クリスマスライブ! 1
作者は寒さの余りソファでずっと寝てたんでしょうね、神無月です。
お気楽な人ですみません、余裕がない癖に余裕でいる、一番最悪な怠け者のパターンはこの私ですから。
キッパリ言っている場合じゃないのですが、更新が遅くなってすみませんでした!
続きを書く作業を進めようとしたら脱線、その繰り返しをして何週間。本当に申し訳ないです。
まだ気分は2012年でお願い致します。
数時間して、いつの間にかというように無事到着し、5人は東京に降り立った。
数時間前に居たところよりかは、若干暖かい気がした。こっちは冬も晴れていたりするし、気温も向こうに比べたらまだ高い。
元々の5人の居場所でもあり、仕事をするうえではお世話になる場所でもある東京の駅に来ると、、それはもうはしゃぎ出す勢い。誰だ、新幹線から降りた途端に店まで走り出したのは。
「ま、マネージャーさんにも迷惑かけるって!」
荷物を持って最後に車内から出た桜の声も、リーダー隼人には届かなかった。
「そ、そうだよ隼人!勝手な行動しないの!!」
いつもいつも隼人の面倒をみる係になってしまう明莉も、ピンクのお仕事専用カバンを手に提げて追いかけた。
さすが都会の中の中心にあるだけあって、当然駅を歩く人も多くて賑やかだった。5人が人ごみに紛れて迷子になりそうなくらい、ぎゅうぎゅうに押し寄せる階段とか。こんな中をアイドルが歩くなんてどんな険しい道のりか。
「ふう~。東京はなめたら駄目ねえ。私たち、一般人に無事馴染んでるっぽい?」
「十分カメレオン化してるだろ。」
ここに住む人ならどんな人でもKRASHを知っている。そんな状況下でスタジオまでの道を生き抜く為の戦術、それが“カメレオン”なのである。
簡単に言うと、一般人の子供に紛れよう大作戦。とはいえアイドルらしい華のある中学生が素顔を隠すのは指南の技。
「隼人。そんな格好してたらファンが集るぜ。ほら。」
涼太は猛ダッシュしていく隼人を引き留めると、桜から預かっていたマスク(勿論、風邪ひいた時用の)を手渡しした。
「お、おう…。」
「カメレオンだよ、カメレオン。」
涼太はついでに、それ用の装備を何も持ってこなかった彼の為に自分のポンポン付きニット帽まで渡して、無理矢理隼人の頭にかぶせた。髪の毛の静電気がどうとか、本当に煩いから。
「これで、自由行動なんだな?」
「ただ自由なわけじゃないからね?」
桜は全員がそろって改札を抜けた事を確認すると、こう言った。
「この階のお店なら、どこでもいい。時間は30分。明莉、迷っちゃう~とか、今から言わないの。いいね。じゃ、行動開始!」
「おーっす!」
他の4人は元気よく、そして思わずにやりと返事をした。あの4人が大丈夫かどうかも心配になる桜は、時間を守るかどうかは諦めて、角の雑貨店に入った。
こんな日に限って、余計な心配ごとを抱えるのは身体に悪い、と感じたからである。
各々の思う「これだ!」というキメのクリスマスプレゼントの内容は、彼らだけの秘密だ。
桜が指定した予定通りの時間。
「買った?」
それぞれが買ってきたプレゼントは、大小様々な包み・箱に綺麗に入れられて、それぞれの腕に大事そうに抱きかかえられていた。
「うん!開始10分で買えちゃって。」
「やっぱり~。明莉って選んで買うまでの時間短いよね。」
桜はほっと一安心すると、その穏やかな目つきを鋭くして男子の方を向いた。
「…で?そっちは。」
「も、もちろん買えたけど何か?」
考輝があはは…と気力の無い笑いを。
「ヨケーな物買ってないわよね?」
「ま、まさか~。どこまで信用されないのオレら。」
涼太もなぜか考輝の真似をして笑ってみたりした。桜の目を直視できないまま。
…背中に隠した女子向けマンガ本は何としても守ろうとして。
「あんたの言葉を信じるわ。」
「そうしてくれ。」
とここで、もうスタジオへ向かう方向にしなくてはならない時間になった事に気づき、マネージャーの人が他の何人かの大人とこれからの話をしていた。
「あ、じゃあもうそろそろみたい?」
「らしいな。本番。」
考輝がこっくり頷く。
「よし、みんな。多分今は暇でもスタジオ行ったら暇なくなるから、仕事の後にプレゼント渡そう。」
「うん。」
ちょうど決められた予定に沿って進行し、この後KRASHはスタジオまで1、2時間ほどで何事もなくー‥特にファンに追いかけられるような事件もなく‥ー番組スタジオに到着、順調なスタンバイで本番にのぞんだ。
「あれっ、あの人だかりは今日スタジオに観に来たお客さんかな?」
KRASHが本番前で舞台裏…用があってちょうどそこを通り、多彩なセットが置かれている狭い通路を通り抜けると、脇にひっそりとスタッフと待機している人々がいた。
「そうだと思う。私たちが行くとまた騒がれちゃうから、行くよ。」
明莉はぼーっとその様子を眺めていたが、桜に腕を引っ張られ、そのままスタジオに入った。
「観客の人が来てくれてるのがちゃんと分かると、余計緊張するね。」
「だな。」
隼人はまるで「俺は平気だけど」とでも言うような感じで頷いた。
5人は“裏”に向かうと、本番まであと数分ということ気がついた。ギリギリに準備に来た方が何故か良いのだと、KRASHは思っているからである。
他にも何十という単位でアーティストのグループが集まり、スタンバイをしていた。
大人ばかりのその様子を見てか、
「本番近いよ~!」
なんて、5人のうち誰かがひそひそし始めたり。他のアーティストはそこまでの緊張もなくすんなり、番組が始まったと同時に広々としたスタジオに、すぐ見える観客席の前に並んでいく。
「うわわわ、もう始まるよ!」
その声はもう、番組司会の「KRASH!」とアーティスト名を呼ぶ声に消され、5人は舞台へと歩み始めていた。
「行くか!」




