俺は悪くない
早く映画館に行きたい神無月です。
とにかく映画館。あの暗さとあの画面の大きさと雰囲気がたまらなく好きです。
ラストが感動に・・・なりませんでした。いやいや、したかったんですよ。
桜さんのココロが揺らいだのがわからない、です。
ではどうぞ~。
生徒会として、あるまじき姿を1年生に晒すような事は、あってはならない。
決して。
「今朝やったやつがそんなに悪いっていうなら、もっと凄いのやってやろうぜ。」
「どうしてそんな考え方に至るんだ!?」
教室まで戻る廊下の途中、BBBの3人はそんな事を考えながら歩いていた。さっき生徒会長である最高の権利を持つ桜に叱られた少年たちは、何を思うのか。
何も思わない。
「さっき素直に謝っとけばよかったのに。」
「他人事のように…。」
隼人は未だに暴れたことを認めていなくて、プンプンすねている。
要するに今朝何があったのかといえば、1年生への生活指導なのに3人が見事な暴走ぶりを見せ、隼人は暴走し叫び過ぎてパタリと倒れてしまった。そして戻ってくると、桜が3人の騒ぎを聞きつけておつむが噴火したと、そういう話の流れだった。叫び声が桜の耳にも十分入っていた。
「ともかくこれ以上暴れようたって無理。さっきのお説教聞いただろ?」
涼太は桜会長の説教に脅されたのか、もう大分反省して二度としないとまで言うが、隼人にそんな様子は無い。それどころか、一番叫んだ癖に覚えていないというから腹が立つ。
「聞いてねえや。」
おいおい。他の2人は手に負えないと思ってそこにはつっこまなかった。誰なら手に負えるかというと杏野桜ただ1人。
「別によくね?」
もうそれしか言い訳しなくなった隼人は、イライラしていた気持ちを抑えながら、こうぼそぼそ言った。
「…反省した方がいいの?」
「まあそうでしょうねえ…。」
心配なんてしない、涼太はそう言った。
本当は隼人自身、自分があんなに暴れていたという事の記憶がないのでは・・・。そうも思っていた。
さらに歩き続けながら隼人は言った。
「反省ってどうやるんだ?」
「反省する気もないだろ!!」
のんきなのは生まれつきなのか、ただ強がっているだけなのか。そんな事を言って隼人は余裕さを見せた。
「桜に謝って、これからはもっとちゃんと教えに行く、これが最善だろ。」
一番まともな考えを示して、考輝はバカなフリをする隼人に言った。それが聞こえていたかは別として。
隼人は答えた。
「わかった。俺1人でいってくる。」
そのとき、朝の時間が終わるチャイムが鳴った。
「ねえ、桜ちゃん。ちょっと言いすぎじゃない?」
「そうは言っても・・・もう選挙もあるのよ?生徒会が楽なものだと1年生が生半可な気持ちで来たらどうするのよ。」
休み時間になり、明莉は男子3人の騒ぎに気づいてから、それを叱っていた桜のもとへ来た。怒鳴り声が聞こえていたのだろう、明莉は桜の厳しすぎさに驚いてしまったのである。
「そうはいっても、まだ誰も受付に来てないんでしょう?」
「そう・・・だけど。」
桜は座ったままうつむいた。
「じゃあ。」
急に自身をなくした桜の肩に、明莉はポンと手をおいた。
「アピールが足りないんだよ。生徒会が厳格すぎて。」
「え?」と顔を上げる桜。
「だってぇ。今の生徒会、前よりも規律規律、校則、上品、誠実。ここのどこに明るいものが入ってるのよ。」
明莉が聞いても、返事は返って来なかった。
「ここは音楽学校。明るくて当然。まだあたしたち、シャレンド学園に入って2年よ。怖い先輩だらけだと、反抗したくなるんだよ。その気持ち、1歳年上のあたし達ならわかるでしょ?」
「・・・そっか。」
「そ。だから・・・確かに校則とか、きまりも大事だけど。男子3人のやってたこと、いいんじゃないの。」
あはは、と笑顔で明莉が言うと、桜は無言で頷いた。
「それにね、3人が来たっていうクラスの子に聞いたらね。あの先輩ふざけすぎてて面白いってさ。言ってたの。」
「そうなの!?」
桜は目を丸くすると、明莉はウインクした。
「だから、案外好評だったみたい。あたしも不思議だった。」
「そうね、3人には、マジメなんて、出来ないわね!」
チャイムがなる2分前になってから、明莉はその事を話終えて急いで教室に戻った。
考輝、涼太、そして隼人のハチャメチャ指導が好評だった話を聞いて、桜自身は何かが自分の中で変わったような気がした。
「ごめん、あんたたち。」
「謝りに行けたのか?」
「ああ、うん。それが、行ったら桜に“次のクラスにも劇見せてあげてね”って・・・。」
「劇?あれは俺らの自然体なのに。」
「ま、そう見えなくもないな。次は、抑えめな。“B”を。」




