第十話『そして現れるクラスメイト達!!』
「よぉ支倉。相変わらずのようだな」
「?」
綾香に抱えられるようにして席を探していたひばりは、不意に声をかけられた。
何かと思いそちらを見れば、全身をくまなく筋肉で覆われ、黒髪短髪に太い眉の実におっさん臭い顔の少年が笑みを浮かべていた。
「前田君?」
ひばりは首を傾げるようにしながら少年に応えた。
それを聞いて少年、前田 俊夫は、笑みを深くした。
「知り合い?」
「うん。同じ第三中学だったんだよ。久しぶり前田君♪ 掲示板に名前があったから居るのは知ってたけど、先に声を掛けられちゃったね? 後そろそろ降ろしてくれる? 綾香ちゃん」
不思議そうに訊ねる綾香に答えながら、俊夫に笑顔を向けるひばり。
ついでに綾香へと放してくれるように頼んだ。綾香は若干不満そうにはしながらもひばりを降ろして隣に立つ。
「あたしは夏目綾香だ。よろしくな♪」
「前田俊夫だ。よろしく頼む」
自己紹介をしながら手を差し出した綾香に、俊夫も自己紹介しつつその手を握った。
瞬間、綾香の目が細まり、俊夫の笑みが野生味を増した。
「へぇ……」
「ほぉ……」
探るような二人の目。一瞬の緊張が伝搬し、数人のクラスメイトがそちらへ視線を走らせた。
その中で、長い黒髪を黄色いリボンでまとめたポニーテールに、フレームレスの眼鏡を掛けたすっきりとしたボディラインの少女と、その横に立つバサバサの黒髪に眠そうな表情を張り付けたスラリとした細身の少年が、目つきを鋭くして二人を観察する。
「……祐介」
「ああ。ふたりとも使える人間だな。金髪の女の子もかなりできるが、男の方は桁が違う。術を駆使しなきゃ、俺でも勝てないかもな」
細身の少年、高遠 祐介がそう言うと眼鏡ポニテの少女、神薙 御鳥が目を丸くした。
「そんなに? けど、私としてはもう一人の小さい子が気になるんだけど……」
御鳥は眼鏡を外してひばりを注視した。
「……なにか視えるのか?」
「守護霊かな? 長い黒髪で、あの子に似てるかも……」
つぶやくような御鳥の声に、祐介は目を細めた。
「やれやれ。狩り士の二人は支倉さんに気づいたかな?」
背景にとけ込むように、気配を薄めた少年は誰に聞かせるでもなく漏らした。糸のように細い目以外に特徴らしい特徴の無い少年。加藤 武は困ったように息を吐いた。
そんな彼に気づく者はいない。
「ま、しばらくは様子見だね。美空との約束もあるし……」
つぶやくような声は、誰に届くでもなく、その場の空気に溶けて消えていった。
「朝から騒がしいことです」
『学生の集まりなんだ。自然なことだろ?』
「……たしかにそうですが、ゲームに集中できません」
携帯ゲーム機を操作しながら、長い黒髪の少女がため息を吐いた。
前髪を綺麗に切り揃えた美少女だが、眠そうな半眼の下にべったりとした隈を張り付けているあたりがマイナスポイントだろうか?
体も細いというより、折れてしまいそうなほど華奢で、とても健康的とは言えそうにはなかった。
「まあ、ゲームの邪魔にならなければ構いません」
『お前さんは、いつもそればっかりだねえ』
ゲームをしながら小声で話す少女の名は、来島 アキ。だがそれに応える声の主は姿が見えなかった。
「ふうん。あれが夏目さんかあ」
「気になるのか?」
赤みの強い茶髪をアップにした少女が楽しそうに言うと、長身で長い黒髪を首のあたりで縛った少女が面白くもなさそうに訊ねた。
「一年の頃から有名な子だしね。気にはなるよ」
「やれやれ」
赤茶髪アップの少女、狩羽 あかりの浮かべる笑顔に、黒髪長身の少女、黒崎 雪菜は痛痒をこらえるように眉間を押さえながら息を吐いた。
「また妙なちょっかいを出す気か? フォローしきれんぞ?」
「まあまあ、マックおごるからさ♪ それに夏目さんの彼氏も気になるんだよね♪」
雪菜がジト目で苦言を呈するとあかりは猫のようなツリ目を細めて笑いながら言う。
「……またかお前は。今年に入って何人目だ?」
「三人めかな? 金沢君は私には合わなくてさ♪」
「……そろそろ特定の相手を決めたらどうだ? 事情は承知しているが、友として忠告しておくぞあかり」
「……うん。考えとくよ」
雪菜の言葉にあかりはふにゃりと笑った。




