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『里美です。明日、映画見に行かない? 時間は……そうね、渋谷駅東口のバスターミナルにお昼の11時で。今夜は10時くらいまでなら起きてるから、都合が悪かったら連絡して? じゃあ明日ね』
仕事から帰宅して、留守番電話に残されていた里美からのメッセージを聞いた時には、既に夜中の12時を回っていた。
「都合を考えてくれるなら、数日前に言ってくれたらいいのに」
などと電話機に向けて言ってみたりする。
もちろん、何か返事があるわけも無く。
言葉に出来ないやり切れなさが、溜め息となって体から抜けていった。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、喉の奥へと流し込んだ。
冷えた缶を持つ指先の感覚が変わっていく。
窓の向こうには、アンバランスな街の灯りが点在していた。
明日の約束に間に合う時間に起きられるかどうか……
そんな気掛かりが胸をかすめた。