第8話 ボス戦前の準備
伊織がPKに遭った日の深夜。
とある掲示板にて新しいスレッドが立った。
『ハンターで銃使ってる初心者発見したwPKしたったw』
2人組の片方がPKの話を他人にしたくなり開いたようだ。
瞬く間に人が集まってくる。
『まじかよwww』
『初心者狩りとかひでぇw w w』
『銃使いとか時代遅れじゃんw』
『それもそいつ美少女アバター、相当凝ってる奴だったぞw』
『まじかよw』
『凝ってるのかよ。恥ずかしw』
『SSは?』
『あるぞ』
『ナイス』
1枚のスクショが掲示板に貼られる。
そこには、伊織のアバターが写っていた。
PK2人組の片方がいつの間にか盗撮していたようだ。
伊織のアバターの見た目は、現実の姿を投影した物の髪色や目の色を変えただけ。
しかし、掲示板の人々はそんな事を知る由は無く、各々語り出す。
『おっ、これは美少女、凝ってるな』
『これは1時間コースの凝り方ですなw』
『承認欲求高いんだろwそれか現実陰キャか』
『生で見てみたいわ。初期街?』
『初期街、だけどPKで心折れたかも?』
『うわっ、まじかよ』
と深夜に盛り上がっていた。
一方翌日、その初心者には、別の問題が起きていた。
「金が無くなった……買い過ぎた」
そう、ゲーム内資金が減り金欠になったのだ。
〜〜〜
弾丸や回復薬を購入する為に街へ戻って来た。
道具屋で、ついでにスライムの液体を売った。1つ2ゴールドだった。
そこそこドロップした為、纏めて売却した。
回復薬は1個5ゴールドでHP40回復出来る。
現在のHPは140、1個で3分の1近く回復する序盤優秀アイテム。
森主スライムの強さが分からないから、一先ず回復薬を35個購入し、武器屋で弾丸の材料を55セット購入した。
結果、金が殆ど無くなった。
正確には3ゴールド残ってるが、これでは材料セットも買えない。
……他にも防具とか有ったら買いたかったのに、無念。
今現在、初期防具のまま。
多分森主スライムは1番弱いボスだが、初期防具では防御力が心許無い。
回復薬を買っても、回復薬を使う前に削り切られたら負ける。
確実に買う順番を間違えた。
鍛冶師のスキルで弾丸を製作する。
「仕方ない。回避最優先にして、後は火力でごり押すかぁ」
弾を倍以上増やしたし、ステータスは攻撃に全振りした。
レベルが2程負けているが、これなら勝てない相手では無いだろう。
低いレベルで戦うのは、ゲームではよくある話だ。
……武器の方はそもそも売ってなかったしな。
ランリスには、銃は売っていなかった。
その為、初期配布のハンドガンだ。
ただ初期街付近のボスなら、初期武器で勝てる想定で作られている可能性が高い。
ハンドガンは威力が高めな上、ハンターのスキルのパワーショットもある。
これで火力不足は考えづらい。
「それじゃ向かうか」
街の外に出て森へ向かう。
平原に居るスライムは近寄らず、バレたらダッシュで逃げる。
どのくらい使うか分からないから、弾を温存しておきたい。
スライムは遅いから余裕で逃げ切れた。
「これならボスまで戦わずに行けそう」
……傍から見るとスライムから逃げる変なプレイヤーだな。
今日もプレイヤーが誰も居なくて助かった。
発売から半年経っているから、新規プレイヤーが纏めてログインしたりはしないのだろう。
或いはログイン時間がバラバラで遭遇していないだけか。
森の中に入り、獣道の中心を歩いていく。
銃を握り飛び出してきても、対応出来るように警戒して進む。
飛び出してきたスライムや道を阻むスライムは仕方無く倒す。
そうして、森の奥、森主スライムの居る場所へ着いた。
広間に入る前に準備運動をする。
……動きに問題無し、リアルの身体も異常はないな。
フルダイブVR装置には、現実の身体の状態をスキャンして確認する機能が搭載されている。
異常が起きればすぐに通知が飛ぶ、或いは強制ログアウトとなる。
「出来れば初見突破で行きたいな」
ショートカットに回復薬をセットして準備を終える。
ボスの居る広間に足を踏み入れた。
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火力
大体、攻撃力の事を指す(威力、火力など複数の言い回しがある)




