不良と暴走、決着
私がメールに「おk」とか「tk」という略字を書くと、段々送信した相手やその周りの人も使うようになりました神無月です。
美しい日本語ではないので「私が広めたぜ!」とも喜べませんでした。
そう言えば謎過ぎる彼、京介は色白のつり目のイケメンです。
「何だよ、あいつら。まるで元々知り合いだったみてぇだな。」
「きっとそうだろ。チャンバラいきなり始めるわけがねーよ。」
見ているだけで怖くなってくる。
京介は相手の考輝の動きを殆ど読んでいる。一生懸命に考輝が柄を振ってもそれを華麗にかわし、それとは対照的に落ち着いて反撃を連発。見ていればそれの繰り返しだ。
「俺、よく分かんないだけど。ルールとか。」
「見てりゃ分かる…オレはやった事はないけど。」
時間は刻一刻と過ぎ、両者共勝ちを譲らなかった。
「やっぱり…!君らはそんな事ばかりに首を突っ込むんだね。」
その頃、昨日の様子からして不信感を抱いていた美図は、今朝2年A組の教室に行った。2Aには桜が居るからだ。
「杏野って、居るかー?」
「何か用ですか?」
教室の奥から、桜が呼ばれて出てきた。
「生徒会長の君だからこそ頼み事なんだけど…。八神と沢渡と青井が3人で何かやらかしているようなんだ。」
「‥ーえ?3人が?どこで?」
「廊下で。僕、それを偶々見てしまって。この間から怪しい計画を立ててたらしいんだけど。A組の赤坂と喧嘩しているようだよ。」
「あっ赤坂と!?」
桜の反応は[あり得ない]のような感じだった。同じクラス内でも、彼のその暴れっぷりは有名なようだ。
「あの不良と!?何を考えてるの?今すぐ行くわ!」
静かな勝負だった。聞こえるのは剣道でよく聞くあの大声。
「お前、黙ってるだけじゃ何も分かんねえだろ!」
「うるせぇよ、八神。お前らみてぇに実力も無いのに上から見下ろせる奴が、イッチバン嫌いなんだよ!」
京介は力強く柄を振り下ろし、考輝の頭目掛けて叩こうとする。
バシンッ!
「は?じゃてめえは実力があっての不良かよ。じゃあ逆にどうしてそんな奴になんかなってんだ!おかしいじゃねぇか。」
「俺は…俺は…弱いからって剣道を辞めさせられたんだ!弱ければ何もできやしないんだよ。」
それは、京介の過去の記憶からだった。京介の居た小学校は、剣道が強くて有名な学校だったが、それと同じ位に暴力的な生徒が居るという評判だった。しかし京介はあの頃は学校内で数少ない普通の生徒。今のような態度は見せなかった。ただ剣道に励む生徒。
しかし、例え鈴蘭小の中に居ればトップだとしても、彼の居た学校では下の順位。それ位の格差の中、京介は考輝に勝ったところで何の自慢にもならなかった。ただ「弱い」と仲間に言われ続け、辞めろとまでけなされた。
「強く生きてれば、上に立てるんだと知った。」
強くあろう、そしてあのけなした奴らを見下してやる、世の中はそういうものなんだと、京介はそんな思いの中で生きた結果が、悪さばかりに明け暮れる集団のリーダー。
「ふーん。ま確ーかに俺八神考輝は実力無いかもしれん。」
(エッそこノー否定!?)見ていた2人は思った。
「そして、強い奴が生き残れるのも、そうだろうな。」
(そこもノー否定!?)
「だけどよ~お前、不良が強いとかいうのはお花畑に居るのと大差ないぜ。」
「なっ…」
京介は手の動きを止めた。
「強いのと、だらしねぇのは、違えよ。[実力がある]お前が、[剣道]をするお前が、チャラチャラチャラチャラしてていいのかよ!」
強気に考輝が、竹刀を持った時と同じ様に素早く動く。
「…ああああぁぁああああぁああ!!」
京介の方はムキになって、とうとう柄をただ振り回すだけの動きで考輝に突進してくるが、考輝はあっさりよけて、代わりにこう告げた。わざわざ耳元に。
「あらら、戦いは終わってしまったの?」
美図から騒ぎを聞きつけてきた桜が、美図と共に駆けつけてきた。
隠れていたはずの2人も、それを忘れて飛び出した。
「美図!?お前、何て事してんだよ!」
「僕は手伝ったじゃないか。きちんと。」
何より1番驚いていたのは、自分のクラスの委員長がここに来た事だ。
「わっ、桜…。何故来たんだよ。」
「暴力は何よりも、自分の心まで駄目にするんだから。それに、モテないからね。…別に好きって云う訳じゃないからね。」
桜がピシッと、剣よりも強靭だった一言をつけ加えて言うと、京介は照れながらへたり込んだ。
さっき言われたー‥「冷静さを失ったら負けだ」。この一言がのしかかっていて、忘れられない。
「‥-んだよ、ソレ。杏野って、そんな奴かよ。それでよく…。」
「あら、実力はあるのよ。」
「自分でかよ。ホンットに。」
「あんたも自分で言ってたじゃない。」
桜の脇に居た考輝達は思う。からかってる癖に、黙らせているのだから。
「で?あんた達は?怪しい計画をしてたらしいじゃないの。」
桜は3人の方に向き直る。
「スマセンッ!」
「暴力消えたし、いいんじゃん?」のんきに隼人と涼太が言っていると、桜は肩をすくめた。
「そんなんだから…怪しいのよ。」
「すみませんねー!」
美図はなるべくそのくだらない事で吹き出さないようにと心掛けているおかげで、何とかこらえたが、もう本当は限界だった。咳払いして、
「全く、君達は何をしているんだ…。本当に馬鹿げてるよ。結局は、何をしたかったんだい。挨拶運動だったのは本当かい?」
「嘘。嘘です嘘。そんなつもりじゃないっスよ。」
始めこそ怒りもしなかった考輝が、くるりと美図に視線を向けると、
「てか美図!手伝いって、そういう事かよ。ぶっ殺すぞ!?」
対して冷静な美図の方は、クールな表情を作って
「それは誤解だよ。僕は君らの為に、君らの為の一善をしたんじゃないか。」
桜は「あ~」と納得し、京介は「テメーもテメーだな。」と呟く。
「悪いかい?こんなものだろう?一善なんて。」
「「「そ、そーですね。」」」
棒読みするように、考輝ら3人が声を揃えて言った。反論も何も出来ない状況。
「一善って、本来そういうものなのか。」
「当たり前でしょー??」
あははははは…
そんな笑い声が、この場所に広がった。
翌朝。
「ほらーっ起きっぞー。」
いつもの考輝の起こす声、そして珍しくもない乱れ気味の涼太の寝癖に隼人のだらりとしているネクタイ。
3人が遅れないように早めに寮の
外へ出て校舎へ入っていくと、あまり人気もなく静かな廊下に、
「おい、てめーら。」
と呼び止める声がした。
「んだー。」隼人が振り向きざまに言うと、後ろには壁にもたれかかって腕組みしているつり目のヤツがいた。
「挨拶運動ーってヤツやるんだろ?俺達も、カッテに乱入するからな。」
それは、仲間を何人か連れている京介、そして彼も仲間も同じように染髪を止めた他の取り巻きが立っていた。[乱入]だけを強調して。
「は…。お前なあ、挨拶運動だって結構なもんだぜ、ましてやそんなおま…」
「[どんなお前]だ?」
名の知られた鋭い睨みつけで、京介が言うと、考輝が「こりゃ失礼した」。
「まーよかったぜ、あまりに変な事されると、仕事増えるだけだからな。」
「それが生徒会の言う事かよw」
こうして、彼ら不良‥ー今じゃ過去に不良と呼ばれていた普通の生徒に過ぎないがー‥は、シャレンド生として相応しく、善人となりこれから学校に尽くす、と約束を決めたのだった。
これは、なぜか宿題破滅計画が未遂に終わった3人のお陰であるのだ。違った事で、大きな一善を果たせたようだ。
京介くんは、どうやら女好きなようです(笑)
もうお分かりの方もいらっしゃるかと思われますが…彼の名前はあるキャラクターから取ったんです。見た目はさすがにああいう髪型はマズいですが、顔はあの人に近いイメージです。
は?と思って頂いて結構です(笑)私変人なので知らなくていいんですよ!!?
では次は、少し今回の話繋がりで書きましょうか…。




