コンサートに向けて
シャレンド学園も遂に夏休みに入り(それが珍しいというわけではないが)、生徒達は夏を存分に楽しもうとワクワクしていた。
この学校、宿題をあまり出さずに予習復習を自主的にやるという感じであり、夏休みだからと言って山程の課題は出されない。
それは生徒達も、素直に予習と復習をやっていくのだとか。
ただこの学校、1つ半端ない部分があって、校内の会話がこんな風になる。
「夏は旅行でクルーズに行くんだ~。」
「海外へ行って別荘に泊まる予定。」
「ハワイでのんびりするわ!」
と、何ともお金持ちの生徒達である。普通の生活をする生徒に紛れて、海外へ行く生徒も少なくはないのだ。
この間も、2年C組のザ•シャレンドボーイ(?)の美図が、
「僕はね。いやまあ自慢じゃないけどね?もら、毎年家族で旅行行ってるんだよ。今年はフランスでね…。」
とクラスメートに自慢をしていた。
さて、そんな中KRASHはというと。
「~♪~♪~♪」
「ええっと、ここで私が動いて、ここで2人で?」
「違うよ、あたしがここだよ。」
「え?オレじゃねえの?」
「「やまさあああああああああん!!」」
と、こんな調子で、コンサート用5人の台本を読んでいるところである。教科書より分厚いのは、細かく書いてくれなきゃ分からないと言ったKRASHに対するyamakoの優しさ。
だが、それがかえってダメだったようだ。
要するに、夏は5人とも忙しくて夏休みなんて無い。宿題も幸い出されていないし(芸能活動している生徒のみ)、遊びにも行けそうにない。
「移動がよくわかんねえけど…」
「あら~私の台本で何かお困りですか?」
頭を抱えていたところへ、やまさん自らやってくる。それがあの社長。
「ま、まさかホントに来ると思ってなかった…。」
「で?何をそんなに困ってるの?」
「この、次移動、のあとのですけど…[適当に]って何ですか?」
桜が指差したところをyamakoが覗きこんだ。
「そりゃ、そのまんまの意味ヨ適当に動きなさい状況に応じて。」
「わっつ!?」
「え?ダメ?」
ダメにきまってますから!!心の中で叫んだ5人。
「ま、じゃ頑張って動けばいいんですね。」
「そうヨ。」
yamakoは本当に何を考えているのか、それとも何も考えてなんかいないのか、全く読めない人だ。ただ一つ言えるとしたら、それはかなり面倒くさがりなのだろうと。
「あれ、ここの部分誰司会ですか?」
「適当に。」
「「ええええええええええ!!!??」」
こりゃまずいよ…KRASHは危機を感じた。なんといっても知っているのはyamakoだけ。あとの人はコンサートの裏なんてそう知らない。コンサート構成は別の人の担当でも、結果としてyamakoのチェックが入るなら意味がない。
「じゃここの、風船もって移動も適当ですか。」
「それは持つ風船の色と、人と場所決めたの。」
適当でもこだわりあるのー!?益々KRASHは驚きを隠せなかった。じゃあ全てアドリブでいいじゃないか!
「もう覚えられないぜ…。」
「あら、明日から泊まり込みでアリーナ行くのヨ?」
「エエエエエエエエ!?」
無理…あまりに無理過ぎてるぞ…まだ台本覚えきってなくて段取り悪いのに!!心の中でそう思いながら、明日に備えるのだった。




