第3話 ハンドガン
土の道に沿って進むと街の外が見えてきた。
街の端に城壁やバリケードのような物はなく、街の中からでも外がはっきりと見える。
青々とした草が広々と続いている。
どうやら、外は平原のようだ。
モンスターらしき物も遠目にうっすらと見えている。
しかし、人が居るようには見えない。
発売から半年経っているから、初心者は少ないのだろうか。
「この先は平原エリアかな。平原の先に次の街があるのか?」
メニューを開いてマップを出す。
ダブルタップして拡大する。
マップには街や建物の名称、建物や道などの簡易図が書き記されている。
更に青い矢印で現在地が表示されていた。
現在地はランリス西区と書かれていて、矢印が差す方向にはランリス平原と書いてある。
マップを動かして見ていく。
「こっちは西側か。なら平原でモンスターと戦いながら北上して目指すかな」
そのまま、真っ直ぐに平原に出る。
周囲を見渡すと、水色の柔らかそうな塊が跳ねて移動していた。
生物に見えない水の塊のような何かは、こちらに気づくとポヨンと跳ねながら向かってくる。
「あれは……スライムか?」
スライム、ファンタジー系のゲームの定番のモンスター。
ゲームによって姿形が変わるが序盤の雑魚敵として現れることが多い。
ハンドガンを構えて照準を合わせる。
すると、スライムの頭上に名前とレベル、HPバーらしき赤い線が表示された。
スライムレベル2
引き金に指を掛けるが、撃たずに待つ。
……まだスライムとの距離があるな。エイムアシストはあるだろうけど、もう少し待つか。
射撃がどう言う仕様か分からない以上、近い距離で撃ちたい。
ましてや、俺はフルダイブで銃を扱うのは初めて、距離がある動く標的なんて当てられる自信はない。
初期の弾薬は20発、無駄撃ちすれば直ぐに無くなる量だ。
スライムは、真っ直ぐ接近して来ている。
……今!
スライムが着地した瞬間に発砲する。
銃声が鳴り、前から押されるような反動が腕に伝わる。
痛みは無いが銃声と反動に驚く。
「うおっ、ちゃんと反動あるのか!」
弾丸はスライムの中心を撃ち抜く。
与えたダメージ数は出なかったが、HPバーの赤色が消えた。
穴の空いたスライムはその場で動かなくなり、光の粒子となって消える。
そして、ドロップ品の硬貨が現れた。
ウィンドウが現れ、そこには5ゴールドと表示されていた。
……スライム一体で5ゴールド、弾丸は幾らなんだろうか。マイナス――なんて事は無いよな?
一抹の不安を抱えながら、スライムと戦う。
有難い事にスライムは一体一体バラバラに動いていて同時に接敵する事は少なかった。
一体ずつ相手にして慎重に引き付けて一撃で仕留める。
一体一体時間がかかるが、武器の扱い方を慣らす時間と考えれば悪くない。
……他にプレイヤーが居なくて助かった。こんな時間掛けて倒してると、一体倒してる間に周りのスライム全滅してそう。
そうして、スライムを倒しながら北上していくと、北側に着いた。
このまま北の道を真っ直ぐ行けば、次の街のローロに着く。
「十体ほど倒してレベル2の経験値は後半か、一度弾丸の補充をしてから街に向かうか。ゴールドは353あるしそこそこ買える筈」
300ゴールドは初期配布、スライムは5〜6ゴールドを落とすようだ。
3回程、6ゴールドを落としていた。
更に、スライムの液体と言うアイテムも手に入れた。
説明によるとアイテム作成に使う物らしい。
……アイテムの制作はどうやってやるんだろ。
色々と見ているがアイテム作成の欄は無い。
アイテムを作成するには、何かの条件があるかも知れない。
「何かのクエストを達成すると解放かNPCに材料を渡すタイプか」
街に戻りマップを頼りに道具屋を尋ねる。
道具屋とマップに書いてある建物を見ると道具屋らしき看板が立っていた。
……ここか
扉を開ける微かに薬品の匂いがした。
カウンターに高齢の女性が座っている。こちらに気づくとニコッと笑顔を見せてくれる。
店の中を見渡すと棚に薬品や束になっている草が置かれていた。
「おや、お嬢ちゃん、見ない顔だね。何をお求めですかな?」
……うおっ、話しかけてきた。これは返答すればいいのか?
フルダイブのゲームをやった事が無い為、どうすればいいか悩む。
取り敢えず、質問に答えてみる。
「弾丸を買いに」
「弾丸かい? それなら武器屋の方だよ。隣の店が武器屋だよ」
「あぁ、弾丸は武器屋なのか。教えてくれてありがとう」
「感謝を言えるのは良い事だね。矢や弾丸は間違える者は多いからねぇ」
「へぇ、間違える人多いんだ。それじゃお邪魔しました」
「モンスターには気をつけるんだよ」
店を出て隣の店に向かう。
……あれテンプレ回答じゃないよな?
的確に答えを返してきていた。
それに開口一番、お嬢ちゃんと言っていた。
性別どころか見た目も分かっている台詞選びに感じる。
NPCにAIと言う奴を搭載しているのだろうか、NPCが柔軟な対応をしてくるのは有難い。
隣の武器屋の扉を開けると、強面の男性がカウンターに立っていた。
扉が開いた事に気づいて、男性がこちらに視線を向ける。
目が合う。
強面過ぎてビクッとする。
「おや、嬢ちゃん、何を買いに来たんだい?」
子供に話しかけるような優しめな口調で聞いてくる。
高性能なAIが搭載されているのだろうか。
優しめな口調なのは会話しやすくて有難い。
「だ、弾丸を買いに」
「弾丸? 嬢ちゃんハンターか。珍しいな、弾丸は1発9ゴールドだぞ」
「きゅ、9ゴールド!?」
思わず大声を出してしまった。
マイナス収支が確定したのである。




