23 狙われた運動会(1)
沙織はプリンセスと同じ学校に通う女子高生。4月から二年生としての生活が始まって新しい友達もできて、楽しく学生生活を送っていたが、もうすぐ5月だと思うと気が重かった。
それはもうすぐ運動会だからなのだ。沙織は勉強は割とできる方なのだが、運動がからきしダメで、体育の時間はいつも暗澹たる思いで耐えていた。
特に鉄棒や跳び箱、マット運動は地獄だった。もちろん駆け足はいつもビリなのだ。特に運動会は大勢の前で走らなければならないので、みんなの前で格好悪い自分を見られるのがとっても辛いのだ。
今日も運動会の練習があってみんながとても楽しそうなのに、自分だけやはり上手くできなかったりして泣きたい気持ちだった。
学校が終わって一人トボトボと歩いていると、急に目の前に黒い陽炎のようなものが立ち昇り、その中に左右の頭髪が斜め上に尖って伸びている黒服の男が現れて語り始めたのだ。
「おまえは来週の運動会の100メートル走でビリになるのを恐れているだろう。その悩みを私が解決してやろう。
おまえが走っている時にある騒ぎが起きる、だがおまえは何があっても闇雲に走り続けるのだ。そうすれば一番になれるぞ」
「ええっ、それってどういうこと?気味が悪いわ」
そのすぐそばにプリンセスの優秀な蝶々型コパンであるパピヨンちゃんがパトロールをしていて、今の不気味な男の様子を記録していた。
パピヨンちゃんはさっそくその画像データをシャトーへ送った。シャトーでは、その日の学業を終えてリラックスしているプリンセスがモンちゃんと笑い話をしていた。
するとメインコンピュータのモハベが
「プリンセスお嬢様、パピヨンから画像が送られてきました」
「すぐにモニターに映してちょうだい」
モニターには不気味な男が現れて語り始めた。
「この男、どこかで見たことがあるような感じがする。髪型が独特なのよね」
モンちゃんが
「お嬢さま、何者かが来週の運動会を妨害しようとしているようですが」
「そうね。至急作戦会議をしましょう。モンちゃん、コパンたちを集めてちょうだい」
「わかりました」
しばらくするとカラスくん、ビーちゃん、リスくん、モンちゃん、みーちゃんたちが集合し、対策会議を開いた。そこには妹のマーガレットも自発的に参加していた。
「お姉さま、私も協力したいの」
「分かったわ。ありがとう」
そしてとうとう運動会当日になった。プリンセスとマーガレットがシャトーの入り口に立つと、いつものようにシャトーの外側の4本の電灯のようなものがウインウインという音を発しながらオレンジ色に輝き始め、湖が左右に割れた。
二人が銀色の道に立つと道はゆっくり動き始め、終点に達したところで階段を登り、岸に上がった。そこには黄色くて少し透き通った蝋梅がひっそり咲いていた。顔を近づけるととても甘い香りがした。木の下のところにはクリスマスローズが味わい深いワインカラーでうつむき加減に咲いている。それらの花を見て二人は心を慰められた。
プリンセスは集まったコパンたちに
「私の可愛い大切なコパンたちよ、今日はよろしくね。空から、地上から、地中から、全力で不審な動きのあるものを探してテレパシーで伝えてちょうだい」
コパンたち全員が元気に声をそろえて返事をした。
「分かりました。お嬢さま」
しばらくするとリスくんから連絡が来た。
「お嬢さま、100メートル走コースのどこかにポケットスネイクが隠れています。
でも私はスネイクが苦手なので、これ以上コースに近づいて調査することは残念ながらできません」
「そうか、100メートル走の途中でスネイクが飛び出して女子たちを怖がらせて妨害をし、運動会をメチャメチャにしようという魂胆のようね。ご苦労様。あとは私が何とかするわ」
体育着になったプリンセスは素早くコースに近づいた。




