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一目惚れ 

作者: ナイデン

初投稿

一目惚れ。


こんなのは初めてだった。

最初の出会いは引っ越しの挨拶でタオルを届けに行った時のことだ。

チャイムを鳴らしたら、すぐに明るい返事が返って来た。


…どちらさまですか?…


引っ越しの挨拶に来た旨のことを話すと彼女は笑顔でドアを開けた。

すると…

何と表現すれば良いのか。

あの時の胸の高鳴りといったら、これから先一生ないだろう。



彼女の笑顔。

太陽みたいに明るく眩しかった。

潤んだ瞳に僕が映る。

優しい瞳だった。

僕は隣の部屋の住人にあっさりと恋に堕ちた。








ゴミ出しの時の何気ない挨拶。

それさえも胸が高鳴ってしまいどうしようもなかった。


回覧板の受け渡し。

ラブレターの受け渡しみたいで気恥ずかしかった。





静かにしていると、たまに隣から声が聞こえる時がある。

彼女が電話で話してる声だ。


それを聞く限り、彼女には彼氏がいないらしい。

それを知った時の自分のテンションのあがりようと言ったら…。

何を血迷ったかケーキを買って一人でお祝いした位だ。



毎晩、隣の部屋にいる彼女のことを思った。

彼女が側にいると思うだけで夜も眠れない。

おかげで毎日寝不足だ。

しかし、幸せな寝不足だと感じた。











恋心は加速していった。

そして、現状では物足りなくなってしまった。

頭の中はどうやって彼女をデートに誘うかばかり考えていた。


…最近美味しいお店が近くに出来たんですよ、知ってます?…


こんな感じでいけそうだ。

壁に耳をつけて聞いてた限り、彼女は洋食が好きらしい。

だからデートスポットの下調べも充分に慎重にした。

あとは何かきっかけがあれば…。


そう、どんな些細なことでも構わないから、僕はきっかけを求めていた。














冬。大雪。ある寒い日。

隣の部屋のドアが開く音がした。

彼女が出掛ける音だ。

布団に入っていた僕は時計を見た。


午前4時23分。


こんな時間に彼女は何処へ行こうというのだろうか?

彼女は大体いつも朝の6時10分に起きて7時半に家を出る筈だ。


…。


少し気になった。

だから寒い中布団から這いでて、コートに手を伸ばした。

体が震える位寒かった。

ホットレモンが飲みたかった。





玄関を開けるとまだ空は暗かった。

分類するなら間違いなく夜だ。

雪は止んでいた。

が、しかし5センチ位積もっていた。


彼女のドアを見た。

そして気づいた。

ドアを開けた先から雪に足跡がついている。

彼女の足跡だ。

白い雪には彼女の足跡だけがはっきりと残っていた。

僕はその足跡を追うことにした。









雪は夜の色を存分に含んでいた。

白ではない青っぽい不思議な色だ。



彼女の足跡。

彼女の交通手段は基本的に徒歩か自転車だ。

徒歩の場合は近場に寄っていることが多い。

今日もそうだろうか。



彼女はいつもチェック柄の可愛い靴を履いていた。

今日もきっとその靴を履いている。



コンビニを通り過ぎた。

一体何処まで行くのだろう。



彼女はちゃんと暖かくしたのだろうか。

さもないと風邪をひいてしまう。



何か色々と楽しい気がしてきた。

修学旅行で女子の部屋へ侵入しに行った時と同じようなトキメキがある。



吐く息が白い。

だけど歩いているので少しは体があったまって来た。



足跡は森林公園に続いていた。

ここにはたまに散歩で来る。

こんな所に夜遅くから何の用だろう。



しばらく歩いた。

坂が多い。



朝日が少し顔を出しはじめたようだ。

東の空が少し明るい。










足跡を辿る時間、とても長い時間に思えた。

でも実際は20分位のものだろう。


そして僕は彼女を見つけた。

彼女は一人だった。

僕は彼女に近寄った。









~~~~~






「…続いてのニュースです。今日未明、D森林公園内で首を吊った男女の遺体が発見されました。外傷等の傷がないことから、警察では恋愛のもつれから心中したのではないかと見て捜査を進めております。」





~~~~~



彼女は独りでとても寂しそうだった。

だけど、これでようやく彼女と二人きりになれた。

僕は幸せだった…。







~終わり~



お粗末様でした

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