ハッピーエンド?
初めまして、霜月です。
楽しんでいただければ幸いです。
王立魔法学園主催のダンスパーティー。
私、ユリア・グレイ伯爵令嬢は婚約者であるライアン・バウティ子爵令息とともにこのパーティーに参加した。
オーケストラの演奏が高らかに鳴り響いている。生徒の皆がパーティーの開始を待ち談笑しているが、私たちが現れた瞬間そのざわめきが静まり返る。
人垣が割れ、道をつくっている。その先にはこの国の第二王子、ウィリアム・ダートリング王子殿下がいた。
王子は笑顔でこちらを見ており、私がその手を握るのを待っている。
隣の婚約者を見る。
女性として小柄ではないはずの私が並んでも、頭1つ分ほど差がある大きく、がっしりとした身体と鋭く切れ長の赤い瞳が威圧的な雰囲気を相手に与える。婚約者としての情はあるが、それ以上でも以下でもない。
そんな彼が悲しげに微笑み、エスコートしていた私の手を離した。
王子なんて伯爵令嬢ごときが関わっていい相手じゃないと思っていた。いつも笑顔を浮かべ、驕るところのない金髪碧眼の完璧な王子様。そんな彼は『完璧な王子』であるために常に気を張り、努力していた。
兄である王太子は人の上に立つ天性の才能がある。
歴代王族でもトップクラスの魔力量があり、すべての属性の魔法を使いこなす。周囲の人間が自然と傅くオーラがあった。
そんな異彩を放つ王太子と比べれば第2王子は親しみやすく、人望が厚い印象だった。勉学において優秀であることから将来は兄の腹心として国を支えていくのだろうと貴族たちから期待されていた。
ウィリアムはそんな日々の重圧に耐えかねて、取り巻きの生徒から離れて学園にある庭園の片隅で1人地面に寝そべっていた。
グレイ伯爵家は代々薬師をしており、私は薬草を探して庭園を歩き回っていた際にそんな王子と出会った。
私に気付いた瞬間に王子様スマイルで挨拶をし、焦ったように言い訳をするウィリアムの顔色の悪さに気付いた私は、ゆっくり眠ってくださいと声をかけラベンダーとベルガモットで作ったポプリを渡した。
その日からなんとなくウィリアムを目で追うようになっていた。よく見てみると彼の顔色はいい日のほうが少なく、疲労がたまっているように見えた。
たまに庭園の片隅で彼を見かけたときにはゆっくり休めるようにと、得意の土魔法で植物を操り人目につかないように簡易的なガゼボのようなものを作ったりするようになった。
そんなことをしているうちにウィリアムとの距離は近づき、彼の婚約者の公爵令嬢にいじめられたり、身分の差に悩んだこともあった。しかしそんな試練も乗り越え、周囲も私たちのことを認めてくれるようになった。
そして今日、このパーティーを迎えたのである。
私は婚約者のライアンの手を離し、ゆっくりとウィリアムに向かって歩き出した。
この日のためにオーダーしたウィリアムの瞳の色であるロイヤルブルーに金色の刺繍がされたドレスの裾を揺らし、グレイ伯爵家に代々受け継がれている水晶の首飾りがシャンデリアの光を反射してキラキラと輝く。
生徒たちの笑顔に包まれながら、差し出されたウィリアムの手を取った。
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ちょっと待って。いやおかしい。
これって不貞カップル誕生の瞬間じゃない?なんでみんな祝福してんの?
てかライアンは?私たち婚約してたよね?なに浮気容認して身を引こうとしてんの?
普通怒って問い詰めて、慰謝料でも請求するレベルだよね?
それよりも重大なことに気付いた。気付いてしまった。
私、ウィリアムのことこれっぽちも好きじゃない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




