しても意味は無いか。そうだよ」
不意に訊ねられた秋人だったが、軽く肩をすくめてあっさり認めた。
そして、獰猛に笑う。
「……ついでに言うとだ」
「?」
その意味を計りかねて眉をひそめる修平だったが、すぐに顔色が変わった。秋人の右腕にガトリングガンが現れ左腕にオートキャノン、左足に先ほどより小振りのミサイルランチャーが現れ、ヘッドギアに飾り角のようなアンテナと小型で円形のレーダードームが姿を現した。
「まだ打ち止めじゃねーんだわ。これがな」
「……ッ!」
新たな武装を身にまとって笑う秋人を見て、修平は鋭く舌打ちした。




