第6話 鍛冶師
翌朝、目を覚まし顔を洗い歯を磨き、椅子に座って今日分のバイトをササッと終える。
簡単な在宅バイトでは、余り貰えないが収入ゼロよりはマシ。
一食分になれば充分くらいで考えている。
「よし、終わり。それじゃやるかな」
ヘッドギアを装着して、ベッドに横になりVR装置を起動する。
ゲームを選択すると視界が変わり、ゲーム内の景色に変わった。
空を見上げるとゲームとは思えない程、綺麗な青い空が広がっている。
「綺麗だな」
……最初は鍛冶師になる為の金槌か。武器屋は……こっちからだとどう行くんだろ。
メニューでマップを開く。
武器屋を見つけて方向を確認して歩く。
他に寄る場所は無いので真っ直ぐ。
……普通の村人もAI搭載されてるのかな?
すれ違う村人達を見て考える。
武器屋や道具屋のようなNPCにAIが搭載されているのは分かるが、一般の村人にも搭載されているのか気になる。
昨日は見ても気にしなかったが、行動パターンが固定という感じでは無い。
「気にはなるが話しかける勇気は無いな」
武器屋に着き扉を開ける。
昨日と同じで男性がカウンターに立っていた。
彼は武器の手入れをしていて、こちらに気付いていない。
話しかける前に俺は店内の壁に視線を向ける。
そこには、綺麗に磨かれている武器や防具が立て掛けられていた。
皮で作られた防具や石で作られた剣、鉄製っぽい装備と色々と並べられている。
……本物みたい。
ゲームのグラフィックで、再現されているとは思えないくらいの本物感がある。
「おっ、嬢ちゃん、矢が足りなくなったか?」
手入れを終えた男性がこちらに気づいて話しかけてきた。
「矢では無く、金槌と弾丸の材料を買いに来た。売ってると聞いたんだけどある?」
「おっ、鍛冶師希望か。勿論、売ってるぞ」
男性はウィンドウを開く。
そして、指を動かして操作をしたかと思うと彼の手元に金槌が現れる。
「これだ、値段は50ゴールドだ」
メニューを開き50ゴールドを取り出してカウンターに置く。
日曜大工とかで見た事がある金槌だ。変哲も無い普通の金槌の見た目をしている。
ファンタジー感は無い。
「50ゴールドピッタリと、後は弾の材料だったな。材料は2つあって軽鉱石と火薬だ。1セット4ゴールドだ」
……弾は2種類のアイテムを使うのか。覚えておこう。
掛かる費用が4ゴールドなのは、攻略サイトに書いてあった通りだ。
「1セット1発だよね?」
「そうだ」
「なら多めに買おう。40セットで」
「おぉ、40も買うのか」
一先ず40セット購入する。
初期配布分の金も幾らか使うが、モンスターを倒して金を稼ぐから問題ない。
目の前にウィンドウが現れる。
『軽鉱石×40、火薬×40購入しますか? YES NO』
……普通にゲーム的な売り買いも出来るんだ。
金槌を買った時はアイテムを出していたから、このゲームはそう言うやり方なのかと思ったら違ったようだ。
これも自由度が高い証拠だろう。どちらのタイプも好きな人は居そうだ。
YESを押して購入が完了する。
インベントリからゴールドが減りアイテム欄に軽鉱石と火薬が入った。
「軽鉱石以外の鉱石を使っても弾丸を作れる?」
「あぁ、弾丸の材料になる鉱石は何個かあって軽鉱石、中鉱石、重鉱石が主だ。ただ鉱石によって弾の性能が変わる」
「他には無いのか?」
「あるとは聞くが、詳しくは知らない」
……知らない? 未実装だからかイベント系の奴なのかな。一先ずこの3つか。覚えやすくて助かる。
武器屋NPCが知らない情報となると、一般で出回らないタイプの鉱石か、意図的に運営が伏せているか。
どちらにしろ、今は知る手段がないから後回しで良い。
「火薬の方は?」
「種類があるとは聞いた事はあるが知らないな」
「成程、なら基本は火薬とその3つの鉱石で弾丸をか」
「中鉱石以降は、鍛冶師のレベルを上げると加工出来るようになる。今だと軽鉱石だけだ」
「レベルを上げる方法は?」
聞ける情報は聞いていく。
そして、聞いた内容をゲーム内にあるメモ機能に書き記す。
「弾丸を作る、矢を作る、武器を作る、武器を強化するなどを行うと経験値が溜まって可能だ」
「有難う、助かった」
「レベル上げ頑張れよ」
店を出てベンチに座る。
そして、金槌を手元に出す。
すると、小さなウィンドウが現れる。
『サブ職業、鍛冶師の解放条件を達成しました。鍛冶師になりますか? YES NO』
YESを押す。
金槌が軽く光って、ステータスが見れるようになった。
鍛冶師 レベル1
一部のアイテムが制作可能
インベントリ内の素材を使って道具を制作
と書いてあった。
これでサブ職業鍛冶師に成れた。
「なら早速、弾を作るか」
金槌を手に持ち鍛冶師の能力を使う。
ウィンドウが現れて、そこには加工アイテムとその材料の一覧が並んでいる。
唯一材料が揃っている軽弾丸を選択して制作数を決めると、目の前に軽鉱石と火薬が現れた。
「これを金槌で叩くのか」
金槌で軽く叩く。
カンッと叩いた音が響いて、弾丸に変化した。
目の前の弾は消えて、40発の弾丸がインベントリに入った。
「よし、弾は増えたし狩りに行こう」
街の外に向かって歩く。




