手作りお弁当には気をつけて
例えば 誰も読めない文章で 迷宮入りにされてても
僕はきっとこのまま ずっと書くよ~
いつか文句を受けても 1つずつ返してゆく
誰よりずっと 輝くアイドル 僕が作ってくから
突っ込み下手でも、1つくらいはあるでしょ。間違い探しどころでないぞこれ。
寮にいる癖に、リュックが何故?お弁当箱が何故?
「yamako最強」は無し。あの人は学校関係にはものすごく強いんです。権力的な意味で。
後日。お天気は良好、暖かく風も少ない丁度よい日だ。
5人も、生徒会の仕事をそれぞれ終えて、リュックを背負って待ち合わせの公園に集まった。
明莉はルンルン気分で公園に来たのだが、入り口の花壇の前にひっそりと立っていた桜を見つけ「ごっめ~ん!」と駆け寄った。
「同じ部屋だから一緒に来ればよかったね。」
5分後に男子3人と、同じクラスの男子が何人か来ていた。
「あれ?お前らの友達は?」
「後から来るってさ。もう、まず行こうぜ?」
私服姿でもちょいチャラが出ている隼人は、早く遊びたいとばかりに急ごうとした。
「あっ、…りょーうたーっ!」
遠くに涼太たちの姿が見え、明莉は背伸びして大きく手招きした。なぜなら、もう既に来ていたyamako達がいる敷物の周りに、渚達もいたからだ。
涼太は照れ隠ししながらそっぽを向いた。
「そんな顔せず、行ってきなよ!あんた初めてじゃん。」
「それでも1勝5敗だぞ。」
そんなところへ、yamakoが遠くから呼びかけた。
「お~い、皆、こっちに大きい敷物を敷いたから、こっちおいで~。」
言われた途端、明莉がにやっとして涼太の方を見た。
他の人が野生動物にも負けない勢いでブルーシートの上に上がった。場所の取り合いはまるで縄張り争いかのよう。
「さっ、KRASHも座りなさいな。」
1人が満席の部分を避けて座ったので、4人も同じようにして座った。
隼人がどっしり自分の領地にあぐらをかいて座る。
「あ、そうそう弁当サンキューな。」
桜と明莉は目を見合わせて、OKというサインをした。
実は今日の為に、2人は3人の分までお弁当を作っていた。学校の自慢の1つである家庭科室をわざわざ借りて、他の女子と一緒に用意していた。家庭科室は綺麗、広い、可愛い、設備道具充実と女の子には人気なのだ。
「好きな人に作ってあげたらいいかも?」
「桜それいつの時代の子~?大体、桜は好きな人なんているの~??」
「んーん、どうかなっ。」
女子トークをしながら、調理を進めるエプロン姿の中学生たちが、一生懸命愛をこめてお弁当を用意してくれていた。
「ふっ、よくできてんじゃん。すげえなお前ら。」
考輝はお弁当のフタを開けて、じーっと見つめ目をキラキラさせていた。
「じゃーもう腹減った。食おうぜ?」
確認の答えを待つ前にすぐ、
「いっただっきまーす!!」
涼太の号令ですぐに男子3人、おにぎりや玉子焼きや唐揚げにかぶりついた。
「うわわ、怪獣みたいね…。」
桜がその食べっぷりを軽蔑するような目で見ていると、
「まさに、“笑顔に紛れる大怪獣”ね。」
明莉はそう答えた。
「ん~っ、美味い~!!美味すぐる!!」
3人が満面の笑みで頬を上げていた。
「よかったぁ~。」
2人もほっと一安心した。
「じゃあ、あたし達も食べましょか。…ん?」
明莉がふと、他の子達のお弁当に目がいった。
「ねえねえ、あのお弁当ってさ、一緒に作った子の中に居たよね?」
「え、どれ?」
桜がよいしょっと、明莉指差す背後から覗きこんだ。
「ほら、あのキャラ弁だよ。」
明莉と桜は、その弁当を持っている人と目が合わないようにしながら、こっそり中身を見た。
まずそのキャラ弁を持っている人が男子なのだが、その弁当を女子が作っているのを2人はちゃんと見た。
「…桜の言うように、好きな人に作ってあげるって、こういう異なってなの?」
隣で桜がにやりと笑った。
しかもキャラ弁は、その人1人ではなかった。他の何人もが違うキャラの形に作られたおかずの弁当を食べている。キャラといえばあるサッカーアニメのキャラ、プラモデルのキャラ、アニメーション映画のキャラなど、恐らくそれぞれの人の好みに合わせて作られていた。
気持ち悪いほど、“キャラ弁”がたくさんいるのだ。
「おや、凄いの作って貰ったんだねえ。」
アニメに興味津々なyamakoも、いろんな人の弁当を覗き見している。
「は、流行ってるー!?」
明莉、参りましたとばかり。食べるのが勿体ないと嘆くyamakoのそばで、男子達は、
「お、それ○○じゃん、すげえいいなーちょっと食わしてそれ~。」
という感じの流れで他の人の弁当を食べ歩いている。行儀よく座って食べている男子など見事にいなかった。
一方、女子は女子で小さな問題が起きていた。女の子からすれば、大きなもめごとかもしれないが。
「あたしがあの人に作ったんだからね!!」
「何で、あたしが先に作るって決めてたんだけど!!」
「しかもあいつ好きなキャラ違う!」
ギスギスした空気が作り出され、ただ呆然と遠くから嘲笑うように見ていた5人。
「ありゃだめだ。」
考輝はむしゃむしゃおかずを食べ、冷たい目を向ける。
「把握してねーじゃん。」
「女の子って怖い!」
「…何事も平和に。」
同じ女子として明莉もあきれる、涼太は大好きな“平和”という言葉を口にする。
「あーあ、やっぱり…。」
「コレが1番だね。」
と、仲良くこちらのサイドでは話しているのだった。
「今何気ハモったんじゃね。」
「アハハハ…。」
お弁当なんて好きな人に作るものじゃないのだ、それはKRASHがきっちり証明してくれる事だろう。
花見を十分に満喫し、5人仲良く、そしてのんびりと時間をすごした。




