次なる生徒会メンバー
春ならではの暖かさについウトウトしている神無月です。
ウトウトして、ウダウダしている最中です。周囲からは流行りに乗り遅れ、ブームが過ぎつつあるものに今更のようにマンマとはまる。そんな季節です(?)。
もうすぐ私がなろうデビューして1年になります。いや、もう1年経ってるかな?曖昧な記憶では御座いますが。
1年経つのに成長ぶりはまったく見られませんが、宜しくお願いします。こんな回でいいのだろうか。
それでは。
新学期初日の、放課後の事だった。
今日やるべき事は、1時間目にまず教室の空のロッカーに荷物を入れ、整理をしておく。明日からは授業が基本の時間割と同じ様に行われるから、荷物は忘れず学校で保管しなければならない。
次に、冬休み中にあった出来事や旅行先での話などを、作文に書くという課題が2時間目に行われた。生徒たちは作文を書く授業が退屈で仕方なかったが、書くネタは山程あるので困る事もなかった。
作文を3枚書き終えたら、3時間目は提出物の確認、生徒会からのも含め配布物の確認。学校からのお便りや予定表、生徒会便りが配られた。
配られたプリントの中でも、特に生徒たちがざわついたのは“生徒会便り”だった。殆どはこのお知らせの手紙も、明莉が文章を書き涼太がパソコンで作るという流れで作成されている。今回のお便りもそうだった。ただ内容には“桜がコメントした枠”も含まれていた。
「見てこれ…生徒会長のコメント書いてあるよ?」
騒ぐのも無理はない。
桜がお便りの中に付け加えた自らのコメントは、1年生への文句をはっきりと言ってしまった文章だった。
「“1年生は上級生への尊敬がない。生活面においても過去十年で最も最悪な代だという事実がある。シャレンド学園生としての自覚をもち、誠実に勤勉に生きるという意識が足りていない。その意識をもって行動出来るという生徒のみ、立候補する権利があると現生徒会は認める。選挙でも、上級生が中等部の生徒会役員を決める事になったので、1年生の投票権は無しとする。”」
といった内容だった。
これを読んだ1年生たちは、突然の話に驚いた。投票権がないだけでなく、生活指導をされた上でも正せなかった自分たちは、生徒会立候補の枠を狭められたのである。衝撃的だった。
「…やっぱりね、酷かったもん桜の文章。敢えて内容直さなかったけどさあたしも。」
12月にイベントで使った大道具がまだ幾つか残っている、あまり綺麗といえない生徒会室にて、今日中等部生に配ったばかりのお便りを囲むように会議をしていた。
「1年生に言わなかったら、2年生になっても変わらないわよ。後輩がどんどんダメになっていったら、終わり。」
たった1日で1年生から生徒会へ、投票権の苦情が殺到した…正確には、桜の書いた衝撃的な一文に対して。
「そんなに投票したいの?1年って。」
涼太が首を傾げた。
「まあ、好きな子や友達が生徒会役員になるように仕組む、っていうグループがいるんだ。何度言ってもそれは直らない。そうすると今の1年生は良いメンバーが揃わなさすぎてしまう。」
「あたしたちも、ある意味仕組まれていたようなもんでしょ。ファンが多ければ投票してくれる。今思うと本心で選んでくれた子なんて居たか分からない。」
まるで自分たちの存在を否定するみたいだ、明莉は選挙権を無くす考えにやや反対の意志を見せた。
「みんなしてカタいコト言ってんじゃねえよ。俺はコイツに応援したい!と思える相手に一票入れりゃいいじゃん!」
と、横から隼人が気楽そうに言う。
桜も考えが揺らぐ。
「そうね。別に1年も投票OKにしたって、変わらないね。ただし責任は重いよ。」
「誰の責任が?」
「私たちの。」
桜は髪を掻いた。
「いいんじゃないの?…どうせすぐ新2年生に引き継がれるわ訳じゃ無い。あたしたちが後輩に役員の仕事を教えていきながら最終的には自立、そういう仕組みだったっけ?」
明莉は席に座って、4人にも椅子に座るよう言った。
「心配しすぎた結果だってこれ。甘やかした結果、態度も悪いし年上を敬わないし。校則に関しては論外だから、少しはほっとけ。」
「明莉の言う通りだね。考えすぎたよ、少しばかり。」
桜は頷くと、ペンやハサミ等で散らかった机の上に重ねられた紙の束を手にとった。
「それじゃ、全員居るね。これから生徒会会議を始めます。いい?受付に来た役員立候補の名前、見てねきちんと。」
桜が手に取った紙はすべて、役員の立候補者の名前を書いた用紙だった。桜はペラペラと紙を捲っていきながら、
「名前読み上げるよ。」
と、次々名前をあげていった。
その用紙は6,7枚ほどあった。そこそこ人数の応募者が居た事を表している。白い用紙に書いてあった名前は、全員合わせて7人だった。
「小嶋未希,松貝理恵留,寺川渚,相川美桜…女の子多いね。」
「マジで小嶋いんの?」
「書いてあるけど…。」
次期生徒会役員候補にまず名乗り出たのは、一番最初に用紙を提出したと思われるあの小嶋未希。用紙の束の一番下になっていた。
彼女といえば、
「KRASH嫌いな有望アーティストで有名になってしまった」
と誰もが知るアイドルだ。その通りKRASHの有名さに嫉妬している。
本人はメディアの前では否定しているがKRASHは忘れてはいない。KRASHに嫌がらせをした事実を。
次に受付に来たのは、恐らく未希の上に用紙が重なっていた人だ。
「名前は?」
「えっと、何て読むのかな。あ、松貝…理恵留?」
桜が難しそうに読み上げた。
有り難く、丸文字でふりがなも振ってあった。“まつがい りえる”と。珍しい名前なのだろうか。
隼人はん?と聞き返した。
「松貝?」
「ああ、あいつだ。明莉としょっちゅう喧嘩してる、図々しい奴だ。」
「へえー。初めて知った。」
桜が聞き覚えのあるような名前に驚くと、考輝がすっと出てきて言った。他の3人はうなずいた。
「有名なの?その話は?」
「有名もなにも、つらいんだよ。」
明莉はうんざりしたとため息をついた。
「1年生ライバルにしてんのか、大変だな。」
考輝は明莉と同じクラスで、人間観察力に優れているからと何でも知っていると言った。
理恵留と言えばと説明する明莉は、2年C組の天新美図を巡って明莉と対立する1年生、がもっとも適切な説明だと言う。
「美図が好き、なんだっけ?」
うるさい、と明到は頬を膨らませる。隼人はそれも無視して、
「明莉が美図を好きなの?その逆?」
「あたしが勝手に好きなだけですー。」
そして松貝理恵留もまた、美図が好きだった。既に追っかけ状態の図々しい女子…ここにいる5人のイメージは、明莉の話を聞く限りでは図々しいとしかない。
「美図の事好きだっていうのは知ってるぜ、その1年は知らねえけど。」
隼人はどうしても明莉をいじろうとした。
「それしかないっていうか、それが強烈な印象?図々しさが。」
「美図はあたしと同じクラスなんだから。負けないもんね!」
明莉はなぜか張り切りモードに変わって、エンジンがかかった。
「まあせいぜい頑張れ。」
「せいぜいって何!」
涼太がからかうように笑うのを、明莉は赤面で鋭く睨んだ。
生徒会としては、将来を考えてみれば寺川渚になっても困るという思いが強かった。
また自分たちの様にファンに追いかけられる様になるのを、渚は1人で受け止められるのか?という心配である。
ただKRASHとしては、事務所内でもそれはそれで伝説にはなるから反対はない。
だが渚以上に“あの2人”になってしまうともっと困る。事務所関係なく、ただ生理的に。
理恵留は明莉しか知らない人物だから、生徒会になるとどうなるかは不明。しかし未希が権力を握るとたまったもんじゃない。別の事に権利を使いそうな予感がした。
「困ったわけではないけど。正直、活動しにくいよ。誰の推薦で未希や理恵留が候補に挙がったのかなあ。」
桜は紙をくしゃくしゃに丸める勢いでそれを机の上に戻した。
イマイチ任せられそうにない候補者が出揃う中。
「ねえ桜、これは誰?」
5人は大体の生徒の名前を聞いているくらいはしていて、何となくなら知っている…だが相川という名字にはピンとこない。
「聞いたことないよ、本当に。“あいかわみお”って、知ってるとかある?」
「余程勉強好きで図書室とかにこもってる地味な女子だろ。」
よくわからないけど失礼じゃない!明莉は涼太にポコンとげんこつをいれた。
5人は相川美桜がどんな生徒なのか全く知らないでいた。
よくわからないけど失礼じゃない!明莉は涼太にポコンとげんこつをいれた。
5人は相川美桜がどんな生徒なのか全く知らなかった。でもわざわざ顔を見るために会うのも何だから、と選挙活動中の時に声をかけよう、とその程度でいた。
(聞いた事なくもないが誰だっけ?)
桜はそう、すっきりしない心の中だった。
「まあ、この人たちでまずは許可しましょう!今年は意欲的に生徒会立候補が居て良いじゃない!はい、今日の活動終わり!」
桜がそう締めくくって立ち上がると、4人も席を立って、会議終了の挨拶でペコリと礼をした。
「ありがとうございました。」
「聞いたよ~、生徒会立候補したんだって?」
「そうだよ。頑張る。絶対勝つから。」
「美桜に票を入れない人は居ないよ。大丈夫、心配ないよ。」
「絶対に勝ってやるから、応援してね。」
「わーかってるって。」




