お楽しみを知った社長
良い結果を残したというのに、周囲からその成績を批判されるというのはなんなんだ。神無月です。
この間そんな事があって腹立ちましたから…。それを今でも引きずっています。
では、またやまさんのお話。途中彼女目線になっています。どうぞ。
「あたし、もうやまさんへやりたい事決まってるから。」
明莉が言ったのは、言い換えれば「もうちゃんとアイデアがあるよ」という意味にもなり、それは聞き捨てならなかった。
「えぇっ?」
「うん。やまさんには、やっぱり歌って…。」
明莉はその計画の内容を、明莉の手持ちのノートに書き込んだ。カリカリとペンが書き進むのを、みんなは覗くように見ていた。
私yamakoが、祝われる側の立場の私が聞いてしまったのは、この後の事だ。
彼ら5人はは確かに計画をしていたみたいではあるけれど、それがどうやら問題だった。
私は同じ頃、当然仕事中だった。そりゃあ、ふらふらしているワケないんだから。レコーディングスタジオには、用があってそこのスタッフに呼ばれて行っただけで、KRASHが居た事は全然知らない、偶然だった。
「yamakoさーん、ちょっといいですか?明日の午後にスタジオに来るグループの事なんですが…。」
「あ、は~い。」
最近はいつもそうだ。
私はあのアイドル事務所“雪音”の社長で、兼作詞作曲をしているわけであり、勿論他の人も手掛けてはいるけれど殆どの担当は全部私。だから社長としてではない時に呼ばれる事もしばしば。他に作詞している人に協力を依頼して、何とか忙しさも軽減できるようにはしているけれど…。
KRASHがどんどん売れて行き、益々人気は急上昇していくのは私も嬉しい。でも、それと共に周りも本人たちもリスクを伴い、大変になる。こればかりは覚悟をしていなければ出来ない事だ。仕事が増え大変になった事が、嫌になったなんて日は1日だって無い。寧ろこれからも色んなグループが人気になって欲しいと、そう思うから、疲れない。
「や、やまさ~ん!」
自分の背中の方から誰かが呼ぶ。
「はーい。」
「あのっ…これ…!」
振り向くと、後ろにいたのはNAGISAー‥ソロ活動をしている13歳のアイドル、寺川渚だった。
「お、お、お誕生日おめでとう御座います!これ、宜しければ…!」
相変わらず自信なさげに言い出した言葉は、私を祝う言葉だった。そして、渚は隠し持っていたのか、こそっと手より大きい包みを取り出して、私に渡してくれたのだ。
「あら~!!今日だっていう事、覚えていてくれたのね?いやぁ~うちの事務所の子はみんな、優しいのね…!ありがとう。受け取るわ。」
優しさに驚いたのは、別に突然だったわけじゃない。去年もその前も、私の誕生日にプレゼントをくれる子がいる。私はあげた事もなかったのに。
そう思いながら、私はスタジオの外の廊下を歩きながら、渚からのプレゼントに付いていた手紙を読んでいた。内容はー‥きっと渚、怒ると思うから秘密ヨ。
(へえ…こんなに書いてくれたんだ…。涙が出そうヨ…。)
そう感じながら廊下を歩いていると、「ギャハハ!」「ドンドン!」という笑い声が耳に入った。
と、いうより自分の目と鼻の先にあるとある部屋の中からした。
「ギャハハッギャハハッ!!」
「静かにしなさい!」これが私がやるべき行為なのだが、KRASHの控えているこのお部屋では、今yamakoという人物が入ってはいけない気がする。
なぜなら。
私は部屋のドアに耳を近付けた(彼らの声が大きいのか、ドアが薄いんだか、とにかく丸聞こえだ)。
ドアの向こうでは、こんな会話がなされていた。
「今日レコーディング終わったら、あとは仕事無いっけ?」
「無いんじゃなかった?」
「ならおっけー。あたしがやりたいのはー、事務所の子、まあ今居る子で集まってお祝いする事!」
「いいねー!で、どこ集まんの?」
「ここ貸して貰う?ここって不思議な事にさあ、大きい多目的室があるんだって。」
「本当に不思議だなあ、そりゃ。」
何々、部屋を取るのは私のやる事なんだけど?
「そう…。どうしようか、そこ貸して貰って、確か今日渚も未希も居る筈だから集めてきて、やまさんを呼ぶ!ね?」
「ね?って…。いい考えね!私は明莉の意見に賛成するわ。みんなは?」
「んー。」
「俺賛成。」
「オレも。」
「じゃ、決ーまりっ。これでいこう。」
それで会話はその“催し”の準備についての話に変わっていった。
(マズい事、聞いちやったかな…?)
マズい。やまさんを呼びにくる人が現れたら、もしそうなったら。ドアを開けたらやまさんがそこにいたら盗み聞きしたとバレてしまう!
ここは、近い場所に逃げているしかなない。自分からKRASHに近づくと、怪しいから。
マズい、聞かなきゃ良かったかもしれない、いや、かもしれないじゃなくて聞いたら駄目だった。
NAGISA&MIKI久々の登場なるか!?をやりたくて。では!ありがとうございました。




