カップルやり直しパーティー
大スターになる夢を見た神無月です。
正夢になったら大変なことですよ、という夢でした怖かったですある意味で。
今日は何の日か知っていますか?そうです、あのパソコン大好きなアイドルのお誕生日です。
みんなでお祝いしてあげましょう。私じゃとても表現不足でパーティーの様子をお伝え出来ないので。
では、クラッカー用意!!
とっさに思いついた計画。明莉が最初に閃いた計画だがそれは、先ほどまで明莉が涼太と言い争いになっていた内容を、解決する為にあるような計画だった。要は、涼太と渚というカップルの互いの気持ちを言える場所になり、再びカップルとして成功していけるようになる、というものだ。
明莉はそのパーティーが出来るのかどうかも考えずに、3人に提案した。
「~というわけだからさ!よくない?」
普通なら、多少無理があると分かれば、それに誕生日を祝う場だとも分かっていたら賛成しなかっただろう。だが、3人はこう返事をする。
「いいな!それ。遠慮がちな2人の仲も元に戻り、尚且つ誕生日も祝えるという…。」
どうやら、2つの出来事が同時に起こるというコンセプトに惹かれたらしく、今の暗い暗い涼太には元気づけになるだろうと考えたようだ。
「こんなに良いプレゼントはないでしょ。」
あの真面目な桜までもが計画をするにあたって許可を出しているのだから、これはもうやるしかないと、明荊は思った。
「出来るかなあ~?まあ、またココ借りる為にやまさんに相談してもいっか。」
こんなに適当な事はない。桜は内心そんな気分でいたが、計画自体の文句は何にも無いわけで、だからどうとも特に言わなかった。
「よーし、じゃあ実行しますか!」
「お前ら…BBB風になってきたな…。その企んでる感が。」
「いいでしょ。今回は特別にBBBっぽくなってみるよ。」
ふふっ、と女の子同士で目を見合わせて笑った。
「何、明日涼太の誕生日だったかい。」
暖房のよくきいた社長室にて今日もお仕事をしているyamako。案外暇そうに見えて暇じゃない社長は、明莉に部屋の事を尋ねられて驚いていた。
「すっかり…忘れてたわ。申し訳ないけどすっかり頭から消えてたわヨ。」
「ですよね~。で、貸して頂けますか?」
「あ、それならどうぞ。最近この事務所に他から移ってくる子がいたりして大変なんだけど…。あまり長時間でなければいいわヨ。」
「ありがとうごさいまーす!」
明莉は深々と何度もお辞儀をして、最後はバタン、と適当なドアの閉め方で部屋を出た。
「もう…私も年かしらねえ。誕生日も覚えられないのかしら。違う、忙しくなったのヨね。」
続いて、なぜか桜の命令によって動く隼人。
この人は何をやるかというと、何もやらないのではなく、パーティーの中での最重要人物に交渉をしているところだった。
「お願いなんで…やって頂けませんか?」
「わ、私がですか…?」
相手は、KRASHとは別にダンスのレッスンをしていた渚。今はNAGISAというアイドルとしての姿だが。
「さっきの休憩時間で決めたんだ。パーティーに来て頂こうと。どうにかパーティーに来てくんない?」
「私が、パーティーに?何か役に立てますか?」
「つか、お前いないと始まんねえくらいっつーと分かり易い?」
「わ、分かり易いです。とても。」
渚は隼人に言わされたかのように、こくんと頷いた。
「じゃ、明日ここな。時間の詳細はまた連絡すっから、メールで。」
(メ、メールアドレスなんて持ってたかなあ…。)
うまく渚を誘う事が隼人同様、桜の命令でミッションを遂行する考輝は、サプライズに重要な役割を果たしていた。さっきの計画の事があって、次の休憩時間になり人がいなくなったレッスンルームにて。
「あれ?みんなはー?」
そこまで気にせず、涼太が部屋に入ってきた。
レッスンルームにいるのは、休憩をとり休んでいる水無月先生と…何やら怪しげな笑みを浮かべて涼太を見ている考輝だけ。
「お前…何か知ってんだろ。」
「いやぁ、なんにも。」
「嘘つくなよ。お前嘘つくのバレバレなんだよ。」
「だけどよォ涼。俺たちがもし何か企んでるとしたら、いつも怪しい事してる俺だけここにいんの、変じゃねーか。」
涼の方こそ騙しやすいな、考輝はニヤリとして言った。
「それもそうかな。」
涼太の方も、すっかり信じこんだ様子。
「ま、俺も知らねえよ。どっか行くのなんかしょっちゅうじゃねえか。」
「それもそうかな。」
考輝に託された任務は、言うまでもないがサプライズが成り立つように計画そのものを隠し通すという事だった。
考輝にしてみれば、結構簡単だったと思うが。この余裕なニヤけ方は。
「部屋よーし!渚よーし!秘密よーし!」
「何してんスか桜。」
今日のレッスンが終わり、帰り際に桜がわけのわからない事を唱えるように繰り返す。
「あ?これ?“アレ”の最終チェックよ。明日はここで、渚も連れて来て、まだご本人にはバレてない。完璧に進んでるのは4人が連携している証拠よね。」
そんな風に、珍しく4人がBBBと化していた。どういう意味でのBBBか、別にニヤニヤしているからっていうわけじゃない。明日はいよいよ作戦実行の日。
「ねーねーねーみんな。」
「何かハッピーメールくらい頂戴。」
「今日って何の日か知ってる?まさか…知らないとかかかか?」
次の日。昨日4人で決めていた事で、わざと今日1日学校内では、涼太に「おめでとう」とは言わないようにしているらしい。そのせいか今日の校内の様子だけでいけば、まるでKRASHは…。朝から…。
「おはよー。」
「お、おはよ。」
男子寮でも、涼太がいつものように挨拶をしても、返すだけで避けるように部屋を出ていく考輝たち2人。
「…?」
更に、礼拝も終わり教室に来た時だってそうだった。
「あ、今日レッスン行くって予定入ったんだよね?」
パーティーのサプライズをするので、臨時にレッスンを入れて予定場所に来るように仕掛けた為、涼太が確認のためにメンバーのもとに聞きにきた時も。
「合ってんの?これ?こんな予定?」
「…うん。」
明莉の場合はただ頷いて忙しそうにしていただけ、桜に関しては「よくわかんない」、男子2人は「さあ?」と何とも冷たかった。
「…あれ?」
…何でオレこんな目にあってんの?
昨日の考輝といい、どこまでオレに隠し事すりゃあ気が済むんだよ。
怪しいくらい朝も冷たかったし。今だって…。絶対何か企んでんだろ。
それに、今日はあの偉大なオレの誕生日なんだぜ?ハッピーメールくらいくれるかなあ、学校終わったら。でもあの雰囲気的にそれはナイな。忘れてるぞあれは。
そんな事気にしても仕方ないと思いながら今日も校内をプラプラしてみる。結果として気にしているから、誰かおめでとうと言ってくれると思って廊下をうろつく。
しかも朝から。ただのかわいそうなやつじゃん。
何も考えずにいたその時、廊下の向こうから、それは随分と遠くに見える向こう側から、寺川が歩いてきたのが見えた…って、何を気にしてんだろ。
「あっなぎ…。」
自分であんな事言った癖に…。呼ぼうとして言いかけてはみたものの、あいつは気付かなかったのか目もくれずオレを通り過ぎていった。
…きっと4人のうち誰かがあいつに言ってしまったに違いない。あんな事言わなきゃよかった。だから傷つけてしまったんだろう。これだからオレはダメ人間なんだ。それ以上の人間にはなれないんだ。
みんなが冷たいのも分かってる。昨日電車の中であんなに喧嘩したから、それでみんな怒ったんだろう…。
もう、KRASHには居られないだろうな。決心がきちんとつけば、KRASHも離脱しよう。…思い出も全て捨てて。
あああああああああああああああ
涼太がそんな悲惨な目にあった事も4人は知っていた。というより、あう事も分かっていた。4人も渚も、学校内では関わらないというドッキリを仕掛けていたのだから。
けれど大分それで心も身体も傷ついた涼太には、まだドッキリがあった。
学校の授業が終わり、一応“放課後”と呼ばれる時間になった時。
いつもKRASHは5人そろって駅に行き、レッスンへ向かうのだが、この日だけは何かちがった。
「みんなー、もう時間だよー。」
いつも駅に行くまでの待ち合わせとして、寮の前辺りにいったん集合することになっているのだが、集まっているのは涼太1人だけ。心配になって学校に戻り各教室にも行こうとしたが、そんな時間すら無い。
「もう、行っちまお。」
今日は自分の中じゃ早く着いた方だったのにな、と思いながら涼太は1人で駅まで行った。
不思議に思いながら歩いていたその感覚だって不思議だったろうし、思い当たる何かもない。もしかしたら今日は予定が間違っていて、レッスンなど無いのかもしれない。メンバー誰も予定の有無を知らなさそうな返事だったし。あれこれ考えているうちに、気づくと駅にいる他の生徒たちに尋ねる自分がいた。
「誰か今日、KRASHがここから電車乗るの見た人いる?」
「…涼太くんだ!あのね、KRASHなら30分くらい前に乗ってったの見かけたよー。」
殆どマトモに話が出来たのは数名の女子生徒で、それ以外は話しかけられた事に興奮して聞いてもらえない。
(置いてかれたんだあ!!)
涼太は静かに急いで、ホームから電車に飛び乗った。置いてかれた事より、何をしているのかが気になって。
(あいつら本当に何してんだ?)
涼太はレッスンが有るのかどうかが分かった以外には何も知らされていない状態。不安を抱えて、みんなが何を企んでいるのかを知りたい…そう思い心臓がバクバク音を鳴らし、涼太は走ってレッスンルームに駆け込んだ。
「みんな、オレに何を隠してんだよ!!」
…パンッ!
何かが破裂したような音が近くで鳴った。
「…へ?」
涼太は一瞬、何が起きたのかが分からなくなった。レッスンルームのすぐ近くで、クラッカーが鳴っていたのだ。
「涼太、お誕生日おめでとうー!」
「…あっ、あっ…あ…うん…。」
わけもわからず、目の前に立っていた隼人の満面の笑みとメンバーの声に驚いて、涼太は声も出ない。そんな中腕を掴んで隼人が、
「さあ来い!リーダー様の命令だ!」
グイグイ広いルーム内に連れていく。
レッスンルームには自分を置いていったはずのKRASHメンバーが笑顔でスタンバイをして待ってくれていた。マイクも付けて、コンサート衣装の代わりに制服を着たままで、そこにいたのである。
「まずはそこに座れ。恋人が来るから。」
「恋…人?」
涼太が不思議に思って聞き返そうとした時にはもう曲の前奏が流れ出していた。
♪
うかない顔してどうしたの?
キラキラスマイルどこいった?
たまに素直じゃない君の心
奥底暗色一色かい?
恋心フワフワ浮いている
手を上げても届かない夢
瞳のその奥曇り空
ぼくらに出来ることあるのなら
心の奥底打ち明けて
きっと大切なものはすぐそにあるはずさ
フラワースマイル!
君への思い心底から満タン
こんなに心配するのは
君が一生一回目
永遠にもないはず友へのこの心
♪
「続いて!来ていいよーNAGISA!」
曲が終わると隼人が、渚の名前を呼んだ。すると、部屋の外からずっと待っていたのか渚が本当に入ってきた。控えめな様子で。
「っ…何で呼んでたの!?」
一番驚いたのはもちろん涼太。考輝がむちゃくちゃニヤニヤしはじめたから、涼太も何かを察した。
「あの…今日は…。」
「自分たちの口から、きちんと言えよ?」
「あんたは黙ってなさい。」
隼人がやたら騒ぐので、桜が口を塞いだ。
「今ここで、2人に気持ちを伝えてほしいの。お互いに。」
明莉が2人を、用意した向かい合わせの椅子に座らせ、4人はすこし遠くから見守る事になった。
とはいえ2人とも緊張して喋りにくそうな感じ。渚は落ち着いて座ると何かを言い出そうとして、明莉に相談した事、自分の気持ちを全て言った。
「…先輩に相談したんです…。涼太さんが、オタクだって事で、自分が必要とされてないんじゃないか…。」
「…。」
何も返ってこない。
「でも、私は涼太さんが好きです。だって、優しいですから。ただ、オタクでもいいので…その…。」
渚は少し言いにくそうにして、下を向いていたが、涼太はそこまで言われた時点で、何が言いたかったのかすぐにわかった。
「…わかってるよ。勿論。自分の趣味ばっかでごめん。オレ相変わらず変な奴だし、バカだしさあ。」
「いえ、涼太さんは良い人です。…の事を忘れていなくて良かった。明莉先輩からも聞いたんですよ。だけど涼太さんは良い人です。だから…これからも…。」
「よろしく、だろ。」
涼太は既に顔が真っ赤に染まって、周りがたいそうニヤニヤしているのに気付かずにそう言った。渚も同じ、言いづらい事も伝わって、ほっとしていた。
「イエーイ!」
たちまち、考輝の声があがる。
「成功だぜ!」
「え!?」
戸惑う涼太に、彼以外の5人がとんではねて喜んだ。
「実はこれもパーティーの中の1つで、お互いの気持ちを知らないでいる2人の為にやったんだ。」
隼人がVサインをして得意げに言った。横から明莉が
「あら、計画したのはあたしだからね!」
と突っ込んだ。
「あは、あはははは…」
笑いがこみ上げる。笑うしかない。笑っていずにはいられない。短時間でこんなことをしてくれちゃったKRASHに。
「はは…あはは…ありがと。」
「これからも、2人はお幸せに、よ!」
桜はうん、と1組のカップルが笑っているのをきちんと喜んだ。
パーティーは成功した。このカップルのための、また「好きだ」という気持ちを強く思う瞬間と、彼自身が14歳になるという瞬間。
「ほんっとに…どんなサプライズしてくれちゃって。」
「いつもエンターテイナーなお前を、こっちがサプライズするって大変だからな。」
男子2人、まだ腹を抱えてゲラゲラ笑っているその途中。それでもお祝いをしてくれたのだから、とても良かったに違いない。
「頑張れよ!2人!」
「ありがとう…!本当にありがとう!」
たちまち、14歳になった涙が流れた。…あのオタク少年の目から。
「なんか今日のみんなBBBみたいだった。ニヤニヤしてワルい事企んでそうで。」
「分かる?やっぱりー?」
■作中に使った歌詞↓
「フラワースマイル」
本来はHAYATO,AKARIの曲です。
AKARI作詞の設定です。本当にこれを作ったのは、“もうひとりの作者”緑川さんです。素敵な歌詞をお借りいたしました♪
それでは!!
<涼太くん
ゴメンネ!今日は大忙しでパーティーにも行けなかったワ!全くもう…誕生日くらいお祝いさせてヨ!
でもまあ過ぎたことはしょうがない。潔く諦めることにします。お祝い一緒に出来ませんでしたが、今度好きなマンガ1冊買ってあげるくらいでいいかしら…?ああ、フィギュアの方が良かったかしらねえ!?もう分からないわアナタの欲しい物は。プレゼントの事は、決まったら言ってネ、んじゃ!
by yamako




