3日前の会議にて
どうだったとは言いませんが散々な一週間でした神無月です。
今回の話は先月30日投稿の予定でしたが何と遅れてしまいました。それで大ショックを受けています…
では。
(長くなったので後書きをとばします)
例の「KRASHバラされ事件」は結局のところ小嶋未希の陰謀だったわけであり、生徒をここまで混乱させたのも彼女の仕業である。ただ、彼女は計画犯であり、実行したのは真犯人だと疑われた赤坂京介だった。赤坂京介がそこまでして小嶋未希をかばい、自分を犯人だと偽ったのは不明だが、少なくとも計画を実行した寺川渚と赤坂京介は、小嶋未希に操られていた。そして事件が収束に向かおうとしたその時…学園の音楽講師を騙ったアイドル事務所社長のyamakoが現れ騒動はおさまった、という事なのである。
本来ならば、彼女は停学もしくは退学となる筈だったが、学園に及ぶ力のあるyamako社長の事務所によって免れた。ただし、この一件以降の同じ罪を繰り返す事の無い様、校内の規則がより一層厳しくなる。そして、yamako社長自らの提案で、小嶋未希は学校ではなく事務所の方で対処する、という事に決定した。この学園では珍しくもない「芸能人生徒」に対する意識が無い、というのを改めてほしいとの事だ。
「こんなんでいいと思う?」
「うん。いいと思う。」
隼人は考輝に、自分が書いた新聞の一部を読んで聞かせた。
「で、何故これが生徒会からのお知らせの一面になるわけ。」
「え。だってさあ、これは俺達にとっては大事だろー?学校全体でも大事な事だし。」
「まあそうだけどな。」
2人が今どこにいるかというと、学園の生徒の憧れである、生徒会室。普通に使われる教室のふたまわり程大きくて、設備も充実している。そして内装も豪華に作られている。他の教室は20年前くらいに建て替えをしたのに対し、生徒会室等がある棟はまた新しく完成したばかりなのだ。
そんなわけだから、勿論こんな暑い日だから冷房を…というわけではなく、一応はセキュリティーも管理されている。
「さってと、そろそろあの計画決めねぇと。あいつが居ない間だからな。」考輝は椅子に浅く座り、だらけた格好で言った。
「そうだな。」
「来るの遅えよ。」
「なんでそんなに気合いいれてんの?」
隼人がニヤニヤしながら考輝に訊ねてくるも、
「別にいいだろ。」
とそっぽを向いた。
「メンバーの誕生日祝っても・・・おかしくない、だろ。」
「ま、そうね。悪い事じゃないわよ。むしろいい事じゃない。」
あとから生徒会室に入ってきた桜が発言した。
「だよな?だから、明莉が来る前に決めようぜ。」
考輝は少しだけ、照れくさそうにした。
「じゃあ、これから。明莉の誕生日に関する会議を行います。起立、礼!」
議長を務める桜が、長い机に配置した椅子に着くと、今回の話しあいが始まった。
今日は実は、KRASHのムードメーカーとして大切な役割を果たしているAKARI(=杉浦明莉)の誕生日なのだ。今回KRASH内では桜の次という事になるのだ。(ちなみに桜は4月)
今明莉に内緒でここに集まったメンバー4人は、何を彼女にあげるかという事で悩んでいる、というところ。
「まずー。正直明莉のバースデー忘れてた人・」
桜が男子に疑いをかける。
「いやー・そんな事ないよー?」
涼太がとぼけはじめると、2人も
「だよなあ?忘れてどうするんだよ?」
「じゃ。プレゼント何にするか決まってるのよね?」
「・・・」
桜は「もうっ!」と呆れて、それからすぐに切り替えた。
「4人で買うか、お金の制限つきで個人で買うか。」
「ちょいタンマ!」
考輝が話を割って挙手をする。
「俺今金欠~!!」
「俺も~。」
「金欠って何よ。」
桜の頭に?マークが浮かび上がった。
「金ないの~?オレを見習え、近頃の若者は貯金という物を知らないようだね。」
涼太が調子にのって得意げに言うも、
「は、てめぇみてえな年寄りに言われたかないんだよ、ジジィ。」
考輝がすかさず攻撃を繰り出し、涼太を黙らせた。
「ひど。」
「酷くない。だから、どっちなの?あんた達は4人で買いたいって事でいいのね?」
「「「いえす」」」
男子組は同時にうなずいた。
こんな奴らの事だ、絶対に不平等な金の払い方するぞ、金にはうるさい桜はすべて把握していたものだから、考輝が言いだしたら2人も金を払わなくなるのも、桜にはお見通し。
「では、何が欲しいのかリサーチ・・・したいとこだけど、実は私も考えてなくってね。」
「だめーーーーじゃーーーん!!人の事言えないじゃんんーー。」
考輝は指さしでからかうように笑っている。
「あんたもでしょ。」
桜の頭の中も限界が近い。
「真剣に考えなさいよ?」もうちょっと怒らせれば耳をつんざく程怒鳴りそうな勢いで桜がプンプンしていたところを、できる限り機嫌をギリギリまで損ねないように
「まあまあ。真剣でもこうなのは桜も分かってるだろ?」
と考輝がごまかす。桜はそこへうまく乗っかって、「まあ、そうね。」と一言呟いて機嫌を良くした(決して良くはなっていないが)。
気を取り直して場の空気がようやく真面目になってきたので、桜はそのままの流れで続いての柱へ移った。
「どうやってプレゼントを考えるか。もう何がいいって決まってるなら、それでいいんだけど。決まってないでしょう?」
「へーい!」
さっきまでの空気に逆戻りしそうなように隼人が手を挙げた。
「一番心配だわ、お前の発言。」
「一応俺、リーダーだから。」
「かと言ってリーダーのように責任もって発言しないじゃない。」
「一応リーダーだから。」
どんだけリーダーだというアピールをしたがるんだ、隼人は桜の心配を聞かずに出した案は
「おこづかい。」
スーッと、不思議な空気が流れる。
「よくない?これ。お金皆で出し合って渡す。これ嬉しいよ。」
「…よくないわよ。」
「何故!?」まるであり得ない!という位自信があったハツケだったのか、隼人は桜達の反応にびっくりして声が裏返った。
「衝撃受けてるけどさあ、それはプレゼントでなくおこづかいでいいじゃない。」
それもごもっともだ、男子2人は隼人に背を向けたかのように冷たい視線を送る。
「しょ、しょうがない。じゃあ考え直してあげよう。」
「あげよう、じゃなくて考え直して頂戴。リーダーさん?」
桜にリーダーさん?を強調されて隼人は何とも言えず硬直した。
「4人で買えて、近くに買いに行けて、そして本人が欲しい物である事。うーん、難しいのかしらね。」
「かなり。」
男子達はさほど悩んでなさそうだが、裏リーダー(もはやリーダー)としてこの場を仕切る桜としては、なんとかしていい案を出そうとしているところだ。真面目に考えてはくれなくても、4人全員の意見が合うものでなければ。「明莉、何が欲しいって言ってたっけ?ダイエットグッズなんか、あの子痩せてるから要らないし。コスメなんてそこまで使わないし。」
桜が次々と「自分が」欲しい物の名前を挙げていく。その名前も聞いただけでは男子もピンとこないものばかりで桜を止められなかった。さっきの事もそうだが桜に今この場で意義があると言う事は、自分もそれに合う対等な意見を言わなければならない。
「ちょっと待って。」
涼太が桜の脱線していくところを一旦止め、別人になったようなキラキラした目の彼女へ
「迷ってる場合じゃないでしょ。本人なら何が欲しいか、という事を考えなきゃさ。」
隣で机に肘をついてだらけた隼人は、当たり前だろ、という目を桜に向けながら、涼太には
「だよな。俺も今思った!」
話を聞いてなかった癖にわざと同感している事を伝える。
一向にこの話し合いがまとまらずに終わりそうな予感がして、桜は慌てて口を塞ぐ。
「えー」咳払いをして次の話を喋った。
「特に、誰も何が欲しいのかって聞いてないって事よね。」
「でもな、あと3日しか無いんだぞ、3日以内にどこで何を買おうって言うんだ?」
確かに。今日からあと3日数えたら、明莉の誕生日が土曜日に訪れてしまう。けれど平日は、どうにも学校を離れられる機会もなく、レッスンの前後に店へ行くと本当に見られてしまう。
こんな状況を想定した上で、どうやって買いに行けばいいだろう。
「分かった。こうなれば!」
桜か重大決心をするように勢いよく立ち上がった。
「やまさんに相談するわ!」
「「え~!!!」」




