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KRASH!  作者: 神無月楓
はじけろ!サマースプラッシュ
46/88

思いをこめた歌を

いつになったら祝ってくれるんですか神無月です。

話が微妙な進み具合ですので、もうすぐ本文へ行ってしまって下さい。

どれだけ誕生日の回を書きたがるんだろう、作者さん。作者聞いてるか!?


その日もレッスンへ行き、たっぷりと踊り疲れた後、4人はこっそり許可を得て社長の部屋へ向かった。偶々今日は、yamakoがレッスンの場に居なかったからだ。(許可をとりに行ったのも桜だった。)

「どこ行くのー?」

ギクッ、明莉は4人揃って他の階へ行こうとしている背中に問う。

「え、いや、あのちょっとね。ダンスの出来の悪さで呼び出されちゃって。」

「明莉は上手いから言われねえけどな。」

桜が慌ててわけを勝手に作って話すと、状況理解をして考輝も乗って付け加えた。それをまとめて涼太が

「だから、今日先帰ってて。ごめん。」

「あ、そうなんだ。分かった。じゃ!」

明莉はすぐにそれを信じ、サッと消えて本当に帰った。いなくなるのも、帰るのも一瞬だった。

「ふう。それじゃ、行きましょか。」

桜は危なかったとばかりに、先へ急いだ。

「おいおい、こんなんでいいのか?あいつ本気で帰ったけど。」

「なんとかなるわ。…多分ね。その保証は無いけど。」

偶然桜がyamakoの居る部屋を知っていたので、ちゃんとドアにも書いてあるやまさんの部屋に難なく着いた。

「失礼しまーす。」

コンコンと優しくノックをすると、ドアを半開きにして顔を覗かせた。

「どうぞー。」

相変わらず裏は忙しそうだ、yamakoはデスクに向かってひたすらパソコンと向き合って仕事中。けれど桜の顔が覗いているのを見ると、すぐ顔を上げて

「あ!KRASHじゃない。どうしたのヨ?」

「いえ、今はKRSHです。(特に読みはない)」

桜が首を横に振って、ドアをそっと開けて最後に自分が入った。

「今日はもうすぐ明莉の誕生日なので…でも何をあげればいいのかわからなくて。」

「ああなるほど、それの相談に来たわけね。わかったわ。」

yamakoはこの間の事件の処理等の作業をしながら耳で聞いていた。

「何がいいのかなっていう事なんですけど…。」

「今まで何をあげてたっけ?それ去年も聞いた相談だったのヨ。」

ふふっと困った顔した桜に笑いかけるyamako。

「そ、そうでしたっけ?ええっと去年は確か、パジャマあげました!」

「今年もパジャマあげたいと思う?」

yamakoの問いに、4人は無意識にうつむいた。

「…いいえ。」

「そうよね?今年は、去年とは違う物がいいわヨ。それには“物”でない方がいいんだけれど…。」

4人には一瞬、それの意味がわからなかった。物でないもの、の意味が。

「それって何ですか?物ではないものって…?」

驚かれながら尋ねられ、yamakoはそれにも、分かり易く説明を加える。

「例えば、踊りをプレゼントするとか。形がないものというか。でも、ダンスは今すぐは無理だから…。」

「じゃあ、歌スか。歌で勝負、という事スか。」

考輝がyamakoの考えを読んで、歌というものを挙げた。yamakoは、うんうん、と頷いた。

「そう、つまり私としては歌をあげればいいのかな、と。」

「ナルホド!いいや、でもやまさん。何の歌を?」

桜はそんなやまさんのご意見に大賛成して、さっきとは全然違う満面の笑み。同時にこれでやっと、という安心感もあった。

「何の歌、かあ。」

桜の質問は極めて重要なのだが、yamakoは流石にそこまでは考えていなかったし、かつこの思いつきも採用されるとは思ってもいなかった。yamakoほどのプロになれば、子供の行事までは手出ししちゃならない、なんて常識くらいは分かる。けれど明莉になら…yamakoも本気で考えなければ、と頭を抱える。

「歌まで私決めるの~?えぇ~?」

どうにもならない時の社長のやり方として、困った時は子供っぽい口調になって、相手に物事を任せる。殆どの人に通用する…ではなく、yamakoは「くふふ」と口を手で覆って小さく笑った。

「まあ、かといって何か曲が決まらないのなら、私が手伝うわヨ。」

「ほんとですか!?」

「ええ、言ったからには。ただ、たった3日しかないという事は忘れないようにね。」

桜達が希望を見つけ、キラキラ目を輝かせ、yamakoはすっかり頼られてしまった。

yamakoは完全に後戻り出来ない状態になり、どうやら助けが必要なのだ、と4人の肩をポンポン、と叩いた。

「まったく、あなた達は…。」


「じゃあ、曲を決めていきましょうか。」

今日はまだ時間が少しあったため、特別にyamakoが普段使っている会議室を使わせてもらえるという事で、4人はワクワクしながら部屋へ同行した。

「言っておくけど、特別なのヨ?めったに入れないのは分かっていてね?」

「わかってますって!もちろん…。」

絶対分かってないのが男子3人。ニヤニヤしながらyamakoの後をついて行って、yamakoよりも先に席に着く。これは社長以外にはやらない1つの礼儀のようなものだ。

「あなた達としては、曲は何がいいのかししら?」

真っ先に手が挙がったのは、こ話に最も真剣な桜だった。

「“自分”でいいと思いまーす。」

「いやいや俺的には“クレイジーボーイ”でもよかったけど?」

「それは、あんたらの曲でしょ。BBBの。」

桜は自分意見を話しているのに、割り込みをされた事につっこんだ。

「すみませんね。じゃあ、ならやはりここは“風を感じろ”で!」

涼太の仕切り直し方もものすごく雑だった。桜のおつむが噴火するのを察知するのは上手いのだが。

「うーん、5人の誕生日の歌を4人で歌うとなんか変になるのよね。」

真剣に考えすぎて嫌になっちゃう、桜はまた黙り込んでひたすらに悩んだ。

「思いつかない時って、どうすればいいの?」

すると、yamakoはそんな桜に答えるようにこんな事を伝えた。

「実はねえ…これから出そうとしていた曲が出来上がっているんだけど…。まあ、あまりお祝い用の感じではないし、後々5人で歌う曲にななるんだけどね。」

yamakoが自信なさげにコソコソと、バッグからファイルを出そうとしたが、

「あ、それ知ってます!」

桜が指を差したものだから尚更出しにくくなってしまった。ファイルに束になって入ったプリントは、全て彼女が作詞した音の無い曲達の数々。

「な、なんで知っているの!?」

たちまちyamakoに鳥肌が立つ。

「すみません…。事務所の方達が噂してまして。」

「おおー!さすが姉貴!」

考輝達がヒューヒュー煩く騒ぐ。

「あらあら…じゃあ楽しみが半減してまったわね。そうヨ、この曲は。ここに今大切に保管してあるわ。どこから漏れた情報かしら…?まあいいわヨ。疑ってもキリがないから。ただ。歌えるようにするのに3日しか無い事。」

「大丈夫です、それも…歌詞は覚えています。…水無月先生にプリント貰ったので。」

4人は揃って水無月陽花の名前を出す。

「何それ~!陽花ちゃんめ!!」

yamakoはキーっと先生に呆れた。

「ま、それなら早いわね。振り付けは決めてないから、歌だけ覚えてくれれば。」

あの冷静な桜がせっかくハイテンションになっているのに、ハイテンションな3人が逆に低くなってしまった。

「俺達、頭の使い過ぎでパンクしそうなんだわ。」

という男子3人の気持ち、今新曲を貰って嬉しくて仕方ない桜の耳には届いていない。そんな傾向にある桜には、今は何も言いようがない。

「だからね、楽しみじゃないなんて変よ。」

「まあいいじゃないの桜。それでは配るよ。CDも渡しておくから、こっそり練習しておいてね。」

yamakoが今度こそとバッグからCDも1枚取り出した。まだ表紙も何も決まっていない状態。何だかんだ4人は、新曲がもらえた事がとても嬉しく感じた。まるで、自分達の誕生日かのように。

「有難う御座いました、やまさん!失礼しました!」

桜たち4人は、元気よく挨拶をして、会議室をあとにした。時計はもう既に夜の9時頃を差している。たちまち彼らに眠気が襲ってきた。

「明日から、東音楽室集合ね。」

桜がきっぱりそう言ったものの、やはり片目の瞼が重そうに落ちてくる。

「ふぁ~。」

この日緊急会議が終わってから、結局寮に着いた時刻が10時頃だった。

瞼が重かったのに耐え凌ぎ、就寝ギリギリの時間になってしまったという事だ。


それからKRSHは(Aがいない表記は桜曰わくこれだという事なので)休み時間になると明莉にはバレないように東音楽室へ急ぐ。

そして隼人がメインに歌い出し、とても小さな音量の曲を聴き取りながら一生懸命に音程を合わせた。

椅子に座って向き合って歌った時もあれば、2日目以降は立って歌詞が書いてある紙を見ないで歌っていたた人もいた。

とても小さい音なので、バカでかい考輝と涼太の声に書き消されてしまう。

「ウルサいー!」

「仕方ねえじゃん。」

「そんなに大きい声出したらバレるでしょう!?」

とはいえ防音対策バッチリな音楽学校の音楽室なだけあり、外はすぐ3年と2年の教室とかだったりするのに音が一切漏れていない。アイドルだろうと4人の声だけでは10人程の合唱と同じくらいなので、心配するような程でもない。


3日目。最後の練習日。

本当に実力がある彼らは、本当に全てを覚えてしまった。歌詞も、振りだって。

「最後よ最後!頑張るわよ!」

「覚えているのが奇跡だと思う。」

涼太は自信なさげだったのだが、なんだかんだ涼太も記憶力がある。結局すべて1日で暗記してしまったその能力は大人と並ぶ。

「ここ、いつでも借りられるらしいから、またここを借りてここで歌いましょ。」

「そうだな。ここが一番適した場所だな。」

こうして、難なくKRSHは歌詞を丸暗記してしまったのだ。音程だってほぼぴったり合っていたし、ソロもきちんと歌えるようになった。

「明日、ここに明莉を呼んできてね。男子の方が絶対いいから!」

「何だよ、ソレ。」

男子…特に考輝の方に桜の目線がいく。彼自身はその目を逸らして、

「…ゎかったよ。」

と呟いた。桜は「よろしく!」とニッコリした笑顔をつくった。

「たっく…。」

わざと俺にやらせなくたっていいのに、考輝はそう思いつつ、先にこの場を去った。桜に抵抗がないのも、考輝自身明莉をここへ連れて来たい思いがあったからなのだ…。

「って、別にそういう訳じゃ…!」


順調に秘密を隠し通してやっと待ちに待った次の日。


明莉と同じC組の副委員長だったから、考輝は誘うのも楽だった。本人としてはサプライズ大好きなので、早く音楽室に呼びたいくらい。

それに明莉の様子だって、今日はいつも以上に何だか緊張しているというか、自然じゃない。寮に居る時も、

「あ、えぇっと今日何日だっけ…」

と言ってみたりなど、大好きだってある誕生日アピールをしてみたりする、そんな様子を普通だと言えるわけがない。

それを聞いていたC組の生徒達は、口々に

「お誕生日おめでとう~!!」

「よ、よければこれ、お前にやるよ。」

「ごめん!明日渡すね!」

先生に見つからないように、こっそり制服に隠して持ってきたプレゼントを明莉に渡す。人によっては文具や作ったマスコットだったり様々だったが、中には似顔絵をあげる子も居た。

「あ、ありがとう!!皆!!あたし朝から泣きたくないよ~!」

プレゼントを溢れる程両腕に抱えている明莉は涙ぐんみながらペコペコお辞儀していた。(朝から)こんな様子も、考輝はきちんと見ていた。正確には「見かけた」のかもしれないが、それ程遠くからわざと見ていた。

美図はペコペコ礼をしている彼女に歩み寄り、堂々と目の前に立った。

「誕生日だったそうじゃないか。僕からも特別に。」

「特別って何よ~!」明莉は彼にもらつた赤い包に包まれたプレゼントを開けずにバッグの中にしまった。(何を美図はあげたのだろうか…)明莉はプイッとそっぽを向いてバッと自席に着いた。まる1年待ってようやくおとずれた誕生日。なのに…明莉の目線が考輝に向けられた。席で本を読みながらも気にしていた。目を向けられた考輝は、そんな風に悲しそうに見ている明莉の席に来て、

「今日、放課後KRASHについての話があるから。」

とそれだけ伝え、あとは忘れかけていたフリをした。

(もしかしたら、考輝だけじゃなく、みんな忘れてるかも…。)

明莉は時間が経っても彼らが話しかけてくれなくなったのを、少しずつ不安になりながら過ごした。


「もうすぐだぜ!おい考輝、明莉はちゃんと誘ったろうなあ?」

「一応まあ。でもなあ、俺らが誕生日忘れてると思ってるぜ、あいつ。」

放課後人の目を逃れ先生の目を逃れ音楽室に来ると、中は既にセッティングされていた。

スタンドマイクが雛壇に4つ立ててあり(しかもマイク部分には花の装飾)、去年使ったKRASHのコンサート用衣裳が紙袋に畳んで入れてある。本人が来たら電気をつけるので、今はつけていない。

「お前らが一瞬でやったのか?こんな飾りつけを。」

「そうよ。私は万年装飾係なんだから。」

「それ言われると俺達が…。」

「ついでに…4人だけだけど歌うから、こっそり他のお客様も呼んでおこうかしらね。生徒限定30明記様で!うっふふふ。」

桜が何や楽しそうな雰囲気で、スキップしながら装飾の作業をする。

「おいおい、30人も来るか?」

「来る来る、ぜーったい来る。だってあの明莉の誕生日だもの。」

もう直ぐ歌うとなると緊張したが、見事に雰囲気の変わった懐かしさのある装飾は、それを和らげた。

2013.5.3

同じ文章が2段続いてしまっている誤りがありましたので改訂しました。

それに加え、会話文も若干変更・削除しました。

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