事件の発端は
そもそも事のはじまりは、彼女のKRASHに対する嫉妬からだった。
まだ慣れない中学校。そして中3だけでなく高3まで先輩が居るという恐ろしい環境下。殺られるかもしれない恐怖と緊張感に、ワクワクの美術、音楽授業…
大きな制服を着ている姿。
ここは、東棟2階にある1年生の廊下。まだまだ騒がしい雰囲気で、幼さ全開の1年生。
そして…
「きゃー!!杏野先輩!」
そんな声をあげてはしゃぐ女子は、渚の居るC組にだってー‥
廊下を出るなり女子はすぐに飛び出し、我先にとウワサの先輩を一目見ようとした。
「杏野先輩~!」
「おはよう、皆さん。」
凄い歓声の中、「杏野桜」は廊下を通った。
1年C組の渚も、桜達もそうだが、芸能人として生活している生徒は「芸能クラス」というのがあり、違うクラスの人が集まって1つのクラスになっている。
勿論本当のクラスで過ごす事もあるが、殆どはそこの特別なクラスで過ごす。
だから、渚も桜たちKRASHとは近い教室に居る事が多い為、よく会うわけだ。
(先輩がいる事、驚く事じゃないけど…)
C組の子は一般生徒しか居ないから、有名で(SAKURAは知られてないが)人気な桜も珍しいのだ。
「まったく…あの人、何なの?」
はっと息をのんだ。
まるで渚の心の中を読んだかのように、そばでずっと見ていた人が言う。
「な、何なのって…?」
「凄い人なの?KRASHのリーダーってわけじゃないし。」
わざと大きい声で言ったのか‥渚はヒヤッとした。平気でそんな事を口にできるとは…しかもKRASHである事も知っているなんて。
「ね…あんたも芸能クラス?」
髪が短くって、オシャレでギャルみたいな生徒‥
話しかけてきたのは、同じく芸能クラスにいる1年、小嶋未希。
「知ってるってことは…あんたもしかして、yamakoさんの?」
「そうだけど。」
未希はツンツンしていた。
「悪い?あの人達最近調子乗ってるしさあ。」
「どこが?」
「そこまて歌上手くないのに人気出ちゃってさ。おかしいよ。私たちはソロでデビューさせられたのに!」
未希は怒りをぶつけようとそっぽを向いてムカムカしている。
渚は怒らせないように返す。
「でもねKRASHは凄いの…」
「どうして?どの辺が!?」
確かに、小嶋未希改めMIKIは人気があるのを渚も分かっていた。私と同じようにグループにしてもらえなかったのも、実力。
MIKIは海外受けがいいから、将来大人になったら外国へ行くとも聞いた。
それくらいの地位があるのに、1つだけ年上のKRASHはその倍くらいの人気がある。
渚も未希の気持ちは分かっていた。
「だからさ、ちょっとイライラするんだよ。何かやってやりたいと思って~。」
「嫌だよそんなの…。」
「つまんないの~。」
未希はがっかりして、ため息をついた。
桜が通り過ぎたあとに、彼女はある作戦を思いついてしまったのだ…。
「私には京介達がいたんだ。なら、そいつを使ってKRASHの混乱を招くなんて容易くできるんじゃない。」
これは流石に渚は頼めないなと思い、未希はその為の計画を練った。
いや、ただ1つしかない目的だから、もう言う事は無い。練る必要も無い。計画の為に力を借りる、ある人物を説得する必要があるというだけ。
自分の事実上の彼氏、に。
「KRASHの人気なんか、すぐにガタ落ちさせるから!」
もし自分が辞める事になれば、その時にはきっとKRASHも終わりを迎えているだろう…。
未希はそう考えていた。「彼氏」と未希がそう呼ぶ京介には、何も伝えずに。
「でも、渚にだってやってもらわなくちゃならない。京介に実行してもらうのはまだ先かな。」
未希はもう1度、渚にも頼みごとをした。




