俺の名は真神陽一
「そっか・・・」
新岸と喋り終え、家に逃げる様に走った。
けれど、これで良かったかも迷う。
真実を知ったから、解決した訳ではない。
けれど真実を得た人間の大半はおおきく一歩前進する。
けど俺は何も変わってないような気がする。
いつもの様に、このまま高校生活が続く、そう思っていた。
「真神陽一・・・久しぶり」
ふと振り向くとメガネの少年は立っていた。
「ああ・・・久しぶり」
そう言って笑みを作る。
このタイミングで出てきたという事は、確実に知っている。
俺が知っている事を。
「陽って呼んでいいかい。陽君、君は悪人だ。
だけど、僕の面白い人生の欠片になる。
僕の仲間にならないか?」
そういって腕を振って話をする姿は、偉い人が演説してる様に見える。
「お前、人殺したんだろ、そんな奴とは死んでも組まん」
そうか、と呟き笑い始める。
「じゃあ、悪人には消えて貰うとしよう」
ポケットから金属の塊を取りだした。
とても小さくビー玉ぐらいの大きさだ。
「さて問題です。俺の能力は何でしょう」
「金属の塊でも撃ちだすじゃないの?」
「半分正解!!あなたには商品として僕の能力を見て貰いましょう」
そういって金属を握りしめる。
するとその手に出てきた物は、拳銃。
「一つ、物体保存の法則の無視」
そして、銃を放つ。
その銃から放たれた弾丸は陽一の頭めがけて飛んできた。
「あーこれ・・・死んだ」
陽一は間に合う筈もない言葉を口にしていた。
陽一の視線は一回転して空を見上げていた。
「あれ、新岸・・・さん?」
そこには出始めた満月の代わりに新岸優の顔があった。
「私にもお手伝いできる事があったら手伝わせて下さいよ」
陽一はどうやら新岸さんに助けられた様だ。
パチパチパチ・・・とゆっくりと小さな拍手が鳴った。
「いやぁ面白い、君の能力は感情受信か・・・
実に不快な能力だ。
そして悪人を庇った。
なら君を殺そう」
そういって拳銃を放つ。
しかし今度の弾は先刻の倍以上のスピードで放たれる。
「おせーよ、てめぇの覚悟じゃ、俺を倒せねー」
------------カラン
弾丸は陽一の手から落ちた。
「あいつ等の命は半分俺が、奪ったもんだ、一緒に背負いこもう」
「ふざけんな、悪人が何を言う!!!!
お前に俺の何が分る!!!!!!!
俺の殺してきた人数も、俺の人生も何もお前に分る筈ない!!!!!!」
男は叫ぶ。
「俺は名前さえ失った・・・
今じゃ俺を呼ぶ奴は、化け物か、未完成な夢ぐらいだ!!!」
未完成な夢は叫んだ。
保存させてくれ