第4話 PK
「うぉっ、ど、どうした嬢ちゃん」
男性は、俺の反応に驚き大きなリアクションを取る。
ハッ、として直ぐに取り繕う。
「い、いや……弾丸って高いんだと思って」
「あぁ、そうだな。弾丸は高いぞ。割に合わないなんて言う奴も多い」
「矢も同じくらいの値段?」
「いや、矢は1本3ゴールドだ」
「……3ゴールド?」
「あぁ、硬貨3枚分だ」
丁寧に3枚の硬貨を見せて教えてくれる。
説明は有難いけど、それは知ってる。
……3ゴールドって弾の値段の3分の1じゃん、価格設定どうなってんだよ!? コストが割に合わねぇ!!
また大声を出さないように心の中で叫ぶ。
スライム一体倒すのに1発使う。
その1発が9ゴールド、スライムのドロップは5〜6ゴールド。
良い引きをしてもマイナス3ゴールド。
使えば使う程、金が削られるだけ。
スライム相手だと、得になるには1発でダブルキルしないとならない。
このゲームの仕様によるが、ダブルキルなんてのは現実的ではない。
……銃はマイナス確定、使うなら弓一択か。なぜこんな仕様にした運営よ……
銃使いたくてハンターで始めた人が遭遇する絶望ポイント。
一撃で倒せる想定で考えるなら、1本弓ならマイナスにならない。
銃は金を貯めた後、中盤以降に使う武器なのだろう。
「なら仕方ない。弓を使うかぁ」
「それなら矢を買っていくか?」
「矢の方は使ってないから余裕ある」
今までは銃だけを使っていた為、矢は1本も使っていない。
初期配布分の20本ある。試し打ちを考えても次の街まで持つだろう。
もしも、矢だけで足りなくても弾も10発が残っている。
「そうか、隣街は近いからな。真っ直ぐ行けば余りモンスターと会わないはずだ」
「それは有難い。無駄打ちはしたくない。お邪魔しました」
ペコッ、と頭を下げて店を出る。
店を出てから北側に向かう。
マップで次の街の位置を確認する。
……遠くはなさそうだな。なら今日は次の街まで行って終わりにするか。
チュートリアルだけの予定だったが、せっかくだからもう少し遊ぶ。
時間は有り余っている。急ぎの用も無い。
それにこれはただゲームを楽しむだけが目的じゃない。
感覚を慣らす訓練だ。
とは言え今のところは、精々背の高いNPCと会うと首が辛いという事くらいだ。
現実のような痛みは無い。だけど、見上げ続けるのは少しきつい行為。
それ以外には特に無い。
仮にも2ヶ月身体を動かしてる。
基本的な身体操作に関して大きな支障は見られない。
……大きい差は身長と異性の身体の問題。ゲームなら身長の感覚だ。
ゲーム内で色んなキャラと会う事で身長が縮んだ事に慣れる。
家の中だと人を見上げて会話する事なんて無いから、それだけでも訓練にはなる。
「この道を真っ直ぐだよな」
道を進み北区から街の外に出た。
真っ直ぐ、道が続いている。
寄り道はせずに次の街へ向かう。
道中でモンスターを一体二体倒すだけでレベル3に上がる。
次の街で一気にレベルが上がるとは考えづらいから、そこでレベルを上げればいい。
初期の街に長々と居座る理由も無い。
ランリスの森を少し通り進む。
モンスターの姿は見えない。
……ありゃ、モンスター一体にも会わずに着くな。……あれはプレイヤーか?
2人のプレイヤーが前方に見えた。
2人ともごっつい装備を着けた前衛職のプレイヤーのようだ。
装備を見るからに高レベルプレイヤー。
「何かのイベントに必要なのか」
初期の街付近に高レベルプレイヤーとなれば、何かしらのイベント関連だろうと思う。
邪魔にならないように少し離れて横を通る。
「おい、あんた」
2人組に声を掛けられた。
無視するのもあれなので振り返る。
声からして男性プレイヤーのようだ。
このゲームはプレイヤー同士の場合、ボイスチャットかチャットでやり取りが出来る。
「どうかしました?」
「ちっさいアバターだと思ったら餓鬼か。職業は……ハンターか珍しいな」
「今どきハンターを選ぶ奴なんて居るのか。面白れぇ」
……初対面で失礼なプレイヤーだなぁ。まぁ話を合わせてさっさと行くか
第一印象は最悪だ。
話しかけてきた理由も分からない。
「そうなんですね。知人に譲って貰ったゲームなので事前に情報を得ていなくて」
「このゲームは有名作だ。なのに知らないなんて情弱かよ。最弱職を選ぶんだからそうか」
「銃を使ってるな。銃がかっこよくて選んだのか? 餓鬼らしい」
「そうですね。銃の見た目が良くて……」
「不遇って言われてる武器を使う奴が居るなんてなぁ」
「情弱らしい」
話を合わせつつ、離脱する隙を探る。
しかし、その隙は無かった。
小声で話し合い、1人が剣を抜く。
……武器を抜いた? こいつらPKか!?
PK、プレイヤーキラー
モンスターでは無く、意図的にプレイヤーを狙うプレイヤーの事を指す。
そして、基本的に勝てる相手を選ぶ為、格下狙いが多い。
……最悪。どう見ても高レベルだよな。
一番会いたくないプレイヤー。
それが高レベルプレイヤーだと、逃げる事も叶わない事が多い。
「特別に1発でも当てれたら殺さないでやるよ」
「少し先を急いでいるので」
立ち去ろうとするがもう1人のプレイヤーが邪魔をしてくる。
更に手で肩を掴まれ突き飛ばされる。
衝撃に耐えられず尻もちをついた。
……いてて
2人は笑う。
「逃げられねぇよ。せっかく頑張って作った綺麗なアバターをぐちゃぐちゃにしてやろうか?」
「ぐちゃぐちゃ?」
「このゲームはな、デスするか治療するまで傷が残る。お前みたいに必死に作ったアバターに傷をつけてそれをスクショするのは楽しいんだよな」
……典型的なクズじゃん。てかそんな仕様あるのか。
銃で1発当てたら解放も、本当に守るとは思えない。
かと言って勝てる相手では無いから、抵抗しても無駄撃ちになる。
でも、ここで時間を使う事が最も無駄。
銃を構えて発砲する。
弾丸は見事胴体に命中して金属音を鳴らすが、相手のHPは減っていない。
レベル差に装備差、まぁ当然の結果。
「当てました。これで解放してくれますか?」
「あぁ、してやるよ」
そう言って剣を振り下ろす。
身体が両断される。
HPがゼロになった通知が届く。
……なるほど、解放がデスか。在り来りな発想だ。
最後にプレイヤーネームを覚える。
それぞれリベンとハヤトンというプレイヤーネームだった。
覚えやすくて助かる。
そして、視界が暗転する。




