第5話 決意
目を開くと見覚えのある場所に居た。
キャラメイク後に転移してきた場所、ここがセーブポイントだったようだ。
「うへぇ、斬られた感覚が残ってる」
痛みは無いけれど、刃物が身体を通ったような感覚が残っていて気持ちが悪い。
この感覚は慣れるのが大変そうだ。
直ぐにインベントリを開く。
弾丸1発減っているだけで他に変化は無い。
……デスペナルティは無いのか。有難いがPKは何かしらの得がある訳でも無いのか?
PKで所有アイテムを強奪出来るゲームもある為、その類だと思ったがどうやら違うらしい。
「さて、ログアウトするか」
PKが居る以上、次の街に行く手段が無い。
それにPKプレイヤーが言っていた話も気になるところ。
メニューを開いてログアウトボタンを押す。
再び暗転して見覚えのある景色に変わる。
ヘッドギアを外して一息つく。
……パン食べよ。
机に置いてあるパンを手に取る。
野菜や鶏肉などが挟んであるパン。
この手のパンは値が張るが、偶然セールで売っていて安かったので買った。
袋から出すと、パンや乗ってる食材の美味しそうな匂いがする。
ベッドに腰掛けてスマホを取り出し直ぐにクリスタルレギオンの掲示板を調べる。
「えぇっと、有った。銃弱すぎ、ハンター最弱職決定、銃を使いたいならFPS行け……タイトルだけで散々な言われようだなぁ」
ハンターの銃についての情報が書かれた掲示板を適当に選んで見ていく。
ほぼ全ての掲示板で良い評価を殆ど見掛けない。
弾丸が高すぎて基本的にマイナス。硬い敵相手だと出費が酷い。
弓は安く汎用性が高いからまだ使えるが、銃はダメ。
挙句、序盤で弾を使い切ったら売るのがオススメとまで書かれている始末。
他には良い点あれど、デメリットが目立つような事も書いてあった。
威力は高いが、矢の方が安く汎用性が高い。
カスタム性はあってもサブ職業で鍛冶師を選択しないと自分で作れない。
自力で弾丸作成すれば安いが、サブ職鍛冶師固定なのが痛過ぎる。
素材を自力で集めれば弾を量産出来るが、労力に見合わない。
サブ職のレベル上げが大変。
ロマンとしては良いが、使うのは別のメイン職の方が良い。
など。
……弓は扱えるってのは見るけど、銃はロマン以外の擁護が無いな。
「サブ職業なんてあるのか。えぇっと、これだ」
まとめサイトを見つけて一覧を見ていく。
メイン職よりも多いかもしれないサブ職業の一覧が並んでいる。
これだけ自由度が高いと、職固定化されるのは嫌がるのは頷ける。
……でもサブ職を鍛冶師に固定すれば扱える職か。他にやりたいサブ職無いし良いや。
そもそもサブ職業の存在を知らなかった。
だから今のところ鍛冶師で固定しても何の問題も無い。
「PK共に仕返ししたいし、するならやっぱ」
パンを噛み千切る。
「煽られた分もお返しした方がお得だよなぁ」
あの場で怒りを見せたとて、笑いの種にされるだけだと分かっていて冷静さを意識していた。
だが、もう隠す必要が無い。
情弱だのなんだのと煽られて怒りを覚えない程、俺は人間が出来てない。
弓を使わず銃を使うと決めた。
もぐもぐとパンを食べながら、PKに仕返しをする計画を立てる。
まず高レベルプレイヤーのあの2人を倒し切れる武器が必要だ。
それも2人とも前衛職だった。防御数値は高いだろう。
「銃はカスタム要素があるんだったっけ。なら使えるレベルまで魔改造すりゃ良いか」
掲示板の1つに書かれていたカスタム性はあってもと言う言葉に目を付ける。
それなら初期配布のハンドガンを強化したり、売り物の銃で新しい武器を制作出来る可能性がある。
「まずは鍛冶師にならないとな」
サブ職業を得る条件を調べる。
有名ゲームなだけあって、直ぐに攻略サイトが出てきた。
鍛冶師の条件は、中でも簡単で武器屋で金槌を購入する事だった。
初期の街でも購入出来て値段は50ゴールド、今でも購入が可能。
「鍛冶師の条件は分かった。次は弾丸だな」
弾の購入がマイナスである事をどうにかしないといずれ詰む。
攻略サイトで調べていく。
……確か弾が自力なら安く作れるみたいな話も書いてあったような……これかな。
攻略サイトを見て回る。
すると、武器屋で弾の材料が購入出来て鍛冶師のスキルで作れば、4ゴールドで1発制作可能になると書いてあった。
「これだ!」
1発4ゴールド。
これならスライム1体のドロップ量でも足りるようになる。
つまり、収支マイナスからギリプラスになると言う事だ。
ただ店売りの矢の方が安く、素材の難易度も低い為、弓の方が扱いやすいとも書いてあった。
……よし、見なかった事にしよう。
最後の文は頑張って記憶の隅に追いやってサイトを閉じる。
銃を使う上で弓の強みを見るのは、揺らぐ原因になってしまう。
当面も目標が出来た。
一先ず今日は休んで明日ログインする。
寝る前に風呂に入り髪をドライヤーで丁寧に乾かす。
女性の髪と肌は丁寧に扱うようにと、美空さんに言われている。
保湿クリームなどの美容用品も貰っているので、机に貼ってあるメモを見ながらその手順で使っていく。
「凄い面倒」
面倒な作業を終えてベッドに倒れ込み布団に包まる。
数分もしないうちに意識が途切れ眠りにつく。




