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ゲームの魔王と勇者たち

作者: ReseraN
掲載日:2025/03/19

「ある日の魔王と勇者たち」から改題しました。


※本作は「ラスボスと空想好きのユア」本編のネタバレを含みます。ネタバレOKな人はこのままお進みください。

 魔王・ディンフルは玉座に座ったまま、武器の大剣を振っただけで、勇者を倒した。


「手ぬるい。もう少し、私を驚かせる者は現れぬのか?」


 ディンフルは「ディファート」という名の種族で、恋人・ウィムーダを殺害されて以来、人間を嫌うようになった。

 自身に逆らう人間を異次元へ送り、いずれはフィーヴェをディファートのみの世界にしようと目論(もくろ)んでいた。


 そんな魔王を倒そうと、数々の勇者が挑みに来た。

 だが、ディンフルは戦闘力に長けており、どんなに鍛え上げた人間でも敵わず、異次元へ送られた。


 今日だけで、すでに数人の勇者を異次元へ送っていた。

 だが、その行動にも飽き飽きしていた。


 勇者を消した後、退屈そうに玉座に座っていると、(かたわ)らに置いてある黒い水晶玉から声が聞こえた。


「ディンフル様。新たな勇者がそちらへ向かっております」


 水晶玉は、離れた場所から監視する部下・サーヴラスと対話するためのものだ。

 報告を聞いても、ディンフルは驚かなかった。


「また私より弱く、すぐに片がつく勇者だろう。相手にする前からわかる」


 こう思っていたために、顔を合わせることすら面倒に感じていた。


 サーヴラスの通信からまもなくして、王の間の扉の向こうに気配が感じられた。

 勇者は自分から開けて入るだろうと思い待ってみたものの、扉が動く気配がない。


「仕方あるまい。早く顔合わせをして、早く終わらせよう」


 ディンフルが渋々と指を鳴らすと、扉はゆっくりと両開きに動いた。


「あっ! ドアがかってにひらいた!」


「おもかったから、よかったー!」


「みて! あれ、まおー・ディンフルだ~!」


「すごーい! しゃしんといっしょだー!」


「ホンモノだ~!」


 現れたのは、十歳にも満たない五人の子供だった。

 勇者の男児、武闘家の男児、戦士の男児、黒魔導士の女児、白魔導士の女児と、役割がきちんと決まっていた。


 ただ、子供なので戦力になるかは怪しい。

 武器らしいものは持っていたが、どう見てもおもちゃだった。


 彼らはディンフルを見ると、目を輝かせた。

 倒すべき相手だが、名が知られている彼を生で見るのは初めてで、興奮しているのだ。


「子供……? 何故だ?」


 想定外の相手に、ディンフルは目が点になった。


「あ、いけない! ディンフルー! われらが、きたからには、すきには、させないぞー!」


 勇者役の男児が我に返り、魔王を指して叫んだ。

 しかし、子供らしくたどたどしいテンポだったので、ディンフルは当然怯まなかった。


 勇者役に続いて、他の子供も口々に言い出した。


「そうだ、そうだー!」


「わるものは、ゆるさないぞー!」


「ぼくたち……じゃなくて、われら、“ディンフルやっつけ隊”が、やっつけてやるー!」


「かくごしろー!」


「“ディンフルやっつけ隊”? そのまんま過ぎるだろう……」


 ディンフルは勇者の部隊名に呆れながらも、小声で水晶玉に話しかけた。


「おい。子供が来たのだが、どういうことだ……?」


 すぐに返事が来た。


「は……。我々も帰そうとしたのですが、あまりにもやる気満々だったので。だからと言って傷つけると、別の意味で厄介になりそうですし……。ディンフル様、育った施設で子供の世話をしていたそうですね? その経験を活かして何とかして下さい」


「そのようなことを言われてもだな……」


 ディンフルが子供の世話をしていたのは、魔王になる前。

 だが、魔王になった今でも子供には手が出せなかった。

 子供が魔王である自分に勝てないのがわかっていたからだ。


 それに、いい歳をして小さな子供を倒せば、大人として情けない。

 だからと言って優しく接すれば、今度は魔王のプライドが揺らぐ。


「どうすれば……?」


 対応に困っていると、子供勇者たちが攻撃を仕掛けて来た。


 まず、武闘家男児がパチンコを撃って来た。

 本来、武闘家は肉弾戦を主とするが、まだそこまで体が鍛えられていないのだろう。

 おもちゃの弾がディンフルに命中するも、痛くもかゆくもなかった。


「やったー! やっつけたぞ~!」


「まだ生きてるでしょ! パパが言ってたわ! まおーが死んだ時にはじめて、わたしたちが、勝つって!」


「じゃあ、まおーを殺そ~!」


 子供とは思えない物騒な物言いに、ディンフルは思わず寒気がした。


「どんな教育をしているのだ、親は……?」


 続いて、黒魔導士の女児が炎魔法を唱えた。

 ディンフルに炎が迫るも、ろうそくの上で灯るサイズのものしか出なかった。

 高レベルの魔法は教えてもらえなかったようだ。


 ディンフルは、小さな炎に息を吹きかけて消してしまった。

 まるで、誕生日ケーキのろうそくだった。


「わたしのまほーが、効いてない!」


 黒魔導士の女児が泣きそうな顔になった。

 続いて、白魔導士の女児が前に出た。


「なかないで! わたちのまほーで、よわらせてやるっ!」


 一行の先頭に立とうとしたその時、白魔導士の女児はつまずき、うつ伏せに倒れてしまった。


「いたいよ~!」


 黒魔導士の女児をなぐさめるつもりが、自分が泣く羽目になってしまった。


「まおーめ! よくもやったな~!」


 武闘家の男児が、怒りをあらわにする。


「何もしていないのだが……」


 武闘家の男児は、今度は袋に詰めていた石を一個ずつ、彼へ投げつけた。

 しかし、すべて外してしまい、ディンフルは一切ダメージを負わなかった。


「これで、ヤケドさせてやる~!」


 次に戦士の男児が小さな鉄砲を出し、液体を発射した。

 ディンフルの顔に掛かるが、ただ冷たいだけだった。


「まいったか?! オレの手づくり・ねっとーでっぽーだ!」


「熱湯? まったく熱くないぞ……」


 戦士の男児は水鉄砲の中に熱湯を入れたそうだが、ここへ来るまでに冷め、水になってしまっていた。


「オレのてっぽーも、きいてない~!!」


 ここまで五人中四人の戦法が効かず。

 最後に残った勇者の男児は武器を持って、ディンフルへ向かって走り出した。


「こうなったら、さいしゅーへーきだ~!」


 手にしているのは、ままごと等で使うおもちゃの包丁。

 危険性はまったくなかった。


 男児が刃を向けて駆けて行くと、ディンフルはすかさず大剣を出し、包丁を受け止めた。

 もちろん、力は加減している。


 初めて生で見る大きな剣に勇者の男児は顔が青ざめ、持っていたおもちゃの包丁を落としてしまった。

 四人の子供たちも言葉を失った。


 ディンフルは大剣を消すと、落ちていた包丁を拾い、男児の手に握らせた。


「こんな物を振り回したらダメだろう! 本当に切れるものだったらどうする?!」


 わざと怖い顔をし、思わず子供の面倒を見ていた時みたいに注意をした。

 ディンフルがたしなめると、子供たちは一斉に泣き出した。


「もう帰りなさい。ここは、君たちが来るところじゃない……」


 ディンフルはため息まじりに言うと、指を鳴らした。

 号泣する子供勇者たちは魔法の球体に包まれ、その場から消えてしまった。


 再び一人になったディンフルは水晶玉へ声を掛けた。


「勇者ごっこをしていた子供たちを、故郷へ帰した。さすがに異次元へは送れぬ……」



 再び玉座に腰掛けていると、水晶玉から通信があった。


「ディンフル様。次の勇者が参りました」


「そうか」


 先ほどの子供勇者には度肝を抜かされたが、珍しいタイプは立て続けに来ないだろう。

 そう思っていると早速、王の間の扉が開いた。


「来たか」


 戦闘態勢に入るディンフル。

 扉はゆっくりと開かれていく。


「おっも! 何だよ、このドアは?!」


「この場合は”扉”の方がいいぞ!」


「どっちでもいいじゃねぇか!」


「良くない! 言い方一つで表現は変わるんだぞ! 考えろよ、バカ!」


「バカって言う方がバカなんだ!」


 まるで子供みたいなやり取りをしながら、五人の若い勇者が必死に扉を開けていた。

 先ほどの子供勇者よりは年上だったが、まだ成人前の若者だった。

 全員男子の勇者で、赤、青、黄色、緑、紫と、鎧がキレイに色分けがされていた。


 ディンフルから見れば、彼らもまだ子供同然だった。

 扉を開ける際の騒ぎっぷりを見て、尚更そう思った。


「お! いたぞ! あれがディンフルだ!」


「すっげぇ! 本物だぁ~!」


 名の知られている者を目の前に興奮するのは、子供勇者と同じだった。


「ディンフル! 俺たちはお前を倒すために来た、魔王……“退治”隊だ!」


 代表で赤勇者が叫ぶが、途中で言葉を詰まらせた。

 隣の青勇者から指摘が入る。


「何だよ、退治隊って?」


「魔王を倒すための部隊名だよ! 来る前に決めたろ?」


「決めたけど、そんな名前じゃなかっただろ」


「魔王“駆除”隊だよ!」


 少し小太りの黄色勇者が話に加わった。


「駆除も違う! それじゃあ、害獣や虫みたいになるだろ!」


 青勇者がツッコんだ。


「“討伐”だよ」


 眼鏡を掛けた緑勇者が呆れながら言った。


「そう、それ! 討伐だ! お前、頭いいな!」


「お前らがバカなんだよ」


「何ぃ?! バカって言う方が……」


「はいはい! 魔王の前だぞ! いつもみたいにふざけるな!」


 あざける緑勇者へ赤勇者が怒り、青勇者がいさめる。


「よし! 訓練の成果を見せるぞ!」


 赤勇者がやる気満々だが、まだ話していない紫勇者は四人から離れて手帳サイズの本を見ていた。


「お前、何やってんだよ?!」


 赤勇者が紫勇者へ怒鳴る。

 よく見ると、紫勇者が持つ本の表紙には大きく「パズル」と書かれていた。

 一人遊びをしていたのだ。


「ラスボスの前で、何遊んでんだ?!」


「お前らがいつまでもふざけてるから、飽きちゃってさ。俺、もう帰っていい?」


「ふざけてないし、帰るな!!」


 今のやり取りから赤は熱血、青は冷静、黄色は少々鈍く、緑は頭脳明晰、そして紫は自由奔放だとわかった。

 ディンフルは同じイメージカラーの紫勇者へ激しく同調した。


(私も自室へ帰りたい。今すぐに……)


 赤勇者に怒られ、紫勇者が渋々やる気を出したところで、五人の攻撃が始まる。


「覚悟しろ、ディンフル!」


 威勢よく武器を出そうとするが、五人は何かを探すようにうろたえ始めた。


「……剣は?」


「お前が持って来たんじゃねぇの?」


「いや、くじ引きでお前に決まったじゃん!」


「くじ引きなんてしたか? 話し合いじゃなかったの?」


 赤勇者と黄色勇者が言い合う。

 どちらの意見が正しいのかわからず、他の三人も唖然とした。


「じゃあ、武器は何があるんだよ?」


「弓矢と杖」


「はぁ?! 俺らは勇者だぞ! 勇者と言えば剣だろうが! そもそも弓矢はわかるが、杖って何だよ?! この中に魔導士なんていないだろ!」


「剣ばかりだと(かたよ)るから、弓矢も買ったんだ。で、“弓矢を五つ買ったら、杖一本プレゼントキャンペーン”なんてのもやってたんだ」


「何だよ、それぇ?!」


 赤勇者と黄色勇者を、三人とディンフルは呆れて見ていた。

 ディンフルはさらに不安になってきた。


(まだ、子供勇者の方がしっかりしていた気が……)


 途方に暮れる赤勇者へ紫勇者が言った。


「大丈夫だ。こんなこともあろうかと、独学で魔法を身につけた」


「本当か?!」


 目を輝かせる赤勇者。


「ああ。お前らの話って基本つまんねーから、雑談に参加してるふりして、魔導書読みあさってたんだ」


「つまんねーなら、グループ抜けろよ」


 相手の告白に怒りを感じながらも、赤勇者は彼に託した。

 紫勇者が前に出る。


「ようやく始まるか」


 退屈していたディンフルが座りながら構えると、紫勇者も呪文を唱え始めた。

 しかし、途中で止まってしまった。


「どうした?」


 声を掛ける緑勇者。


「……この続き、何だっけ?」


 呪文をど忘れした紫勇者へ「知るか!!」と、声を荒げる四人の勇者たち。

 ディンフルも愕然とした。


(その魔法は、そんなに難しくはなかった(はず)……)


「こうなったら、直接攻撃だ!」


 赤勇者が怒りながら提案した。


「直接ってどうやって?! 剣がないんだぞ!」


「弓矢があるだろ!」


 いさめる青勇者へ、自信満々の赤勇者。

 剣も魔法もなく、唯一ある弓矢に頼るしかなかった。


 勇者五人は弓で矢を射るが、すべてディンフルの大剣で相殺されてしまった。

 元々、矢の威力はなく、まったく違う方向に行くものもあった。

 何故なら……。


「この中で誰か、弓矢の訓練受けてたか……?」


「受けてない。全員、剣志望じゃん」


 全員生まれて初めての弓装備だったので、当然ディンフルにダメージはいかず。

 しまいには、やけくそになった赤勇者が杖を投げ付けるが、見事にかわされてしまった。


「ここまでのようだな……」


 ディンフルはため息をつきながら、玉座から立ち上がった。

 若者勇者たちは一斉に怯んだ。


「ヤバい、仕返しが来る……。お、お前、前行けよ! 俺、後ろ行くから!」


「自己中だな、お前!」


 恐怖で気が動転したのか、自分より明らかに弱そうな黄色勇者を前へ押し出す赤勇者。

 黄色勇者が反発すると、他の三人の冷たい視線が赤勇者に刺さる。


「こうなったのも、剣を持って来ないお前が悪いんだろ!」


「何だよ?! お前だって魔法覚えて来なかったじゃねーか!」


 再び言い合い始める紫勇者と赤勇者。

 その様子にディンフルはまた呆然とした。


(チームワークもへったくれもない……)


 五人はディンフルが召喚した球体に包まれ、城の外へ送られた。

 王の間にまた一人になった彼は、水晶玉へ呼び掛けた。


「どうしようもない未熟者どもを帰した。戦ってもないのに疲れたぞ……。何故、道を譲った?」


 語尾のトーンは明らかに怒りが混じっていた。


「やっぱり、帰したんですね……。彼ら相当のバカだったので、(かえ)ってディンフル様にしごいてもらった方がいいと思ったのですが」


「処理に困るからと寄越(よこ)されても困る……。私は魔王であり、バカの教育係ではない」



 ある意味、退屈しのぎにはなった。

 だが、妙に疲れたディンフルがコーヒーを飲んで安息の時間を過ごしていると、また水晶玉から声が聞こえた。


「ディンフル様。新たな勇者が参りました」


「二度あることは三度ある」と言わんばかりに、ディンフルは「またか……」とうんざりした。

 しかし、子供も若者もこれまでに例を見ない勇者たち。


「さすがに似たような者はもう来ないだろう」と、自分に言い聞かせた。

 本人たちが、根性で再び来ればの話だが……。


 そう考えていると、王の間の扉がゆっくりと開かれた。

 扉の向こうから、きりりとした表情で真っすぐに魔王を睨む好青年の勇者が姿を現した。


(今度はまともそうだな……)


 ディンフルは心の中で安堵すると、魔王らしい口調で勇者へ話しかけた。


「よく来たな、勇者よ」


「魔王ディンフル! フィーヴェを救うべく、お前を倒す!」


「フン、来るがいい」


 異質な勇者が二度続いたので、心なしかディンフルは嬉しそうだった。

 玉座から立ち上がり大剣を出すと、新しい勇者も自身の剣を構え始めた。



 ピピピピピ……



 そこへ、どこからか電子音が聞こえた。


「……少しだけ待て」


 勇者は魔王を制し、相手に背を向けると、ボトムスのポケットから通信機を出し、耳に当てた。

 電子音は通信機の着信音だった。

「はい」と真面目な声で対応した次の瞬間……。


「おやぁ? 誰かと思ったら、ハニーかぁい?」


 冷静さから一転し、勇者は甘い声を出し始めた。

 相手は彼の恋人だった。


「だいじょーぶ! 俺はちゃんと生きてるよん! 今、魔王のところに着いたばかりだよぉ。どうしたんだぁい、こんな時まで連絡して来て? 寂しかったのかぁい?」


 勇者の変わりっぷりに、ディンフルは再び戦意をなくしてしまった。


「な、何なのだ……?」


 後ろで魔王が呆れていることにも気づかず、勇者は甘い声で対応し続けた。


「俺も寂しいよ~。こんな戦い早く終わらせて、ハニーに会いたいよ~。……え? “私もダーリンに会いたい”? 嬉しいこと言ってくれるねぇ~。ハニーのそういうところ、大好きだよ~。……ん? “本物の魔王はどんな感じ”って? そうだなぁ……」


 勇者は通信をしながらディンフルへ向き、まじまじと見つめ始めた。


「パッと見、威圧感はすごいな~。魔王のオーラってのを感じるよん。()()()高身長だし、長髪で」


「は……?!」


 勇者の「無駄に」の言い方にディンフルは苛立った。


「そう! ロン毛なんだよ、魔王! 何か、“髪伸ばしてる俺、かっこいいだろ”的な感じで。俺は真似出来ないな。あそこまで伸ばすと邪魔になるし、手入れも面倒くさそうだしで。……何? “髪が短いダーリンの方がカッコいい”って?! ありがと~う! 伸ばせばいいってもんじゃないよね~! よく伸ばしてるなって思うよ~。相当、暇なんだねぇ。てか、俺のこと、カッコいいって言ってくれるの、ハニーだけだよ! 俺もハニーのこと、フィーヴェ中で……いや、異世界含めた世界中で、いっちばん愛してるよ! チュッ」


 勇者は通信機に口づけをした。


「じゃあ俺、魔王と戦って来るからね~。倒したお祝いに、帰ったらたっくさん“好き”って言い合おうね~。それじゃ、後ほど。愛しのマイハ・ニ・ィ」


 勇者は最後にもう一度、口づけをした。

 通信機を切りポケットにしまうと、再びディンフルへ向いて剣を構えた。


「待たせたな。ディンフル、覚悟!」


 恋人と話していた時と打って変わって、再び真面目なトーンになった。

 ところが魔王の方は、明らかに怒りのオーラが全開で、まるで鬼瓦のような顔で勇者を睨みつけていた。


「な、何だ、この怒りにも似た妖気は?! これが、魔王のオ……」


「貴様のせいだろう!!」


 ディンフルは勇者が言い終える前に怒りをむき出しにし、あっという間に相手を異次元へ送ってしまった。


「本人の前で侮辱とは、無礼にもほどがある。しかも、長々と! 何なのだ、“髪が長いイコール暇”とは!? 聞いたことがないっ!」


 再び一人になったディンフルは膝から崩れ落ちた。


「一度もないのだぞ。ウィムーダとあのように(たわむ)れたことが……」


 勇者とその恋人のやり取りを見ていた彼は、亡き恋人・ウィムーダに想いを()せ始めていた。


「いや、(うらや)ましくなどない。あんなバカみたいに騒ぐなど、我々には不似合いだ。だが、あいつが生きていて、ましてや種族の壁が無く差別を受けずに生きていれば、もしや……。……いや、羨ましくなどないっ!」


「羨ましくない」と二度繰り返したディンフルは、しばらくしてまた玉座に腰を掛け、今の勇者の存在そのものを忘れようと努めた。

 子供勇者や若者勇者とは違う意味で、一番疲れていた。



 まもなくして、水晶玉から知らせが届いた。


「ディンフル様! 新たな勇者一行です! 今度のパーティは赤髪の勇者、青髪の白魔導士、金髪の武闘家、黄緑色の髪の女性武闘家、紫のローブをかぶった黒魔導士の計五人です!」


「報告ご苦労……」


 ディンフルは大きくため息をつきながらも、王の間の扉へ視線を向けた。


 近い将来、彼らと運命を共にすることも知らずに……。


(完)

魔王と斜め上を行く勇者たちの戯れはいかがだったでしょうか?


面白いと思った方はリアクション、ブクマ登録、星などをお願いします。

セルフチェックはしておりますが、気になる箇所がありましたらご指摘お願いします。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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